水瀬いのりの11枚目のシングル「アイオライト」が4月19日にリリース! 表題曲は彼女自身も崎宮ミサキ役として出演するTVアニメ『デッドマウント・デスプレイ』(TOKYO MXほか)のEDテーマとなっている。新たな挑戦もたくさん詰まった楽曲について、たっぷりと語ってもらいました。
誰かを引き込むカッコ良さではなく
自己完結するカッコ良さを感じる曲
◆「アイオライト」のMVのティザー映像が流れたときは、ザワついたのではないですか?
水瀬:私たちチームは撮り終わっているから知っていますけど、皆さんはあのジャケット写真があってのティザー映像でしたから、刺激は強かったと思います。これまで提示してきた世界観とはあまりに違っていたので、私的にもいい変化球を投げられて、しめしめ感はありました(笑)。
◆これはやはりアルバム『glow』を出したことが大きかったのでしょうか。
水瀬:そうですね。『glow』で、自分が好きな音楽のジャンルとか歌い方や表現を正直に、そして赤裸々にチャレンジしたことで肩の荷が下りたというか、とてもラクになったんです。ちょうどブラッシュアップされた自分だったので、果敢にチャレンジしていく勇気みたいなものは得られていたと思います。ちょっとしたチート状態というか。
アルバムリリースとツアーを経て、なりたい自分の片鱗をつかみかけた状態だったので、自分の幅を拡張するいいタイミングでもあったんです。
◆何をしてもブレない自分の核、みたいなものができたのかもしれないですね。
水瀬:だからこそ、今まで通りじゃないことをしたほうが意味があるんじゃないか? という気持ちはありました。そんなときに『デッドマウント・デスプレイ』のタイアップのお話をいただいたので、巡り合わせだなと。今までの私にはなかったジャンルに挑戦できる! その背中を押してくれる作品だったので、これは全力で乗っかろう! と。作品に染まった1曲を作りたいと思い、制作に臨みました。
◆その想いをチームで共有して、コンペで曲を集めたのですね。
水瀬:どこまで攻めよう、みたいなところはすり合わせましたね。ただ作家さんも、私のアーティスト活動の色を汲んで制作してくださっていたので、かなりぶっ飛んでいる! みたいなものはなくて、私の中にあるものだけど、その中でも尖った曲がそろっている感じでした。だからどれを選んでも、新しいことができそうだなって。
◆イントロから印象的でしたが、なぜこの曲を選んだのでしょうか。
水瀬:やっぱりイントロを聴いたときに「うわっ、これすごくかっこいい!」って思ったんですよね。編曲される前からあのイントロの感じと、こもったところからクリアになっていく雰囲気はあって。聴いていると、誰かを引き込むカッコ良さではなく、ずっと自分語りみたいな、自己完結したカッコよさを感じる1曲だったんです。
それが『デッドマウント・デスプレイ』の主人公ポルカ君(※異世界から転生した魂を肉体に宿した少年・四乃山ポルカ)の在り方とシンクロする感じがして…。己を貫く強さ、貫いた先にあるカリスマのようなカッコ良さを音楽から受け取りました。
◆アニメも意識しながら選んでいたのですね。歌詞も、四乃山ポルカ目線ですよね?
水瀬:歌詞はほぼリテイクがなく、志村真白さんが原作を読み込んで、世界観をキャッチして書いてくれました。“アイオライト”という言葉も私は知らなかったんですけど、そういうところも含めて自分にない世界観を描いてくれたので納得がいったし、言葉でねじ伏せられるような気持ちはありました(笑)。
その言葉の強さは歌詞カードで確認してほしいんですけど、〈アイを謳え〉って“アイ”がカタカナになっているんですよね。そこは愛情の“愛”だけでなく、自分の“I”であったり、悲しみの“哀”だったり、いろんな言葉に変換できると思うんです。それはポルカ君だからこそだろうなと思うので、『デッドマウント・デスプレイ』らしさが詰まっている部分でお気に入りです。
◆水瀬さんも「殺し屋殺し」の異名を持つ崎宮ミサキを演じていますので、アニメも観てほしいですよね。そうすればポルカになぜいろんな“アイ”があるかも分かるというか。個人的には「僕」が最後に「僕ら」になるところも、ポルカ君っぽくて良いなと思ったんです。
水瀬:物語が進むと、この歌詞の温かさとかもシンクロすると思います。最初は無機質で、人ではない感じがあったポルカ君だけど、作品が進むにつれて打ち解けていくようなところもあるので、そのあたりもリンクしていていいですよね!
