◆平野さん、黒島さん、三浦さんの魅力について
武田:撮影が進んでいく中で、皆さん自分の役として現場にいらっしゃるので、台本にないような言い方などを監督に提案してくださいました。平野さんに関しては特に思うのですが、その提案が黒崎としての正解なんだなって思う場面が多々あります。例えば9話の冒頭で桂木と別れを告げるシーンがあったのですが、台本にないような温度感が出てすごくいいシーンになったなと思いますし、黒崎をちゃんとつかんで黒崎として現場にいる、それがすごくいいなと思いました。
黒島さんも同じように、氷柱って基本真っすぐなんですけど、その真っすぐの中に揺れ動く感情みたいなのがあって、ただ純粋に正義感が強いっていう設定上の話だけじゃなくて、ちゃんとした感情の揺れ動きだったり、そのバランスがすごく後半にかけていくにつれて、どんどん出てきています。それが黒崎と氷柱の関係性の切なさみたいなところにつながっていっているのかなと思います。見ていてどんどん魅力的になっているなと思いました。
桂木が本当はどう思っているのかというのは、『クロサギ』全体を通して分かりやすい部分は一つもないのですが、その分からないところが桂木の魅力だっていうのが念頭にあったんです。三浦さんはそれを見事に体現して下さいました。個人的に好きなのは、桂木は黒崎とやりとりをしている時はぶっきらぼうな感じなんですけど、氷柱としゃべる時はちょっとイケメンになるところです(笑)。ただ、後半の8話以降で氷柱が桂木のことを怪しむような場面になるところと、氷柱に9話で「ごめんね」と言うシーンでは本当にすごく怖くなって、氷柱に見せるあの顔は嘘だったのか、どこまで計算されていたんだって、恐ろしくなりました。三浦さん、普段本当にお優しい方なんですけど、画面の中で観る桂木は怖くて、それがすごく見ている側として楽しめるポイントだなと思います。
那須田:最初にイメージしていた、こんな役になってほしいなというところは、お三方ともすごく出してくださっています。黒島さんも彼女のストイックさだったり、チャーミングさというのが後半特に垣間見えました。表現、お芝居、表情、それらがすごく長けているなと思いました。
三浦さんは平野君たちのキャラクターとは違う意味で、人間の多面的なところや微妙なニュアンス、そこの奥に何があるのかを知りたくなるような、繊細さをすごく上手に出してくださいました。静かなエンタメを、三浦さんのお芝居で楽しませていただいているなと思います。
◆この作品を通して新たな一面を見せてくれたと感じるキャストはいらっしゃいますか?
武田:新たな一面で言うと、早瀬かの子役の中村ゆりさんです。原作では男性だった早瀬をどういう風に作っていくかという悩みはあったんですが、逆に自由度が高くなりました。5話でチャイナドレスを着たり、アクションシーンがあったり、わりとくだけたキャラクターで、桂木がああやってどっしり構えているから早瀬は役柄として遊べたと思います。黒崎とのやりとりもお姉ちゃんと弟みたいな感じで、中村さんの本来のかわいらしさかもしれませんが、見ていて非常に私も楽しかったです。
那須田:出てくるキャラクターが皆生き生きとしています。あえて、それぞれの背景は細かく描いてはないですが、狙い通りに、皆さんが瞬時に魅力を全開にしてくださるので、楽しく見れてると思います。一番謎の女であるかの子役の中村ゆりさんは、氷柱とは違う大人なかわいらしさや深みのようなものを瞬時に魅せて楽しませてくれてるなと思っており、毎回楽しみに見ています。