浮気相手に捨てられた売れない脚本家の夫・孝志(山崎樹範/荒木宏文・Wキャスト)と、家事育児だけの生活から外の世界に飛び出そうとしている妻・恭子(篠原涼子/佐藤仁美・Wキャスト)。そんな往年の夫婦が赤裸々なやりとりを繰り広げる朗読劇「したいとか、したくないとかの話じゃない」が4月20日(木)より上演。劇中では演出の一部として、若かりしころの2人の様子をオリジナルドラマとして上映することに。その劇中ドラマで恭子を演じる乃木坂46の早川聖来さんに、撮影エピソードや自身の結婚観などを聞きました。
◆朗読劇の中に、映像の劇中劇が入るというのは新鮮ですね。最初に出演の話を聞いたときはどう思いましたか?
びっくりしました! どういう形で流れるのか本番まで分からないので、ちょっとワクワクしています。監督やスタッフの皆さんが、朗読劇の物語と劇中ドラマの物語をすり合わせてくださったので。私自身も、しっかりストーリーと向き合うことができました。
◆最初に台本を読んだときの感想は?
夫婦のお話ということで、自分としてはあまりピンとこないのかなと思っていたんです。でも人間同士のすれ違いというのは、年齢には関係なく、きょうだいや友達同士でもあることなので。そういった意味で、共感する部分は多かったです。見てくださる皆さんにも共感していただきたいという思いで、演じさせていただきました。
◆聖来さんが共感する部分というのは、やっぱり同性の恭子の方ですか?
恭子さんもそうですけど、孝志さんの気持ちも分かる部分が結構あります。やっぱり一緒にいると、深く話す時間って意外と少なかったりするじゃないですか。どちらが正しくてどちらが間違っているとかではなく、お互いにだんだん自分の思っていることを言えなくなってくるというか。そこから生まれたちょっとしたすれ違いの差が、数年後には大きくなってしまうのかなって。2人が話していることがどちらも理解できる分、台本を読んでいてすごく楽しかったです。
◆恭子のキャラクターについては、どのように捉えていますか?
朗読劇の方の恭子さんは、結構気が強いんですよね(笑)。でも若いときから気が強いかと言ったら、それは何か違うような気もして。若いころって、好きな人の前だと猫をかぶったりすることが多少あると思うんです。なので、私のお芝居としてはそこまで強くなくていいのかなと思いました。ただ、一人の母親になったときの強さは意識しました。
◆母親になる前と、なった後のお芝居の変化を、監督が絶賛していました。
監督からもアドバイスを頂きつつ、自分でもいろいろ考えました。最初の読み合わせではこういうお芝居でいこうと思っていたものが、いざ衣装を着て撮影してみたらちょっと違う感覚があって。当初に考えていたものとはガラッとお芝居を変えてみたりしたんです。現場では正解は決めずに、私たちが自然に向かった先のお芝居を監督が選択してくださったので、すごく自由に演じさせてもらいました。
◆何か大人っぽさを意識したりはしましたか?
大人っぽくというのは全く考えなかったです。ただ単に年齢を重ねれば大人になるのかと言ったら、そうではないと思いますし。実際に作品を見ていただけたら分かると思うんですけど、恭子も孝志もわりと子供っぽいんですよね。しかも、こういう大人っているよなって感じるところもありますし。なので、演じる上でもそこまで大人になる必要はないのかなと思いました。
◆今回の出演にあたって、乃木坂46のメンバーとお話をしたりしましたか?
ドラマの孝志を演じるのが、先輩の久保史緒里さんと昨年舞台で共演されていた、ゆうたろうさんで。久保さんに「ゆうたろうさんと一緒だよ」っていう話をしたぐらいですね(笑)。久保さんが舞台に出演していたとき、現場のお話をいろいろ聞いていたんです。本番が始まるまで、ゆうたろうさんとなかなかお話できなかったみたいで。
◆聖来さんはお話できたんですか?
私は今回ずっと2人だけの撮影だったので、結構おしゃべりしました。「しらす丼、おいしいですね」とか(笑)。神奈川の茅ヶ崎市で撮影したのですが、海でのシーンを撮影した後に、海の家で生しらすを食べたんですけど、超おいしくて。あとプロデューサーさんが、茅ヶ崎の牛乳を使ったおいしいアイスクリームをたくさん用意してくださって、みんなで食べたりもしました。あとは、海ではしゃいだり、街の中を走ったり…。朝早くから夜遅くまで1日で撮り切ったのですが、とても楽しい1日でした。
◆劇中のスマホを使ったカットは、ゆうたろうさんが撮影したそうですね。
そうなんです。私がそのスマホに向かって「大好き」っていうせりふをいろんな場所で言うんですけど。最初に撮ったのがドラマのシーンではなく、そのシリーズだったんです。ゆうたろうさんとはほとんどまだ何も話せていない状態だったので、ちょっと気まずくて照れてしまいました(笑)。
◆特に恥ずかしかったのは?
