山田裕貴さん主演の金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』(TBS系 毎週金曜 午後10時~10時54分)に出演中の井之脇海さんにインタビュー。本作は、偶然乗り合わせた電車が未来の荒廃した世界にワープし、何もかも遮断され“ペンディング”された“非日常”の世界へと放り出された乗客たちが、共にサバイバル生活を生き抜く姿を描くヒューマンエンターテインメント。有名大学の大学院農学部・生命科学科で研究する大学院生・加藤祥大を演じる井之脇さんに、共演者の印象や役へのアプローチについて聞きました。
◆今回の役どころを教えてください。
僕が演じているのは、加藤祥大という大学院の博士課程で生命科学の研究をしている青年。中でもミトコンドリアゲノムの解析や遺伝子の構造について専攻していて、植物オタクなんです。オタク気質が故に植物に集中することは得意なのですが、人とのコミュニケーションや距離感が得意ではないので、今回ペンディングされて、彼の植物の知識を生かしつつ、人との距離感をどう縮めていくかを加藤の成長として演じられたらなと思って演じています。
◆撮影前に準備したことはありますか?
クランクインの前に群馬県にある自然史博物館へ行きました。純粋に面白かったのですが、1日では周り切れなかったですね。地球の誕生から、どうやって生命が進化していったのか、その過程において、植物と動物に分かれていったり、動物の中でもどう進化していくのかという遺伝子の話とか、環境による生命への進化の影響とか。その当時は台本がまだ手元になかったので、ひとまず加藤が専攻しているものを知ろうと思って。先日も、図書館で生命の本を読みに行ったのですが、気づいたら3時間ぐらいたっていました。加藤という人物を想像するというよりは、知識をたくさん得る。そして、本に熱中している自分の様子とかを俯瞰で見てみたりしながら、「こういう感じかな」と作っています。
◆監督からの要望などはありましたか?
台本のト書き上に頭をコツコツと叩くみたいなことが書かれてあって。実は1話から3話までには書かれていなかったことなんですが、監督とお話をして、加藤は昔の癖を今でもやっているのではないかということで、考えたりするときにコツコツと頭を叩くことを後から付け加えています。そして、4話では加藤の家族やパートナーの話が出てくるのですが、そこはなんとなくずっと意識しながら演じていました。加藤が人とコミュニケーションを取るのが苦手な理由は、植物オタクだけではなくて。4話を見ていただけたら、加藤という人物がより深く分かると思いますし、1話から3話を振り返ってもらうと「あ、それでこういうことになってるんだ」と思ってもらえるのかなと。
◆加藤は人と接することがあまり得意ではないということですが、特に意識していることはありますか?
独り言が多い役で、説明的なせりふもしゃべるのですが、それを普通の会話として、相手の目を見て「これはこういうことなんです」というふうにすると、コミュニケーションが滞りなくできる人に見えてしまうので、視線をちょっと外したり。ただ独り言だけど、みんなに聞こえていないといけないので、集中して声がどんどん小さくなっていくのとは反対に少しテンションが上がって、大きな声でしゃべっているみたいなことを意識して。ただ、それはあくまで誰かと会話しているのではないことを、序盤は特に気をつけながら演じていました。制作発表でも話題にあがりましたが、米ちゃん(米澤)を演じる(藤原)丈一郎君によく現場で「加藤さんはベラベラしゃべっていたけど、何と言っていたの?」と聞かれて。でもそれは僕としては正解かなと思っています。言葉を1つ1つ伝えるというよりは、加藤は勝手に1人でしゃべっているということなので。それはすごい褒め言葉だなと思って、僕がやりたかった加藤像にちょっと近づけているのかなと確認しながら、そういうことを注意して演じています。
◆今回演じる加藤は井之脇さんと同い年という共通点がありますが、そのほかに共通点や似ているなと感じるところはありますか?
僕自身、映画と山と野球に対しては少しオタク気質なところがあって。その3つのことになると、プライベートだったり、友達といるときに、山の情報を調べてしまったり(笑)。熱中するほど好きなことがあるというのは似ているのかなと思います。ただ僕はあまりゲームをしないですし、わりとみんなといい距離感でしゃべれると思っているので、その辺は加藤として現場にいられるように、似ているところと違うところをうまくバランスよくやれたらいいなと思っています。
◆米澤役の藤原さんと一緒に行動するシーンが多いとのことですが、本作で共演されての印象は?
丈一郎君とは、今回初めてご一緒させてもらっているですが、なにわ男子の西畑(大吾)君と何度か共演していたこともあって、なにわ男子がテレビに出ていると、勝手に応援していたんです(笑)。なので、今回丈一郎君と一緒で共演ができてすごくうれしくて、役柄的に加藤と米澤は近くて深い友情を築いていくような役なので、オフの時からいろいろお話できたらなと考えていたのですが、そんなことを考える必要もないぐらい丈一郎君がすごくフレンドリーに話しかけてくれます。たわいもない会話から、「ここはこうした方が2人の関係がよく見えるよね」とか、「後の方につながっていくよね」という提案を丈一郎君がしてくれて、そこからディスカッションして、いい距離感で作れています。あと、米ちゃんというキャラクターが僕はすごく魅力的だと思っていて。どんなにつらい時でも、みんなのためにピエロ役を買って出るというか。そういう人物に井之脇海自身が魅かれるところがあるので、自然と米ちゃんのキャラクターを好きになって、今いい距離感で撮影できているかなと思います。
◆休憩時間はどんなことをお話しされていますか?
