◆続いて「ユニットバス」。こちらは、ゆいにしおさんが作詞・作曲を担当されています。
以前、ゆいさんには「hello new pink」という曲を書いていただいたのですが、「ユニットバス」はそのストーリーの後日談となります。歌詞に「ワンピース」という言葉が入っているなど、前回とのつながりを感じられるのもポイントですね。ゆいさんの作るオシャレで艶っぽい、流れる水のようなメロディがお気に入りです。
◆歌う際も艶っぽさは意識しましたか?
実はゆいさんから「諦める感じで歌ってください」というディレクションがあって。この曲の主人公はいろいろあって相手と別れることになるけれど、もうあきらめがついているんです。なので、艶っぽさを特別意識することはなく、感情をこめ過ぎず思い出に浸るように淡々と歌いました。この曲はファルセットと地声を組み合わせて歌う箇所が多いんです。それもあってか、自然に出てくるファルセットを活かすというよりも「ここはファルセットで、ここで地声に戻す」という細かいディレクションがありました。難しい曲でしたが頑張ってレコーディングしたので、ぜひ聞いてほしいです。
◆3つ目の新曲は「Oh my heart」。
かっこよさと強さが魅力的な曲です。レコーディングでも「強く引っ張っていく感じで」というディレクションがありました。この楽曲の主人公はうらやましくなるぐらい強い人。ここまで前向きに全てを捉えられたらすごいと思います。
◆憧れがある。
そうですね。「世間のセオリーなんかいらない」「キミもキミのまま それがいいから」って歌詞は、自信がない自分の背中を押してくれる……というより叩いてくれているような気がします。「どうしようもない時は笑ったら?」という言葉も印象的でした。私、もうどうしようもないときでも、思い悩んじゃうタイプなんです。でも、悩んでもしょうがないこと、答えが出ないこともあるじゃないですか。そういうときは笑ったらいいのかも、とこの曲を聞いて改めて思いました。明るく前向きなこの曲が誰かの救いになれば、私もうれしいです。
◆続く「ギフト」はご自身で作詞された楽曲です。
最初からリード曲は私が書くと決まっていたのですが、その時はまだどんな曲になるのか聞いていなくて。一体、どんな曲調になるんだろうと思っていたら、ストレートなジャズがきて驚きました。正直、「また難しいことを言いよるわ」と思っちゃいましたね(笑)。まず曲を理解するのに苦労しました。ジャズは単純にABCという流れじゃないので、そこでつまずいちゃって。
◆苦労しながら書いた詞には、どのような思いを込めましたか?
落ち込んだときや自己肯定感が低くなった時に、どんな言葉をかけてもらって、自分がどういう気持ちになれば「次も頑張ろう」「前向きになろう」と思えるのか考えながら歌詞を書きました。結果的に私のメンタル回復法をつづったような歌詞になっちゃったかもしれません。ただ、ネガティブな言葉は絶対に使いたくなくて。私の持ち合わせているポジティブな言葉と「人は誰も幸せで ロマンティックならいいのに」といった少しの願望を歌に込めました。
◆作詞する際は歌いやすさなども考えている?
考えられないですね……。本当にこれは何度書いてもダメです。
◆ダメ(笑)。
いっつも「こんな高音のところで歌いづらい言葉を入れたのはだれ?」「あっ、私だ」って自問自答しています(笑)。詞の内容を優先しちゃうんですよね。
◆つまり、それだけストレートに気持ちが乗っているということ。
そうかもしれません。いったん歌うことは忘れて、手紙を書く感覚で作詞しています。
◆そんな歌詞が、ブラスサウンドが印象的な曲に乗って届けられます。
いろいろな楽器が楽しそうに演奏していて、聞いているだけで体が思わず動き出すようなハッピーなサウンドに仕上がっています。今回のアルバムのリード曲にふさわしい、ゴージャスな楽曲ですね。
◆アルバムには新曲があと2つ収録されていますね。ひとつが「100年前に会いましょう」。
森(由里子)先生のまるで映画を見ているような詞が印象的です。聞いているだけで、1本の洋画を見ているような気分になる曲ですね。タイムマシンに乗って知らないところにたどり着いたとしたら、私ならすごく焦ってしまいそうですが、この歌詞の主人公は全部楽しめちゃうんです。「この後、何が起きるんだろう(ワクワク)」みたいなマインド。明るくて、元気をもらえます。
◆歌っているときも楽しかった?
楽しかったですね。レコーディングで「ワクワク感や楽しみな気持ちを存分に声に乗せてほしい」というディレクションがあったので、ウキウキしながら歌いました。
◆もうひとつの新曲が「トロイメライ・ミライ」。こちらはどのような曲ですか?
小さい頃の夢はまだ持ったままで諦めていない、きっと誰かと一緒ならかなえていけるという思いが込められた、ポジティブな楽曲です。個人的には、応援してくれているみなさんと私のことを表現した曲になっているとも感じたので、「一緒に羽ばたいていきたい」という私とみなさんのこれからをイメージしながら歌いました。(2022年に行ったライブツアー)『What a Sauce!』のアンコールで「君に話したいこと」という曲を歌ったとき、応援してくださる方々の力や、私とお客さんの絆を感じたんです。それを踏まえた曲をいつか歌いたいと思っていたので、この曲に巡り合えてうれしいですね。
◆全体的にポジティブな気持ちになれる楽曲が集まったアルバムに仕上がっているんですね。
「ユニットバス」は内容的には悲しい出来事ですが、最終的には前を向いている楽曲です。全体的にポジティブな気持ちになれる曲が集まった気がしますね。個人的にハッピーエンドが大好きなので、こういう曲たちを歌えて楽しいです!
◆このアルバムに収録されている楽曲のどれかに、救われる人がいるかもしれません。
そうだといいな!