テレビ朝日系連続ドラマ『ザ・トラベルナース』(毎週(木)後9・00)が、12月8日に最終回を迎える。『ドクターX~外科医・大門未知子~』を手掛けた中園ミホさん脚本による医療ドラマで、スーツケース一つで各地を渡り歩くフリーランスの看護師“トラベルナース”が題材。主演の岡田将生さん演じる意識高い系の歩と中井貴一さん演じる謎多き人物・静というタイプの異なる2人のトラベルナースが、ぶつかり合いながらも共に医療現場を改革していく姿を描いている。最終回を前に、峰島あゆみプロデューサーにドラマの舞台裏について聞いた。
◆“トラベルナース”を題材にドラマを作ろうと思ったのは、いつごろ、どんな経緯だったのでしょうか?
昨年の秋、ちょうど『ドクターX』の放送中に、同シリーズでずっとご一緒してきた脚本の中園先生と新しい作品を立ち上げられないかと相談していて。そんなとき、同じく『ドクターX』でお世話になっている日本人の外科医の先生がいらっしゃって、その方からトラベルナースの存在を聞いたんです。その先生はアメリカで活躍されているのですが、向こうではナースの地位が高くて、優秀な人材は医者から指名を受けて、スーツケース1つで渡り歩くスタイルが多いと。それで興味を持って、ぜひドラマ化したいと動き始めました。
◆ドラマ化に当たり、かなり取材もされたのでしょうか?
ナースの方々への取材を重ねました。それを通して思ったのは、ナースは医者とは全然違う視点で患者さんをとらえているんだなということ。例えば、医者が病気を調べてオペを推奨したとしても、ナースは患者さんと直に接して年齢や体力とかも考え、別の道もあるんじゃないかと思うこともあるそうなんです。劇中に中井さん演じる静の「医者は病気を診て病気を治し、ナースは人を見て人を治す」というせりふがありますが、まさにそのとおりで。ちなみにあのせりふは、取材でナースの方がおっしゃっていた言葉から中園先生がインスピレーションを受けてお書きになったんです。
◆歩と静というキャラクターはどのように作っていったのですか?
中園先生は当て書きをされる方なので、キャストありきで考えました。岡田さんは最近の出演作を拝見していると、すごくカッコいいのにどこか欠点のある役が似合うというイメージがあって。それで、プライドが高くてすぐにイラっとしてしまう、沸点低めの役にしようと。一方の中井さんは、ユーモアのあるお芝居が天下一品です。『ふぞろいの林檎たち』のころからずっとそうですよね。それで、紳士的だけど口が悪くて嘘つきという役になりました。
◆1話で静が医者の神崎(柳葉敏郎)を広島弁で脅すシーンは、インパクトがありました。
あれは1話のストーリーの流れからいって、ナースが医者を脅したら面白いんじゃないかという話になって。今作のテーマとして、医療現場の常識をひっくり返したいというのもあったので。で、脅すならよりドスが効くように、ということで広島弁になりました(笑)。
◆岡田さんは、現場でご一緒していてどんな印象ですか?
岡田さんって、現場で積極的にいろんな人の意見を聞くんです。共演者にも、監督にも、私たちプロデューサーにも。「これ、どう思いますか?」って、ちょっと自信なく弱々しげに(笑)。美術さんとかに対してもそうなんです。どの役職でも関係なく、全員をワンチームととらえてくださっているんでしょうね。意見を聞くと言っても、多分、岡田さん自身の中に確固たるものはちゃんとあって、芯は強いはずなんです。その上で周りの意見を全部受け止めて、どうすべきかを見出していくところが彼のすごさだと思います。中井さんに対しても、最初から悩みをガンガンぶつけていました。それに対して中井さんも1つひとつ丁寧に答えていて。その関係性がドラマにも生かされていて、すごくいい雰囲気です。
◆中井さんの印象はいかがでしょうか?
