山田裕貴さん主演の金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』(TBS系 毎週金曜 午後10時~10時54分)を手掛ける宮﨑真佐子プロデューサーにインタビュー。5月26日(金)放送の第6話を前に、キャスト陣の起用のポイントや、今後の見どころ、物語に込めた思いを聞きました。
本作は、『恋はつづくよどこまでも』や『着飾る恋には理由があって』など、幅広い世代の女性たちに話題の作品を多数執筆してきた金子ありさによるオリジナルストーリー。いつもと変わらない朝、都心へ向かう電車の一両が未来の荒廃した世界にワープ。突如“日常”を奪われ、何もかも遮断され“ペンディング”された“非日常”の世界へと放り出されてしまい、共にサバイバル生活を生き抜くことに。困難を前に、人はどう生きるのかを描く予測不能のサバイバルエンターテインメントだ。
◆今回オリジナル作品ですが、何から着想を得たのでしょうか?
私が電車通勤をしているのですが、ふと周りを見たら、99%ぐらいの人がスマホを見ていたんです。そのときに、このままこの電車が電波がない場所に飛ばされてしまったとしたら、私たちはどうするんだろうなというのをふと思ったのがきっかけです。そして、ドラマの企画を考えているときに、私が個人的にラブストーリーものが多かったのもあり、刑事ドラマやラブストーリーではないジャンルのドラマに挑戦したいなと思ったことが合わさって考えた企画です。
◆脚本の金子さんとどのように進められたのでしょうか?
その着想があって、そしてここから先に出てくるテーマというか、ただSFのドラマがやりたいというわけではなくて、全員がスマホを見ている空間が広がっていること、SNS社会はもちろんいい面もありますが、悪い面もあって、直接その人の顔が見えない分、簡単に人を傷つけることができてしまう怖さだったり、そういうことをメッセージとして伝えられるようなドラマにしたいですと金子さんに伝えました。そこからストーリーを考えていった感じです。
◆キャストの皆さんと金子さんがお話をしたとのことですが、それによって役を当て書きしていったのでしょうか?
そうですね。今回に限らずですが、オリジナルストーリーに出演いただくキャストさんの良さを最大限に出したいと思っているので、そのためにはどうしたらいいかを考えています。その人がそもそも持っている特性を知らないと、何が一番最大限になるかが分からないので、そこは意識して事前にお話をさせていただいて作っています。もちろん今までの出演作も見ますし、ご本人とお話をして、「そういう考えを持ってる人なんだ」ということを入れた方が作りやすいですし、いいキャラクターができるなと思っています。
◆今回、主演に山田さんを起用された経緯を教えてください。またどんなことを事前にお話しされましたか?
以前から山田さんのいろんな出演作を見ていて、どの役をやっても同じに見えないというのがすごいなと思っていました。今回たまたまゴールデンプライム帯初主演となりましたが、きっといつか早いタイミングでやっていたでしょうし、ご縁があってそのタイミングを一緒にできたことはうれしいです。本当にお芝居、演技力が素晴らしいなと思っていてお願いしました。キャラクターを作っていくに当たって、「山田さん自身が普段どういうことを感じているのか」というようなお話をさせていただきました。そこで話したことは直哉のキャラクターにだいぶ入っています。
◆山田さん演じる直哉は美容師、赤楚衛二さん演じる優斗は消防士と、さまざまな職業の設定になっていますが、その職業のチョイスは?
チョイスは私が個人的に見たい職業です(笑)。キャスティング前に、消防士と美容師と学校の先生、学生、ネイリストとかの職業は最初から決まっていました。電車なので、できるだけいろんな職業の人がいる世界にしたいということもありましたし、そこからキャスティングにつながっていったこともあります。
◆では、赤楚さん、上白石萌歌さん、井之脇海さん、古川琴音さん、藤原丈一郎さんの起用理由と、皆さんの魅力を教えてください。
赤楚さんは共演者の方も言っていますが、会う前と一番イメージが変わった人です。いつも現場ではふざけたりして普通の好青年なんですが、いざカメラが回ると表所がガラっと変わり役の顔になる。そしてその表情がとても魅力的です。今までかわいらしい役が多いイメージがあって、それももちろんすごくすてきなのですが、今回やっていただくに当たって正反対の感じを出したいなと思いました。そういう姿の赤楚さんが見てみたいなという願望を込めたキャラクターになっていて、それを今すごく魅力的に演じていただいているなと思っています。
上白石さんに関しても、本当に自然にお芝居をされる方。多分それはご本人が持っている清廉さ、素直さがそのまま備わっているから出せる力だと思っていて、そういうところがすごく魅力的だなと思っています。
井之脇さんも、井之脇さん演じる加藤は目立った行動をするわけではないですが、本当に電車に普通に乗ってそうな学生。でも、この世界観の担保じゃないですけど、このリアリティーの担保をしてくれる役だと思っていて、それを最大限にやっていただいているなと今も撮影しながら思っています。
古川さん演じる玲奈は場をかき乱す役。パッと見の印象だけだと、たぶん嫌われてしまう役なのですが、ここから先の話で玲奈の過去がいろいろ分かってくると本当はこういう子っていう、その表現の仕方がちょっと突飛なだけというのが見えてくると思います。玲奈の役は一番と言っていいほど難しいと思うのですが、その役を「絶対うまくやってくれるだろう」と、最初から古川さんが良くてお願いしていました。それは今までのいろんな作品を見て、彼女にしかない魅力というか、お芝居もそうですし、存在感もそうですし。すごく個性的なので、その力が欲しかったというのが大きいですね。
藤原さんに関しては、米澤を専門学生で、関西人で明るいっていう設定のキャラクターにしていて、こんな状況下で暗くなるはずなのに、彼だけは逆に明るくなってしまう、ちょっとワクワクしてしまうぐらいのすごく明るいキャラにしたいなと思ってお願いしました。藤原さんはあまりドラマの経験がないということでしたが、本当にお芝居の勘がいいなと見ていて思います。監督がお願いしたことを感覚でちゃんと分かってくれますね。
◆もう1つの車両と対立するような構図になっていますが、意図はありますでしょうか?