◆ちなみに志村さんはレコーディングにもいらしたのですか?
水瀬:はい! 真白さんには今回初めてお会いしたんですが、自分の道を貫くような強さがある感じがしました。でも、お話をするとめちゃめちゃ気さくなんですよね(笑)。シャイなので、ドキドキ! みたいな、かわいらしさもあるんですけど、見た目はクールで絵になる方なんです。
今回は編曲が何度もお世話になっているEFFYさんなんですけど、アウトロを3~4パターン考えてくださって、どれがふさわしいかみたいなところを真白さんと私を入れて一緒に会議をしたんです。ブツって切れる感じもいいかなってことになったんですけど、MVではそのアウトロに合わせた振りもあるので、EFFYさん渾身のアウトロは、MVでもしっかり活かされています! とお伝えしたいです。
◆細かいこだわりがあるのですね。ちなみに、水瀬さんお気に入りのアレンジは?
水瀬:1番が終わったあとのシンセですかね! あそこはめちゃめちゃオシャレだと思いました。歌以外の音も終始カッコいいので、歌でもそのカッコ良さを活かせるようにしたいなとは思いました。
◆低音の感じもクールで、カッコ良かったですよ。
水瀬:力を抜いて、気だるくダウナー系で歌っていきました。ボーカルでいうと、サビがダブルになっているんです。それはレコーディング現場で決まったのですが、アニメでは異世界から来た屍神殿の魂と、もともとのポルカ君の魂の2つが表現されているので、そういう意味も込められるのではないかというアイデアだったんです。こういう長いダブルが入る歌はこれまでなかったので、作品らしさを感じるし、混沌とした世界に入ってしまったようなグルーヴ感も得られると思います!
2番以降で、後悔のような感情で主人公がブレる、みたいなところは歌っていても難しくて、どこまで感情的にするかという課題はありました。フェイクで伸ばすところなどは、一度録り終えてから、改めて録り直したんです。よりポルカ君を憑依させて、歌心というよりお芝居に近い感じで、頭を抱えるようなニュアンスを出したいなと思って。それでも前を向くような感じにしたかったんです。
◆アニメに寄り添った感情をフェイクに入れるというのは、聞いたことがないかもしれません。あと、EDアニメーションは、もともとのポルカ君の魂が入っている真ポルカ(サメのぬいぐるみ)が踊るという、かわいらしいものでしたね。
水瀬:真ポルカ君が踊ってくれるとは思わなくて! すごくかわいかったです! ミサキも冒頭と最後にちゃんといましたね!
◆アニメの作品の話を少しすると、水瀬さんの演じるミサキは、狂気的なキャラクターですが、想像していた声よりも大人な感じで、それが怖くて良かったです。
水瀬:ポルカ君よりも背が高かったし、スタイル含めて等身大の女性なのかなと感じたので、必要以上にかわいらしくしないほうがいいのかな? と思いました。その中で無邪気さだったり、底なしの能天気さみたいなところも出して、この人は素でこれなんだ! という裏付けになればいいなって。だから小悪魔とかではなく、スイッチが本当に“殺るか殺られるか”みたいな感じで、常に危険な子なんです。
◆なかなかヤバめのヒロインですよね(笑)。そして話題となったMVですが。
水瀬:もう皆さんはフルで観ていただけたと思いますが、ジャケットの感じがそのままMVに直結しているのは初めてかもしれません。ダンサーの皆さんとシンクロする動きだったり、パントマイムっぽい、操り人形のような、ロボのような動きが摩訶不思議な感じでした。体の動かし方も、骨っぽさを感じますよね? あと、体温を感じない映像ではあったので、作品の世界観にピッタリでした。私は紫色の手袋をつけているんですけど、ダンサーさんは黄色から手袋がカラフルになるという演出で、アイオライトという石の「多色性(角度によって違う色に見える現象)」とシンクロしていて。角度によっては一色ではないというのを表現していたので、お気に入りです。
◆水瀬さんも踊っていますね。
水瀬:踊りましたね。動きをレクチャーしていただきながらでしたけど、サビではダンサーさんとシンクロして踊っています。
◆そこは、お客さんもできるかもしれませんね。
水瀬:確かに! 覚えてやってほしい気持ちもありつつ、ライブだと私はマイクを持っているだろうからどうなるんだろう。でも動きは染み付いているから、MVで見たことがある動きを実際のライブでもするかもしれないです(笑)。
自分がどうしたいかという
気持ちを大切にしてほしい
◆カップリング「クータスタ」は、ロックテイストと言えばお馴染みの藤永龍太郎(Elements Garden)さんの楽曲ですね。
水瀬:安定と信頼の藤永さんです(笑)。この曲は、こういうテーマでこういう感じのことを歌いたいですと藤永さんにお伝えして、書き下ろしていただきました。
◆すごく水瀬さん感があると思いましたが、やはり事前にお話はしていたのですね!