駅のロータリーで叫んだカットです。私は駅の跨線橋にいて、ゆうたろうさんは下のバス乗り場でスマホを構えていたんですけど。そこに向かって「愛してる~!」というせりふを叫んだ瞬間、バスに並んでいたご年配の方々が全員一斉にバーって振り返ったんです! それがもう、超恥ずかしくて…(笑)。これが「ドラマを撮影しています」っていう雰囲気を出していたらいいんです。でも、スタッフさんも通行人役みたいに街に紛れ込んでいるし、撮影もカメラではなくスマホなので全然目立たなくて(笑)。“もしかして私、変な人に思われてない?”と思って、ワナワナしました! しかも、そうやって意を決して叫んだのに、「すみません、もう1回撮ります!」って言われたときには“はぁぁ~…”ってなりました(笑)。
◆それは大変でしたね(笑)。いつまでも大人になり切れないところが少しかわいらしくもある孝志ですが、彼のような男性をどう思いますか?
正直、早川聖来としては…孝志みたいなタイプは合わないだろうなと思いました(笑)。ちょっと仕事がうまくいかないと、ワーッと叫んであたり散らしちゃうところは困ってしまいます。いや、共感できないわけではないんです。私も何かうまくいかないときには泣いちゃうこともあるから。でも一緒にいて、お互いに仕事がうまくいかない日があったら、2人共泣き叫んでしまって大変だと思うんです(笑)。
◆となると、理想のパートナーとしてはどんな人がいいですか?
温厚な人がいいです。孝志にも温厚なところはあるんですけど、ちょっと楽観的すぎる感じがあるので…。もう少し物事を現実的に考えられる人がいいです(笑)。でも本当にいろいろなタイプの人がいますし、全部がダメというわけではなくて。“ここはいいけど、ここはちょっとな~”とか、いろいろ自分に置き換えながら考えてしまいました(笑)。
◆孝志のいいところを挙げるなら?
一緒にはしゃげる、というところではないかなと思います。恥ずかしがらずに海ではしゃいだりするのは、“一緒に楽しい時間を過ごすぞ!”という意欲も感じますし(笑)。女性はやっぱり“いつまでも女の子でいたい!”という願望があるので、そう思わせてくれるところはすてきだなと思います。
◆妄想話になりますが、将来もし結婚するとしたら自分はどんな奥さんになると思いますか?
えぇ~!? 想像したこともないので、かなり未知数ですね…(笑)。専業主婦になるかどうかも、その状況になってみないと分からないです。でも何か、フルで働くとはいかないまでも、多少は働いている気がします。私、いろいろなところに自分の居場所を持っておくべきだと思っていて。人生って、1か所目がダメだったら、その次の場所、またその次の場所…というのを繰り返しながら成り立っていると思うんです。もし家庭だけしかなかったら、何かあったら行き場所がなくなっちゃうじゃないですか。それはちょっと嫌だなっていう気持ちがあります。居場所というのは仕事だけではなくて、友達とかでもいいと思うんですけど。
◆恭子は一児の母ですが、理想のお母さん像みたいなものはあったりしますか?
そこもあまり考えたことがないので(笑)、イメージが湧かないんですけど。でも自分の母親のことを考えたら、いつも友達みたいな感じで私に接してくるんですよ。なので、何か母に相談したいことがあったときに友達みたいな感覚で話すことができるんです。そこは私もいいなと思っているので、母みたいな人になれたらと思います。
◆そんなお母さんに救われたエピソードがあったら教えてください。
中学生のとき、学校のことがうまくいかなくて、ストレスがたまってしまったことがあって。そのときは、「自分がしんどくても相手のことを尊重して、自分のことが好きでい続けられる聖来はカッコいいよ」ってずっと味方してくれました。「自分がいいと思ったことは相手に意見を合わせてもいいけど、悪いと思ったときに相手に合わせて自分を押し殺すのは違うよ」って優しく言ってくれて。その言葉はすごく助けられました。
◆すてきなお母さんですね。この作品を通じて、夫婦とはどんなものだと感じましたか? また、夫婦にとってどんなことが大切だと思いますか?
