山田裕貴さん主演の金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』(TBS系 毎週金曜 午後10時~10時54分)に出演中の日向亘さん、片岡凜さんにインタビュー。本作は、偶然乗り合わせた電車が未来の荒廃した世界にワープし、何もかも遮断され“ペンディング”された“非日常”の世界へと放り出された乗客たちが、共にサバイバル生活を生き抜く姿を描くヒューマンエンターテインメント。名門高校に通う医者志望の受験生で、大人に対して強い不信感を持つ江口和真を演じる日向さんと、和真の恋人で同じ名門校に通う成績優秀な和真を尊敬している佐藤小春を演じる片岡さんに、役作りや本作を通して学んだことなどを聞きました。
◆ここまでの撮影を振り返って、ご自身のキャラクターと撮影の感想をお願いします。
日向:和真は大人への不信感を持っていたので、1話では小春と一緒に「もうこの人たちと一緒にいるのやめよう」と言って、5号車を飛び出しましたが、赤楚(衛二)さん演じる優斗の懸命な説得によって少し心が動かされて。3話で山田さん演じる直哉からのちょっとしたアシストであったり、褒めてもらったりしたことによってさらに心を開いて、そこから5号車のみんなと打ち解けていきました。そこの和真の成長は、僕自身もすごく意識して演じさせてもらっていたので、皆さんに伝わっていたらいいなと思います。
片岡:私が演じている小春は、比較的自分が信頼している人以外、あまり自分の中に迎え入れないような性格の人。なので、1〜2話ぐらいではずっと和真の隣にいて、他の人を寄せ付けないっていう印象が強く、どちらかというと、ツンツンしてるような女の子に見えていたと思います。だんだんとお話を重ねていくにつれて、このペンディングされた状況下で、自分はこの5号車の人たちと一緒に生きるしかないという現実を彼女なりに受け入れたところで、小春の優しさがいろんな人に向けられていくというのが見どころの1つですし、キャラクターの特徴でもあります。
◆小春は和真に秘密を抱えているような描写もありますが、そういったところについてはいかがですか?
片岡:だんだんとお話を重ねるにつれて小春の不安要素が誰にも打ち明けられないまま、彼女の中でどんどん大きくなっているんです。どんどん彼女が限界を迎えてきていて、そこも注目していただきたいポイントです。
◆ご自身のキャラクターを演じるに当たって、意識されたことは?
日向:反抗期の子供に見えないように意識しています。和真には大人を毛嫌いする明確な理由、経験があるので、意識して大人に対して反抗的な態度を取ろうと考えました。凜ちゃんは?
片岡:和真と小春はセットというイメージが強いので、例えば小春が不安だったら、和真に寄り添ってもらったり、何かひと言声をかけてもらったりと、台本に書かれていないところまでそういったお互いのキャラクターをきちんと認識した上で、どうやって尊重していくかというやりとりをさせてもらっています。
◆お2人でどんなお話をされたんでしょうか?
日向:和真の表には出さないけど、小春のことを一番に思っていること。少し大げさかもしれないですが、自分の命に代えてでも守りたい存在だと思っているので、危険が伴う場所で生活をしている以上、小春のことを放っておけないし、彼氏としての紳士的な部分は出していきたいなと。
片岡:小春はどちらかというと愛情表現が豊かな女の子なので「好き」っていう思いが強いというのはお互い共通認識として持っておこうと話しました。
◆和真と小春の大人に対する対応について、監督と何かお話をされましたか?
日向:最初に、和真が先導して大人を嫌って、小春はその和真の意志を尊重するというようなことをお話ししました。小春は「お父さん、お母さんに会いたい」という描写もあるので、すてきな家族に恵まれて育ってきた女の子というイメージがあって。そんな小春は和真が1人にならないように、周りに気を使ってくれる。なので、どちらかというと小春の方が大人になじむ能力があって、和真はそれにすごく助けられていて。小春は和真の決断力に少し頼っている部分があって、お互いが持っている長所と短所で補い合っているところは大事に表現したいと思って演じています。
◆山田さんをはじめ、さまざまな俳優さんが出演されている本作ですが、現場で受けたアドバイスはありますか?
日向:1話で和真と小春が5号車を出ていくときに、和真が大人に対してズバッと言うシーンで、山田さんがいろいろアドバイスをしてくださったんです。僕は淡々と静かに刺していくイメージをもっていたのですが、山田さんに「和真のクールなところは前半で描けていると思うから、ズバっと感情的になっていいんじゃないかな?」と言っていただいて。確かに普段冷静な人が感情的になったら、言葉が響くだろうなと僕も感じました。すごく不安を感じていたシーンだったので、「どうですかね?」と山田さんに何度かお聞きして、「いいと思うよ」とか「もう少しこうしてみても、面白いんじゃない?」と言ってくださったので、その山田さんの言葉を軸に僕なりに表現したいことなどをいろいろ足させてもらってできたシーンなのですごく印象に残っています。
片岡:私がいただいた言葉ではないんですけど、私がメインで映るシーンの撮影前に、小春の気持ちを考えていたんです。小春がちょっと難しい気持ちを抱えていたので、それをどう見せようかと考えていたときに、近くで山田さんが他の方とお話されている言葉の中で「本物になればいいんだよ」と言われていたんです。私はその言葉を聞いて、「あ、これだ!」と余計な考えが全部なくなって、直感でやってみようと思うことができました。
◆座長として先頭を走る山田さんのお芝居で魅力を感じるところは?