最初から「1車両だと面白くないから2車両目を出そう」というところから始まって、それを1話で明かした方がいいというのは狙いですね。そして、2車両目が出てきて、5号車にとって脅威となった時、争いになってしまう、人の悲しさみたいなものを表せたらと思いました。
◆6号車のリーダー・山本を萩原聖人さんが演じられますが、中盤のキーパーソンとしてどんなポイントがありますか?
もう1車両のリーダーなので、それだけの存在感が欲しいというのと、実はこの6号車が元の世界に帰るカギを握っているんです。しかも、リーダーはどうしてこの世界が荒廃してしまったかを知っている。そして、そのことをリーダーとしてみんなに語る存在なので、そう思ったときの説得力がある人がいいなと思って萩原さんにお願いしました。
◆撮影のロケ地選びが大変だったと思うんですが、ロケ地を選ぶまでの流れと、その場所での撮影の雰囲気を教えてください。
ロケ地は伊豆大島などへ行っていて、ロケーションとして最高ですよね。ただ多く出てくる樹海のシーンはやはり似てしまうので苦労しているのですが、ロケ担当の方々がすごく頑張ってくれていて、実は1話から一度も同じ場所を使っていないんです。同じ森でも5分でも歩いて違う場所に行っていたり、違うアングルで撮るようにしたりと工夫をしています。環境や設定が限られてるからこそ、違うように見せるような努力はしているので、そこに気づいてもらえたらうれしいです。
◆そういった大変なロケ場所で、山田さんを中心としたメンバーのその雰囲気はいかがでしょうか。
その場所に行くまでも結構大変だし、いわゆる楽屋的な場所に戻るのにも時間がかかるので、皆さん結構ずっとそのロケ場所で一日を過ごすことが多いです。なので、チームワークはすごく深まってると思いますし、山田さんと赤楚さんがムードメーカーになっています。
◆最近の現場で盛り上がったエピソードはありますか?
山田さんから「みんなで告知動画を撮ろう」と呼び掛けてくださったり…。学園ドラマみたいに和気あいあいとした雰囲気みたいです(笑)。
◆ドラマも中盤になってきましたが見どころを教えてください。
ここからもう全部注目回ですが、6話は第1話から出ている殺人事件の犯人も分かりますし、元の世界に帰る方法をみんなで見つけていく展開になっていきます。そして、各々の人間関係がどんどん変わっていきます。それこそ直哉と優斗のバディ度も上がっていきますし、紗枝を含む三角関係もそうですし、それ以外のところにも、もしかしたらちょっと恋的な…ものが生まれるかもしれません(笑)。どんどんチームワーク、連帯感が生まれてきたときに、元の世界に帰ることが本当に幸せなのかと、それぞれが命題を突きつけられます。そのとき、どう動くのかが見どころです。
◆最後に、このドラマを通して伝えたいメッセージを教えてください。
サバイバルやSFの面だったり、各々の恋愛関係ももちろん楽しんでいただきたいですが、大きなメッセージとしては、さっきほども言ったように、実際にこんな状況になってしまって、元の世界に戻れるかもしれない方法が出てきたときに、それぞれ実は「あれ、こっちの世界も悪くない」というふうに思う人もいる。このような極限状態だからこそ見えてくる本当の幸せだったり、人が人を想う気持ちだったり、そして生きるって何だろう、本当に人を助けるって何だろうということをちょっと考えてみる。そんなきっかけになれるようなドラマになれればと思っていますし、そこを感じ取れるようなものを届けたいと思っています。そして日本のドラマでこういったジャンルのドラマに挑戦することが、このドラマのチャレンジだと思ってやっているので、日本のドラマも世界で戦おうとしているんだぞというところも見ていただきたいです。
第6話(5月26日放送)あらすじ
紗枝(上白石萌歌)と玲奈(古川琴音)は樹海を歩く中で、死体が埋められているのを見つけてしまう。
唖然とする2人の前に6号車乗客の矢島(鈴之助)らが現れ2人を捕まえようとするも、紗枝だけが逃げ遅れてしまう。
逃げてきた玲奈から事情を聞いた5号車の面々は、米澤(藤原丈一郎)の先導で護身用の武器を作ることに。加藤(井之脇海)を刺し、紗枝を危険な目に遭わせている6号車の人々を、5号車の一同は敵と見なしつつあるのだった。
一方、紗枝を探して6号車へ辿り着いた直哉(山田裕貴)と優斗(赤楚衛二)は、乗り込んだ車内である衝撃的な光景を目撃し、山本(萩原聖人)を問い詰める。
すると山本は、タイムワープ当日に起こった“事件”について語り始めて…。
番組情報
金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』
TBS系
毎週金曜 午後10時~10時54分
<配信>
Paravi:各話の初回放送直後配信
Netflix:世界配信 日本国内配信中
その後、海外にて順次配信予定
<キャスト>
山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、杉本哲太、松雪泰子 ほか
<スタッフ>
脚本:金子ありさ(『恋はつづくよどこまでも』『着飾る恋には理由があって』ほか)
主題歌:Official髭男dism「TATTOO」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
プロデューサー:宮﨑真佐子、丸山いづみ
編成:吉藤芽衣、平岡紗哉
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹、井村太一、濱野大輝
番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/p_train823_tbs/
番組公式Twitter:@p_train823_tbs
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