山本耕史インタビュー「迷いもブレもないので、演じていて非常に爽快でした」『鎌倉殿の13人』

特集・インタビュー
2022年12月08日
『鎌倉殿の13人』左から)北条義時(小栗旬)、三浦義村(山本耕史)©NHK

◆44回(11月20日放送)では、義時が義村のえりを触るしぐさからうそを見抜いたシーンがありました。そんなしぐさも山本さんが演じる上で“一貫”された部分だったのでしょうか?

このシーンは最初、三谷さんはもう少し違った描写を使われていたんですけど、44回にもなったということでどうせならこれまでに義村がやったことがあるようなしぐさでやれないかという話になったんです。そこで、えりを触るしぐさをやることになりました。僕自身にはこれまでどんなシーンでそのしぐさをやっていたのか自覚がなかったんですけど、見返してみたら見事に“そういう時”に触っていたんですよ。つまり、それはまさに義時が言ったように“言葉と思いが違う時”に義村がするしぐさなんですよね。後付けとはいえ、結構成立したシーンでした。

◆そんな変化をしない義村ですが、それでも覚悟を決めざるを得ない瞬間があったのではないでしょうか?

誰の側につくかとかは一応それなりに吟味していますし、その時の損得はこっちで、今ここで北条に反旗を翻すとこうなるだろうな…という先のことも想像できる義村ですが、それでも想定外だったのは起請文をのまされたところ。その時は瞬時に腹をくくったんですよ。でも、和田義盛(横田栄司)が「どうせ裏切るならギリギリで裏切らないでほしいんだよな」と自ら言ってきて。あの時の義村は和田につくと決めていたんですけど、“お前がそうやって言うならいいんだな”と。その時だけはちょっと“ラッキー”と思ったのかもしれませんね。うれしい誤算というか。でも、仮にあのまま和田側について戦っていたとしても、和田や巴御前(秋元才加)がいなくなったタイミングとか、ギリギリで寝返っていたんじゃないかなとは思います(笑)。

◆山本さんにも、義村がどんな選択をしていくのかは分からないものでしたか?

台本を読んで“なるほど、こっちにつくんだ”と思いつつ、ページをめくったらもう状況が変わっていることもあって“どっちになってるんだ?”みたいな…自分でもよく分からなくなることがあります。それこそ最後の最後まで、義村がどこにどう転ぶのか全く分からなかったですね。

◆度々人を裏切っていく義村ですが、演じていて苦しくなることはありませんでしたか?

全然ありませんでした。むしろ誰につくのかなというのはワクワクしましたし、親友であろうと無二の友であろうと、出る杭を打つ。そこに迷いがないので気持ちがいいですよね。そんな義村が発したせりふの中で、印象的だったのが「俺を信じるか信じないかはそっちの勝手だが、俺を信じたらお前は死ぬかもしれないし生き残るかも知れない。だけど、俺を信じなければお前は確実に死ぬ」(第41回/10月30日放送)。すごいなと思いました。0か100かじゃなくて、既に0か50かなんですよ。すごく義村らしくて面白いせりふだったなと思います。いずれにせよ、100%死ぬか、50%死ぬかになっているんですからね(笑)。

◆思わず心が痛んでしまうようなシーンもなかったのでしょうか?

強いて言うなら公暁(寛一郎)の暗殺かな。すごく残酷なシーンなので、かなり残酷で震え上がるようなシーンに仕上がっているでしょうし、どこか美しくもあるというか。寛一郎がすごく奇麗なまなざしと未来を持って演じていたので、彼の憂いや悲しみが役ににじんでいると思います。そこに真顔で小刀をスッと仕込む義村はある意味義村らしいんだけど、さすがに少しかわいそうだと思ったかな。ちなみに、撮影の時は刃を首にスッと入れるところを、CGではなく僕のマジックのテクニックでやったんです。キラッと光る刺す前の小刀から、刺した後の血がついた小刀までを含め、全てワンカットで撮りました。

◆最後に、本作での義村の人生を振り返り、どんなことを感じますか。

真っすぐと生きたな、というのが率直な感想です。のらりくらりといろんなところに寝返る彼ですが、その生き方自体には迷いがないんです。そして北条を始め、和田、比企までいろんな人たちに頼られましたから、それはやっぱりすごい人物なんですよね。しかも、誰かを裏切った後に思わず“なるほどな”と納得してしまうようなことを言うじゃないですか。迷いもブレもないので、演じていて非常に爽快でした。

『鎌倉殿の13人』三浦義村(山本耕史)©NHK

番組情報

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』
NHK総合:毎週日曜 午後8時~8時45分
BSプレミアム/BS4K:毎週日曜 午後6時~6時45分

最終回:12月18日(日)※15分拡大

この記事の写真

©NHK

 

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