日向:僕は山田さんの人間味のある泥臭いお芝居がすごく好きなんです。台本に書かれているせりふを言うのがお芝居ですが、僕もそうですけど、どうしても「今、ちょっとせりふっぽかったな」と思うところがあるんです。山田さんから出るせりふはしっかり自分の中で咀嚼して、それを役に置き換えて、役が本当にしゃべっているみたいなお芝居をされているので、それを見ていて、学ばせてもらっています。山田さんが発しているというよりも、直哉がしゃべってるように見えるし、そういったところが僕はすごく好きです。
片岡:山田さんのお芝居を拝見するたびに、内から出る迫力、熱いものを毎回すごく感じていて、表面には見えないけど強さともろさが垣間見えるんです。ちょっとした自己犠牲がありながらも、そこをうまくカバーして、人にそれを悟られないようにしている様子とか、山田さんのお芝居でいろいろなものを想像させられますし。山田さんのお芝居の幅の広さから学ぶことがものすごく多いです。
◆撮影もすごくハードで大変なことも多いと思いますが、撮影中に苦労されていることや大変だったことは何かありましたか?
日向:2話の水を得るために優斗が命綱をつけて崖を登るシーンでは直哉、優斗、紗枝(上白石萌歌)、和真、弘子(大西礼芳)の5人全員で崖を登って、さらにその上の崖に優斗が登っていたのですが、実際にワイヤーをつけて滑りながらも崖を登って、長い時間をかけて撮影をしていました。和真はローファーを履いているのでとても滑るんです。安全には配慮していましたが、すごく過酷な現場で、撮影場所までの道のりは山登り用のスニーカーを履いて移動して、上からローファーを降ろしてもらって履き替えて本番に臨んだほどです。そのシーンは僕が現場に入ったばかりでまだ皆さんと打ち解けていない段階での撮影だったので、すごく印象に残っていますし、いい経験をさせてもらったなと思います。
片岡:リアルサバイバルな感じの場所にたくさんロケに行っています。それこそ下に降りるのに、木と木の間にロープを張って、スタッフさんに引っ張ってもらわないと降りられない場所とか、急な坂道が多くて…。山に行くと電波がないので、携帯が使えないですし、遠い場所にお手洗いがあってなかなか行けないとか、撮影の環境自体が『ペンディングトレイン』の作品の中みたいな場所が多いので大変です。ですが、その分自然の力を借りて作品の世界観により引き込まれているような感じがしています。
◆周りからの反響はいかがでしょうか?
日向:同級生の友達から反響があります。リアルタイムで見てくれていて、感想が送られてくるんです。もちろん視聴者の皆さんの声も届いていて、僕もたくさん見させていただいているのですが、自分の身近な人からもらう感想というのは、自分のことをいろいろと知っている人だからこそより興味深い感想が来ます。その感想を見て、「こういうふうに見えているんだ」と自分が目的に合わせてお芝居をしていたものが伝わっていたりすると、すごくうれしいですし、僕の毎週の楽しみになっています。
片岡:私の家族、そして知り合いの方が本当にたくさん見てくださっています。今までに例のない作品というか、いろんなジャンルを持っている作品だと思っていて、視聴者のコメントを見ると皆さんにエネルギーを届けられているようなのでうれしいなと思って感想を見ています。
◆お2人とも群馬県出身、同学年と共通点が多いですが、初めて会った時の第一印象と、共演する中で知った意外な一面はありますか?
日向:最初に会ったのが僕の事務所の先輩の妻夫木聡さんが開催しているワークショップでした。他事務所の同世代の俳優さんたちをお呼びして開催される機会があって、そこに凜ちゃんも来ていたんです。そのときはあまりお話ができず、次に会ったのがこの作品の衣装合わせのときで。そのときの凜ちゃんはすごく落ち着いてるし、しゃべり方やたたずまいがすごく上品で、僕も勝手に意識して上品な感じでやってみたり(笑)。 凜ちゃんとしゃべったり、いろいろ相談させてもらうと、同い年な感じもありますし、わりと共通の話題もたくさんあって話しやすい方です。
片岡:最初にお会いしたときからすごく明るくて、いろんな方に優しく接してくださる方だなという印象が強かったです。実際に現場でご一緒させていただいている間でも、周囲を巻き込むコミュニケーション能力というか、陽の方だなっていう印象が強くて、現場が和むようなムードメーカー的な存在です。
◆日向さんは『Get Ready!』、片岡さんは、『石子と羽男』『君の花になる』に出演されていましたが、その頃から比べて今回の『ペンディングトレイン』の現場での立ち振る舞いだったり、成長したなと思う部分はありますか?