私がどれだけ脚本を読み込んで分かったつもりでいても、中井さんには“そういうとらえ方もあるのか!”といつも唸らされています。中井さんのちょっとしたお芝居のニュアンスで、シーンに新しい意味がもたらされるんです。ナースハウスで歩と静が小競り合いをするシーンのときもそうでした。中井さんは静の気持ちとして、歩の発言にちょっと成長が感じられてうれしいはずだから、どこかで笑顔を入れたいと提案してくださって。実際それを取り入れて、すごくいいシーンになったんです。そうやって中井さんきっかけで作り手の思いを超える瞬間が何度もあり、この業界の先輩としてすごく尊敬します。自分が同じ年齢になったときにこういう発想ができるだろうかと。作り手をすごく刺激してくださる方ですね。
◆医療ドラマとしてのリアリティーを持たせる上で、特にこだわっている点は?
ナースの所作には特に気を使っています。岡田さんと中井さんにもクランクイン前、1話冒頭のバス車内での救護シーンのリハーサルと併せて、所作指導を受けていただきました。例えばシーツの張り方にしても、患者さんの触れそうなところには触れてはいけないとか、ナースにしか分からないやり方があるんです。そういうところ1つひとつにリアリティーを持たせないと、嘘っぽくなってしまう。撮影が始まってからも現場にはいつもナースの方に来ていただいて、意見を頂いています。
◆病院での緊迫したシーンの一方で、ナースハウスでのナースたちの団らんシーンはほっとできる瞬間にもなっています。
あのシーンって和気あいあいと楽しそうに見えると思うんですけど、実はキャストの皆さんはやることが多くてすごく大変なんです。1人は食事の配膳をして、1人はそれを受け取って並べて、1人は箸を用意して…みたいな。もちろん、せりふも同時に言わないといけませんから。もともとは、監督の提案で生まれたシーンなんです。ナースは連携プレーが上手だから、それをプライベートでも無意識のうちにやっていたら面白いんじゃないかと。演じる皆さんにとっては高いハードルになってしまったのですが、病院のシーンでもナースハウスのシーンでもずっと一緒なので、撮影を通してどんどん仲良くなり、そのうち前室に集まって自分たちで読み合わせをするようになって。それでせりふがしっかり入って、その分動きに余裕が出てスムーズになり、終盤は予定していた撮影時間が余ってしまうということもありました(笑)。
◆ナースメンバーの中で野呂佳代さんがムードメーカーになっているそうですね。
そうなんです。野呂さんはいつも場を和ませてくださって。お芝居の面での信頼も厚く、「このシーンのみんなの動き、難しいけどどうしようか?」となると、中井さんが「野呂佳代に言えば何でもできるぞ」って(笑)。実際、野呂さんも「じゃあ、私こうしますね」とすぐに対応してくれるということがよくありました。あの気転の早さは、アイドルとして培ったものなんでしょうね。中井さんはそこをすごく評価してらっしゃいました。
◆ドラマはいよいよ最終回を迎えます。前回の7話のラスト、病気の静が倒れてしまうという展開で幕を閉じましたが、どんなところが見どころでしょうか?
静が倒れたとき、歩が居合わせていました。そこでようやく歩は静が病気を抱えていると知ることになります。これまで歩は静からナースとしてのさまざまな心得を教わってきました。最終回は歩がそれを病の進行する静にどう返せるか。そして、静はなぜ歩に教えたかったのかというところが見どころです。歩の成長と静の真意を描いています。歩をアメリカから病院に呼んだ人物や、静と院長の天乃(松平健)の過去の因縁という、伏線になっていた謎も明かされますので、ぜひ最後までご覧いただけたらと思います。
作品情報
『ザ・トラベルナース』
テレビ朝日系
毎週木曜 後9・00~9・54
●最終回は後9・00~10・04の拡大版!
脚本:中園ミホ
演出:金井紘、片山修、山田勇人
主題歌:DISH//「五明後日」
出演:岡田将生、中井貴一、菜々緒、安達祐実、恒松祐里、泉澤祐希、宮本茉由、 野呂佳代、池谷のぶえ、吉田ウーロン太、前原瑞樹、浅田美代子、寺島しのぶ、松平健ほか
公式HP:https://www.tv-asahi.co.jp/the_travelnurse/
公式Twitter:https://twitter.com/the_travelnurse
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