水瀬:めちゃめちゃいろいろなことを伝えました。私が見てきた景色とか、立ってきたステージから得る自分の想い、そして自分の未来やアーティストとして何を伝えていきたいのかを歌にしたいと、気持ちをお伝えしたんです。それに書く上で、マイナスな表現とかネガティブな感情を隠したくないということも託したので、それも歌詞には含まれています。
いただいた歌詞も、生々しい言葉があるんですよ。それは藤永さんが並べてくれた言葉ではあるんですけど、私が思っていた方向と同じだったので、すごいなって思いました。ひょっとしたら藤永さん自身もそういった感性を持っていて、こういう感じかなって当ててくれたのかもしれないですけど、分かる人には分かるんだなぁと思いました。
◆例えばどのようなことを話されたのですか?
水瀬:いつも言っていることではあるんですけど、私自身、大勢の人に自分の歌を聴いてもらっている感覚がないままステージに立ってしまうことがあるんです。幕が開いて、こんなに人がいるんだ! って驚くというか(笑)。人が多い=みんなの希望を背負っているという重圧に押しつぶされがちではあるので、私は誰かのために歌うのではなく、自分のために歌おう! というのは、定期的に自分の中で唱えているんです…。
この歌詞に出てくる〈わたしがわたしだと歌を歌うのは きっとあなたに聞いてほしいから〉は、もしかしたらファンへ向けての言葉として藤永さんは書いてくれたのかもしれないんですけど、私はダブル・ミーニングで捉えていて、私自身に言っているとも思っているんです。
アーティスト水瀬いのりが歌を歌うのは、アーティストではない水瀬いのりに聴いてほしいから、みたいな。二重の意味で受け取っているんです。なので、〈あなたがきっとわたしに教えてくれたんだ〉も2つの意味で、アーティストと役者、そしてプライベートな私と全部が独立していて。それが合わさるのは奇跡だと思うので、そういう気持ちも込めて歌っています。
◆そう思って聴くと、また深みが加わりますね。なるほど……。『glow』ツアーの横浜アリーナでも、等身大の水瀬いのりとしてそこに立っている感じがしたんですけど、それはあながち間違いではないのかもしれないなと思いました。
水瀬:そうなんです。『glow』で自分の気持ちを正直にみんなに伝えることができたので、ここから先もそういう気持ちを伝えていきたいんです。だからみんなもファンはこうあるべき! という考えは捨ててほしいというか。自分が楽しければそれが正解で、どう応援すればいいんだろうと思っていることも、ひとつの応援なんです。ライブってみんなで作り上げる空間だから、どうしても周りが気になると思うけど、大事なのは自分が悔いなく楽しめることだから。自分がどうしたいかという気持ちを大切にしてほしいんです。
◆それにしても「八月のスーベニア」があって「クータスタ」。ロックな水瀬いのりもいいですね。
水瀬:ただカッコつけて力強く歌うことがロックではないというのは分かってきました(笑)。自分らしくロックを噛み砕いてきていると感じていて、レコーディングもすごくスムーズだったんですよ! それは自分でも意外でした。やっぱり歌詞の理解度やシンクロ度って、曲を歌う上でも作る上でも大切なんだなと思いました。
◆続く「運命の赤い糸」は“結婚”を連想させるような曲ですね!
