映画「かがみの孤城」(12月23日(金)全国公開)で、當真あみさんが声優に初挑戦している。原作は2018年の本屋大賞を受賞するなど、多くの人に愛される辻村深月さんのベストセラー小説。学校での居場所をなくし、家に閉じこもっていた主人公のこころが、同じ中学生の少年少女たちと共に“鏡の中の城”に迷い込むファンタジーミステリーだ。監督は「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」などの原恵一さん、制作は「劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」などのA-1 Picturesが担当。當真さんは1000人を超えるオーディションで原監督に見いだされ、こころ役に抜てきされた。自身も原作の大ファンだという當真さんに、アフレコのエピソードや作品への思いを聞きました。
◆オーディションを経て、こころ役に決まった時の心境はいかがでしたか?
喜びしかなかったです! 実はオーディションがあるもっと前にこの作品の原作を事務所の方に薦められて、本をお借りして読んでいたんです。自分でも買って読み直すぐらい大好きな作品になり、“アニメ化したら面白そうだな”と思っていたので、オーディションのお話を頂いた時は驚きましたし、ヒロインのこころちゃん役に決まってもっとびっくりしました(笑)。
◆原作のどういった部分にそれほどひかれたのでしょう?
お互いのことを全く知らない7人の中学生が異世界のような鏡の中のお城に集められて、そこに隠された鍵を見つければどんな願いでもかなえてくれる――その設定だけでもワクワクするんですけど、なぜその7人が選ばれたのか、そしてみんながかなえたい願いとは何なのか。そういう部分が少しずつ明らかになっていくんです。張り巡らされた伏線の回収やミステリー要素も面白く、まるでいろんな謎解きに挑んでいるような感覚になりました。
◆當真さんから見て、こころはどんな女の子ですか?
こころちゃんは、引っ込み思案でおとなしい子です。学校になじめず、家に閉じこもっていて。同じ中学生でも、お城の中で出会うアキちゃん(吉柳咲良)は物事をスパッと言うタイプなので、まるで対照的ですね。
◆ご自身はどちらのキャラクターに近いですか?
断然、こころちゃんです(笑)。私も自分からはっきりと言いたいことが言えたり、自ら進んで行動を起こせたりするタイプではないので。だから、こころちゃんを演じながら“分かるなぁ”と共感する部分がたくさんありました。
◆初めての声優への挑戦はいかがでしたか?
やっぱり普段の映像のお芝居とは全然違いました。自分の声だけで演じることがこんなにも難しいものなんだと痛感しました。息遣いとかちょっとした抑揚とか、映像でのお芝居や普段の生活でも意識しないようなことも表現しないといけなくて。アフレコはリハーサルも入れて4日間あったんですけど、特にリハーサル1日目は本当にガチガチでした。
◆原監督からはどのようなディレクションがありましたか?
一番印象に残っているのは、「練習しすぎないでね」と言われたことです。“えっ!?”と驚きました。絶対に「もっと練習してきてください」と言われるだろうと覚悟していたので。まさか真逆のことを言われるとは思いませんでした。
◆それはびっくりしますよね(笑)。
でも理由を伺ったら、「オーディションの時の雰囲気がこころちゃんにすごく合っていたから」とおっしゃっていて。「練習しすぎることで、その雰囲気が変わってしまわないように」と。その言葉のおかげで、すごく心が軽くなりました。私は声優初挑戦ですし、北村匠海さんや麻生久美子さん、宮﨑あおいさんなど、そうそうたる共演者の皆さんがいらっしゃる中で、どんなお芝居をすればいいのかと不安でいっぱいだったんです。でも、「練習しすぎないでね」という監督のその言葉に、いつもの自分でいいんだと思えてホッとしました。
◆こころを演じる上で難しかったところは?
こころちゃんは、私と似ている部分があるとは言え、違う人生を歩んでいます。なので、自分が経験したことのない出来事に遭遇する場面では、こころちゃんの心情をどう理解すればいいかと時間をかけて考えました。もちろん、台本にその時の気持ちとかが書かれていることもあるんですけど、きっとそれだけじゃなく、いろんな気持ちを抱えているはずで。そこを自分なりに解釈していくのが大変であり、演じがいを感じるところでもありました。
◆演じていて、特に印象に残っているシーンは?