日向:僕が前回『Get Ready!』で演じた白瀬というキャラクターでは、1話から10話の成長をすごく意識して演じていました。その中でたくさん失敗、反省もあった中で、全体を通して見たときに白瀬が成長しているなと感じてもらえたような気がしたんです。なので、今回のお話を聞いたときも、白瀬も大人に対する不信感を持っていたので、和真と似たようなキャラクターだなと思いました。和真がペンディングされた世界で大人たちと関わっていく中で成長していく姿をこの作品を通して、演じていければいいなと思っているので、『Get Ready!』での反省点が今の現場で生かされているような気がします。
片岡:私は今回の現場で、キャストの皆さんが分からないことや、少し疑問に思ったことを監督にたくさんご相談しに行かれている様子を拝見して、作品全体として自分のキャラクターを考えたときに、自分の中だけで解決してしまうのではなくて、周りの方とどうコミュニケーションを取って、キャラクターを確立させていくかというのが、いかに大切かというのを勉強させていただいてます。いかに台本にないことを1人の人間の人生として、リアルに考えられるかというのがすごく重要だなと思います。
◆ドラマではありますが、電車ごとを未来の世界にワープしてしまうという非日常を体験してみていかがでしたか?
日向:楽しいですね。1話2話での乗客たちのパニックが収まって、ここでしばらく救助が来るまでは生活しなきゃいけないんだなという考えに変わった3話で、直哉さんの「働け」というひと言で乗客全員が自分のできることを探してやっていくっていうシーン。ブルーシートで雨水をためて洗濯をしようとか、クレジットカードを研いで刃物にしようか、と日常的なアイテムを使って非日常をしていることに「あ、サバイバルしているな」と感じましたし、驚きがたくさんありました。心の中で「これとこれを使えばこれができるかな」とか、「これをしたいときに、何か使える道具あるかな」と考えるようになりました(笑)。
片岡:私も撮影を通して、自然の力、すごさ、壮大さにあらためて気づかされましたし、驚きました。撮影の間でいろんなことを考えるんです。例えば、ここに本当に私の家族がいたらどうだろうとか、私自身がここにいたらどうやって動くだろうとか考えたら、リアルに作品に入り込めて。ここまで身近に作品の状況を日常で捉えられることがなかったので、すごく貴重な経験をさせていただいていると思います。
◆この『ペンディングトレイン』を通して、感じたこと、得たことはありますか?
日向:最初は当たり前の生活形態があって、近くにトイレがあって、いつでも好きなときにご飯が食べられて、水が飲めてっていう状況がいかに幸せかっていうのをすごく実感していたのですが、少しだけ終わりが見えてきた今、1周回って自然っていいなと思うようになって。実際に僕がペンディングされた世界で生活をしたら、登場人物みんなと打ち解けられそうですし、チームの役に立てるという自分の存在意義を感じながら生活できるのはすごく楽しいんだろうなと。なので、少し名残惜しいというか、自分だったら帰る方法が分かってきた途端に「あれ、帰りたくないかも」となるかもしれないなと思ってきました。
片岡:生きることのすごさというのを、作品を通してあらためて感じています。私たちの日常はSNSや周囲からの目などを気にして、つい生きていることのありがたみを忘れがちだと思うのですが、雑音的なものが全くない大自然の中に人間がぽつんといるっていう環境の中で、いかに人が生きていることが素晴らしいのかをあらためて感じられました。
◆最後に、第7話の見どころを教えてください。
日向: 7話は作品を通しての1つの分岐点になる回だなと、台本を読ませていただいたときに感じました。和真と小春が電車に乗る前の話も少し描かれますが、そこでどういった高校生だったのかとか、和真と小春の関係性にも注目していただけるとうれしいです。
片岡:これから私たちがどうなるかっていう1つの大きなターニングポイントになる回だと思うので、 今後、電車の乗客たちがどうなるのかも、もちろん注目していただきたいですし、和真と小春の過去と、その2人の未来、関係性もだんだん変わってくる回になっています。
PROFILE
日向亘
●ひゅうが・わたる…2004年3月18日生まれ。群馬県出身。A型。主な出演作は、『姉ちゃんの恋人』『仮面ライダーリバイス』『Get Ready!』など。
片岡凜
●かたおか・りん…2003年10月6日生まれ。群馬県出身。O型。主な出演作は、『石子と羽男』『ボーイルフレンド降臨!』『リエゾン〜こどものこころ診療所〜』など。
番組情報
金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』
TBS系
毎週金曜 午後10時~10時54分
<配信>
Paravi:各話の初回放送直後配信
Netflix:世界配信 日本国内配信中
その後、海外にて順次配信予定
<キャスト>
山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、杉本哲太、松雪泰子 ほか
<スタッフ>
脚本:金子ありさ(『恋はつづくよどこまでも』『着飾る恋には理由があって』ほか)
主題歌:Official髭男dism「TATTOO」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
プロデューサー:宮﨑真佐子、丸山いづみ
編成:吉藤芽衣、平岡紗哉
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹、井村太一、濱野大輝
番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/p_train823_tbs/
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