水瀬:そうなんですよ、めちゃめちゃウェディングソングのようだなと思いながら聴いていたんですけど、この曲、告白はしていないんです。想っていた期間は長くて、勇気を出して次のステップへ、という曲なので。だからラブソングと言うよりは、モノローグラブソングみたいな感じですかね?(笑)。好きだよって伝えるのはまだ先の話っていうところが、ロマンティックなんです!
◆どうして、こういうテーマになったのですか?
水瀬:実は以前からあたためていた曲で、そのときは収録できなかったんですけど、別のタイミングで収録したいからと取っておいたんです。で、最初に入っていた仮の歌詞がこういうテイストで、そのテーマのまま広げてもらおうと、椿山日南子さんに歌詞もお願いしました。
◆運命の赤い糸って、結婚ワードではありますよね。
水瀬:そうなんですよね。で、椿山さんもレコーディング近辺でご結婚されて、レコーディング日にサプライズでケーキを用意して、私もささやかながらプレゼントを贈らせていただいたんです。まさに運命の糸で結ばれた椿山さんをこの曲でお祝いできる! という巡り合わせがうれしくて。
◆本人を祝福する歌にもなっちゃったんですね(笑)。
水瀬:めちゃめちゃのろけソングじゃないですか! みたいな冗談を言ったりしていました(笑)。でも、そのおかげで多幸感のあふれる仕上がりになったと思うし、聴いてくださる方には幸せを願う、温かい曲になったなと思います。
◆共感する方も多いでしょうしね。
水瀬:言いたいけど言えない、言ってしまったら関係が変わってしまう怖さとかもありますからね。それにコロナ禍で関係を進めるにあたっての障害がある期間も長かったから、想いを伝えられないというのは、家族や友達にも当てはまると思うし、明るい兆しが見えてきた今、背中を押してくれる1曲なのかなと思います。
◆そして同日リリースの『Inori Minase LIVE TOUR glow』Blu-rayについてもお聞かせください。でも、自分で自分のライブ映像は見ないのでしたっけ?
水瀬:そうなんですよね……。でもリリースされると両親が家で鑑賞するので、それはちらっと見てます(笑)。ただダイジェスト映像を見ても、ファーストライブの頃では表現できない世界を描けているんですよね。
これはツアーが終わったタイミングでもお話ししていたことなんですけど、アーティストとしての在り方みたいなものに、続けていけばいくほど迷いが生じていったんです。ファンの方が増えていくことに対してのプレッシャーとか、ネガティブな要素も抱えながら走ってきた活動だったので、『glow』という“輝き”って、自分を一番癒やしてくれた時間だったんです。バンドメンバーやライブチーム、制作チームとのコミュニケーションも一番取れて、自分の意見や考えをお話できたツアーでもありました。
それに衣装や演出、ステージへ向かう自分のモチベーションもコントロールできたので、私らしいライブの完成形は、これから見つけていくけど、その基盤になるようなライブツアーだったのかなと思います。だから皆さんにも、映像で観ていただきたいです!
あと、今年もツアーを予定しているので、今度は照明の演出もリハーサルのときに客席側から見て、どんな光に囲まれながら歌っているんだろうって確認したくなりました。
◆それを演出にも活かせればいいですよね。今年9月からのライブツアーも楽しみです。
水瀬:今回は関西の会場も大きくて、これまでの規模とは少し変わってくるのでドキドキしています。そして久しぶりのツアーファイナルが2DAYSで、ぴあアリーナMMなので、ペース配分やコンディション、モチベーションを保ちながら、次はこんなことがしたいなって思えるような、次に繋がる何かを吸収できるツアーにしたいです!
●photo/加藤アラタ(Kato Arata)、三浦一喜(Miura Kazuki) text/塚越淳一
リリース情報
11th Single「アイオライト」
2023年4月19日(水)発売
品番:KICM-2128
価格:1,430円(税込)
LIVE Blu-ray『Inori Minase LIVE TOUR glow』
2023年4月19日(水)発売
品番:KIXM-536
価格:7,700円(税込)
ツアー情報
「Inori Minase LIVE TOUR 2023」
2023年9月17日(日)【兵庫】ワールド記念ホール
2023年9月24日(日)【宮城】仙台サンプラザホール
2023年10月8日(日)【愛知】日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2023年10月14日(土)【福岡】北九州ソレイユホール
2023年10月28日(土)【神奈川】ぴあアリーナMM
2023年10月29日(日)【神奈川】ぴあアリーナMM
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