大切なことかぁ…絶対に私に聞く質問じゃないと思います(笑)。でも何でしょうね…人と一緒にいると、“相手のこういうところを直してほしい”とかマイナスな部分ばかりに目が行きがちだと思うんです。例えばテレビを見ていても、旦那さんの愚痴を言ってる奥さんっているじゃないですか。それだけ愚痴るのに、結局どうして一緒にいるのかということだと思うんです。友達に彼氏の愚痴を聞いてほしい女の子も、その彼氏とずっと別れなかったりしますし(笑)。みんな、何だかんだで一緒にいるんですよね。それってどうしてなのかというと、“嫌な部分を話してはいるけど、それ以上に一緒にいたいって思う部分がある”からなんだろうなって。なので、その“一緒にいたい”という気持ちを持ち続けることが大切なんじゃないかなと思いました。きっと、ずっと一緒にいたり夫婦になったりすると、お互いにいい部分がないがしろになって、悪い部分ばかり見えてきちゃうと思うんです。結局はバランスの話で、嫌な部分が半分よりも上回ると、うまくいかなくなっていく気がするので。いい部分をお互いになくさないようにすればいいのかなと思います。
◆この作品は、コロナ禍をきっかけとした登場人物の心境の変化が描かれています。聖来さん自身、コロナ禍によって何か心境が変わったりしましたか?
エンターテインメントって後回しなんですよね。最初に緊急事態宣言が出たときも、エンタメは必要ではないと思われてしまって。そういう、人の楽しみという部分を最初にどんどん減らさなければならないことはつらいなと思いました。それこそ演劇も中止になったり、ドラマも撮影が休止になって放送が止まったりもして。そういった中の一つで私も活動してきて、ちょうどエンタメの大切さというのを実感していた段階だったので。本当にそれはつらかったですし、自分に何ができるんだろうということもいろいろ考えました。
◆当時、先が見えない中で心の支えや癒やしになったことは?
料理です。私、本格的に料理をするようになったのはコロナ禍になってからなんですけど、すごく上手になりました! 以前だったら、外で友達やメンバーと会ってご飯を食べていたのに全部できなくなってしまって。ストレスのはけ口がなくなったとき、1人でご飯を食べて味気がないのが嫌だったんです。でも料理をしたら手間を掛ける分、食事に関わる時間がすごく長くなって。その時間をどんどん増やしていったら、心が満たされるようになりました。
◆今はどんなことが楽しみですか?
夏が楽しみです。私、昔から夏が一番好きだったのに、コロナ禍で夏が一番嫌いになってしまったんです。自分の誕生日も夏休みもお祭りもあって明るくて楽しい季節だと思っていたのに、ここ3年ぐらいはただただ暑いだけになってしまって…。私の中で一気に最下位のシーズンになってしまいました。でも今ちょっとずつ、いろいろなルールが緩和されてきてイベントも増えているので。このままどんどん良くなっていったら、また夏が一番好きになるんじゃないかな。そのときが私にとっての本当のコロナ明けだと思います。今はそこを楽しみにしながら日々生活しています。
PROFILE
●はやかわ・せいら…2000年8月24日生まれ。大阪府出身。A型。乃木坂46・4期生。現在、ドラマ『アクトレス』(Lemino、ひかりTV)が配信中。また、ラジオ『らじらー!サンデー』(NHKラジオ第一)、『INNOVATION WORLD(KYOCERA TECHNOLOGY COLLEGE)』(J-WAVE)にレギュラー出演中。
作品情報
朗読劇「したいとか、したくないとかの話じゃない」
2023年4月20日(木)~23日(日)東京・俳優座劇場
<STAFF&CAST>
原作・脚本:足立紳「したいとか、したくないとかの話じゃない」(双葉社刊)
脚本・演出:新井友香
劇中ドラマ監督:熊坂出
出演:篠原涼子、山崎樹範、荒木宏文、佐藤仁美
劇中ドラマキャスト:早川聖来(乃木坂46)、ゆうたろう
主催/企画・製作:AOI Pro.
<あらすじ>
時は、コロナの話題でもちきりの2020年春。
映画監督として一時はブレイクしかけるも、その後鳴かず飛ばずのまま、浮気相手にも振られる始末の夫・孝志(山崎/荒木・Wキャスト)。そんな夫に内緒で応募したシナリオコンクールで優秀賞を受賞し、家事育児だけの生活から外の世界に飛び出そうとしている妻・恭子(篠原/佐藤・Wキャスト)。
ある日の夕方、ドラマ化が決まった脚本の修正作業に追われる恭子の元に、保育園のお迎えに行った孝志から一通のLINEが届く。『今晩、久しぶりにしたいです。どうですか……?』
このメッセージをきっかけに、我慢と妥協に満ちたふたりの関係が動き始める。
公式サイト:https://aoistage.com/shitaitoka/
●photo/中村功 text/橋本吾郎 hair&make/浅山ジャスミン莉奈(TUNE)、中間愛梨(TUNE)、眞舘楓