大体2人で野球の話をしています。丈一郎君がパリーグのオリックス・バファローズのファンで。僕がセリーグの横浜DeNAベイスターズのファンなので、ちょうどリーグが被っていないので、ギスギスすることもなく(笑)。さっきもメジャーの吉田正尚選手が2本ヒットを打った話を現場でずっとしていました。
◆すごく楽しそうな雰囲気が伝わってきますが、現場も和気あいあいとしているのでしょうか?
シーンやロケ地によりますが、1話、2話は特に水が飲めなかったり、食料が確保できなかったりするので、そういったシーンの撮影のときは、みんなどこかその緊張感を忘れないようにしていましたね。座長の山田さんをはじめ、撮影に支障をきたさない程度でちょっと水を控えてみようみたいな話になって。喉がカラカラの状態を想像だけではなく、肉体的なアプローチとして、実際にその状況を作ってやりました。その時は和気あいあいとはなかなかいかなくて、本当に結構しんどい思いをしながらみんなやっていました。最近はシーン的にも食料や水がある状態になって、みんなの距離が少し縮まっている感じなので、空き時間は楽しい話をしたり、作品の話をしたりしながら、いい距離感でできていると思います。
◆ドラマが放送されて、周りからの反響はいかがでしょうか?
友人が何人かメールをくれて、「本当に面白い」と言ってくれました。いろんな世代のお友達からメールが来て、同世代の人からは「こんなドラマ、見たことない! これからどうなるか分からないし、自分だったらどうしようかをすごく考えた」と。40代の知り合いの方からは「新しいことにチャレンジしているドラマだなと思って見ています」といった意見をもらいました。ただ、身近な友達からは「僕は加藤君とは友達になれない」と言われて(笑)。
◆それを受けて、どう思いましたか?
役作りとしては成功なのかなと思いつつ、僕としては加藤というキャラを愛してもらいたいので、少し寂しい気持ちもありました。でも、そういうふうに思ってもらった方が、4話以降にいいふうに捉えてもらえるかなと思っています。
◆山田さんや赤楚衛二さんはどんな方でしょうか?
2人とも役の感じと、いい意味で違っていて。山田さんは本当に楽しいお話をたくさんしてくれるお兄ちゃんみたいな人。みんながいろんな意見を言いやすい環境を整えてくれて、「海君はどう思う?」とか、「もっとこうしていったらどうかな?」と相談してくれるんです。本当に独りよがりな直哉とは、真反対な感じの座長で、すごく助かっています。
赤楚さんは、少し硬派なイメージがあったのですが、もちろん硬派なところはあるのですが、優斗という好青年なキャラクターというよりは、笑いを取りに来ているというか、面白いことや突拍子もないこと、絶妙な距離感で言ったりするような方ですね。なので、2人とも役とのギャップがあるなと思います。
◆『義母と娘のブルース』シリーズでも共演歴のある上白石萌歌さんとはいかがでしょうか?
撮影の時に、萌歌ちゃんに「海君って30歳だよね?」と言われて、これだけ長い時間いろんな話をしているのに、僕、3歳も間違えられていたんだとショックでした(苦笑)。あとは、普段のお互いをこの現場の中で1番よく知っているので、くだらない話や役の話でも、その話をするまでに距離を縮める作業が全く必要なかったので、現場にいてくれると本当に心強いです。最初に会ったのは萌歌ちゃんが多分16、17歳とかだったと思うのですが、ちゃんと自分の意見を監督に伝えてる姿とかを見て、たくましいなと。作品を良くするために、意見をいうことはとても大切だし、すてきなことだなって。僕もどこか言いすぎてしまうと、今のはダメだったかな、と思ってしまうときがあって。萌歌ちゃんの姿を見て、「そういうことじゃなくて、ちゃんと作品のためにいろいろ話をしなきゃな」と学ばせてもらっています。
◆もし荒廃した世界に飛ばされてしまったら、井之脇さんご自身はどういうふうに振る舞うと思いますか?
どちらかと言えば優斗っぽい感じかなとは思います。状況を整理してできることをやれるだけやってみようっていうので。みんなに「こうしてみませんか?」とか、優斗ほどリーダーシップを取れる自信はないですけど、タイプとしてはそっちだと思います。
◆最後に4話の見どころを教えてください。
3話の終わりで、加藤が刺されてしまいます。加藤が生死をさまよう中で、彼がどんな人物だったのか、どう成長していくかを丁寧に演じました。加藤は人間っぽいキャラクターだなと思うんです。コミュニケーションを取ることが苦手というのは、SNSが当たり前にある世代の若者は実はそうなんじゃないかなって思ったり。そういったSNSがない状況で、加藤で言えば研究することができない環境で、自分の身近なものを一瞬で取られてしまったときに、どうやって本当の会話を人とするかというのが、加藤の成長を通して、視聴者の皆さんに感じ取ってもらえたらうれしいです。
PROFILE
井之脇海
●いのわき・かい…1995年11月24日生まれ。神奈川県出身。B型。
番組情報
金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』
TBS系
毎週金曜 午後10時~10時54分
<配信>
Paravi:各話の初回放送直後配信
Netflix:世界配信 日本国内では、4月22日(土)より配信開始
その後、海外にて順次配信予定
<キャスト>
山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、杉本哲太、松雪泰子 ほか
<スタッフ>
脚本:金子ありさ(『恋はつづくよどこまでも』『着飾る恋には理由があって』ほか)
主題歌:Official髭男dism「TATTOO」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
プロデューサー:宮﨑真佐子、丸山いづみ
編成:吉藤芽衣、平岡紗哉
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹、井村太一、濱野大輝
番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/p_train823_tbs/
番組公式Twitter:@p_train823_tbs
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