宮﨑あおいさん演じる喜多嶋先生とのシーンです。2人の会話はすごく気に入っています。こころちゃんにとって喜多嶋先生は、唯一自分を理解してくれる大人なんです。「こころは悪くない」となだめてくれる場面があるのですが、その時の喜多嶋先生がとっても優しくて。まるで私自身に言ってくれているようで、心が温かくなりました。
◆初めてのアフレコを全て終えた瞬間は、どんなお気持ちでしたか?
「やり切ったー!」という達成感が一番でした。4日間の中にいろんなことが凝縮されていて、濃厚な時間を経験させていただきました。だからこそ、やり切った感がすごくありました。
◆自己採点するなら何点を付けますか?
そうですね…90点をあげたいです。頑張りました! 監督からも収録後に「あみはこころちゃん、そのものだ」と褒めていただけて。その喜びも含めて90点を付けたいです。
◆実際に映画を拝見して、すごくすてきな雰囲気の声をお持ちだなと感じました。當真さん自身、自分の声についてはどう感じていますか?
普段から自分の出演作を見るようにしているんですけど、その時の印象として、自分の声ってもうちょっと低いと思っていたんです。でも、今作で画面を通して自分の声を客観的に聞いたら、想像していたよりも高くて。“えっ、こんなに高かったんだ!?”という驚きがありました。私としては、それはうれしい発見で。“自分の声、嫌いじゃないぞ”と思いました(笑)。
◆こころはお城に行くことで、自分の居場所を見つけたように心が穏やかになります。當真さんにも、そういった場所はありますか?
私は家ですね。一番心が落ち着きます。その日あった出来事を母に話したり、電話で友達と話したり。家にいて、そうやって誰かと話している時が一番リラックスできるんです。特に母とはたくさん話します。と言っても、一方的に私の話を聞いてもらうことがほとんどなんですけど(笑)。でも、話を聞いてもらえることで心が軽くなります。
◆こころたちのように、仲間と協力して何かを達成したという思い出はありますか?
中学生の時にクラス対抗の合唱コンクールがあって、みんなで一致団結して臨んだ思い出があります。「絶対に一番になるぞ!」って休み時間に集まったり、放課後も残って練習したり。そういうことには結構、頑張っちゃうタイプです。一人だけ怠けているとみんなに迷惑がかかってしまいますし(笑)。みんなで協力して頑張ることが大好きなんです。
◆最後に、映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。
この映画で活躍するのは、7人の中学生たちです。もう子供ではないですけど、大人とも言えない。そんな成長過程にいる彼らはそれぞれに悩みを抱えていて、そこはきっと共感してもらえるのではないかと思います。一人だと悩んで動けなくなっても、心を許せる人が近くにいれば前向きに進んでいける。そういうメッセージも込められているので、ぜひたくさんの方にご覧いただきたいです。
PROFILE
當真あみ
●とうま・あみ…2006年11月2日生まれ。沖縄県出身。O型。「カルピスウォーター」の14代目CMキャラクターを務め、注目を集める。主な出演作は、ドラマ『妻、小学生になる。』『霊媒探偵・城塚翡翠』『オールドルーキー』など。2023年1月8日(日)スタートのTBS系日曜劇場『Get Ready!』にも出演する。
作品情報
映画「かがみの孤城」
2022年12月23日(金)全国公開
<STAFF&CAST>
原作:辻村深月
監督:原恵一
制作:A-1 Pictures
主題歌:優里「メリーゴーランド」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
声の出演:當真あみ、北村匠海、吉柳咲良、板垣李光人、横溝菜帆、高山みなみ、梶裕貴/芦田愛菜/宮﨑あおい
●photo/小澤正朗 text/倉田モトキ hair&make/SAKURA(makiura office)styling/井阪 恵(dynamic)
©2022「かがみの孤城」製作委員会