『ペンディングトレイン』宮﨑真佐子Pインタビュー「究極の選択を迫られる中で、直哉(山田裕貴)の変化が感じられる回に」

特集・インタビュー
2023年06月09日

『ペンディングトレイン』

未来の荒廃した世界にワープしてしまった電車の乗客たちが見知らぬ土地で共にサバイバル生活を送る姿や、登場人物の過去に秘められた思いが感動すると話題を呼んでいる山田裕貴さん主演の金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』(TBS系 毎週金曜 午後10時~10時54分)。前回7話のラストで元の世界に戻れるかもしれないという手掛かりが見つかり、本日6月9日(金)放送の第8話での展開がますます気になる本作。プロデューサーの宮﨑真佐子さんに、クライマックスの見どころやこれまでの制作秘話を聞きました。

◆撮影を重ねてきた中で、“チームの結束”を感じた瞬間はどこですか?

序盤の1、2話は、他人同士だったキャラクターたちがギスギスしていて怒鳴り合うようなシーンも多かったのですが、3話以降はストーリー的にも団結していく流れになって。特に6号車の人たちが出てきたことで、5号車の乗客同士がまとまっていくエピソードは転機だったと思います。その頃には、撮影を重ねてきたからこそ、キャストの皆さんも「この人ならこういう動きをするだろう」という感覚が生まれているなと感じました。最初は初共演の方も多くて、だからこそキャラクター同士のギスギスした感じも出せてよかったなと思います。特に山田裕貴さん演じる直哉と赤楚衛二さん演じる優斗は、初めはすごく敵対していたところから、今ではバディみたいになっていますしね。数か月間一緒にやってきた中でキャスト同士も次第に仲が深まって、撮影以外のオフのときもすごく仲がいいですし、リアルでも団結力が生まれているなと思います。

◆特に一体感を感じたシーンは?

1つは、乗客全員がたき火を囲んでご飯を食べる3話のシーンです。5号車の人たちが団結し始める回というのが裏テーマでありまして。その中で、田中(杉本哲太)が毒を入れたかもしれない…という疑惑が出て。直哉や優斗、紗枝(上白石萌歌)を中心に、玲奈(古川琴音)や米澤(藤原丈一郎)、和真(日向亘)が絡んでいく流れが、台本で読んでいたよりも白熱したというか。1、2話とは違うぶつかり合いができたなと感じました。もう1つは、6話の戦闘シーンですかね。6号車と戦うべきか否かと議論していたけれど、みんな応戦してしまって。その後の米澤が止める…というシーンは、見ていて胸が熱くなりました。

『ペンディングトレイン』

◆あらためて、この作品を企画したきっかけや狙いを教えてください。

私が特に混雑する路線のユーザーってこともあるんですが、満員電車に乗っていると、赤の他人と家族よりも近くにいることがあるじゃないですか。それが本当に不思議な空間だなと思ったんですよね。周りを見渡すと老若男女いろんな人がいて、それぞれにいろんな人生があって。社会の縮図だなと感じたんです。ここで出会った人たちが何らかの理由でサバイバル生活をしたら、赤の他人同士だからこその人間ドラマが生まれるだろうな、それを見てみたいなと思ったのがきっかけです。あと、大多数の人がスマホを見て、それぞれが動画を見たりSNSをやったりしていて。スマホがもし使えなくなったときに、みんなどうなるのかな? と思いました。また、この仕事をしていて作品を作るたびに、いろんな反響をSNSでもらうんですが、うれしいことももちろんいっぱいあるんですけど、正直つらい書き込みもあるのをずっと見てきて。ドラマの反響だけじゃなく今時のSNS事情でも、簡単にひどいことを言ってしまうのは悲しいなと感じたんです。ドラマを見てくださる方に、「そういうの嫌じゃない?」「直接関わって話せた方がよくない?」と伝えられたら…という思いも込めています。

◆本作の視聴者の反響や考察についてどのように感じていますか?

このドラマ自体は考察ものではないのですが、それでもいろいろ考えていただけるのはうれしいです。「そういう見方もあるんだ!」と驚くようなコメントも毎回あります。例えば、北千住殺傷事件の新聞記事を玲奈や和真が見ているシーンを意味深に入れていたせいもあって、「和真が事件に関わってるんじゃないか」「実は玲奈も…」みたいに言っている方がいて。でも実際は、そこまで意図してなくて…(笑)。だからちょっと申し訳ないな…って気持ちになりました。でも、「そんな細かいところまで見てくれてるんだ!」ってうれしく思っています。

『ペンディングトレイン』

◆それぞれのキャストが演じるキャラクターが、より一層深まったなと感じたエピソードはありますか?

まさに今夜(6月9日)放送の8話のシーンでそれを感じました。“元の世界に戻れるかもしれない”という話が出たときに、戻りたいと思うか、戻らなくてもいいと思うか…というのがそれぞれのキャラクターごとにあって。皆さんの表情からその感情が伝わるんです。例えば直哉は、自分もどうしたらいいか分からないけど、同時に周りの人たちの気持ち――優斗はみんなを戻したい、玲奈と小春(片岡凜)は戻りたくない――を気にしていて。さらに、戻りたくないって言ってる人たちがこの世界に残ったらどうなるんだろうっていうところまで気にしてるのが、表情やたたずまいで伝わってくる。その表現力がすごいなと思いました。

◆キャスティング時点の想像を超えたキャストの方は?

皆さん期待以上のお芝居をしてくださっていますが、特に古川琴音さん演じる玲奈は難しい役だったと思います。3話で紗枝と恋バナをしたシーンで「顔だけだったら萱島直哉なんだけど」ってところは、監督とも「秀逸だね」って話題になりました。あとは、藤原丈一郎さん演じる米澤との絡みもいいですよね。“水と油”じゃないですけど、ただ仲が悪くてけんかしているだけじゃなく、「この2人のけんかを見たい」と楽しみになる感じが出ていて。これは藤原さんとの相性もあると思うんですけど、見ていて面白いですし、予想よりも玲奈というキャラクターを立たせてくれたなと感じています。別の方でいうと、加藤(井之脇海)と米澤でしょうか。最初から2人の関係性は良くしようとしていたんですけど。実際に撮影してみたら、より一層仲良し感があっていいアクセントになったと思います。

◆主演の山田さんのお芝居で、特に印象的だったシーンは?

本当に全シーンいいんですよね。こちらが何か言うまでもなく、出来上がっていますし。1つ挙げるとするなら…回想シーンで、美容師免許を取って初めてハサミを触るところがあるんですけど(3話)。うれしいだけじゃない感情、今まで大変だった中で勝ち取った美容師免許であり、ハサミであり…っていう思いが伝わるシーンでした。台本のト書きでは「ハサミを取って握る」ぐらいの描写なんですけど。ハサミを持って、直哉がめちゃくちゃ泣く。あのときのお芝居は特にはすごいなって思いました。

◆樹海や山の中というハードなロケ場所も多いですが、これまでに撮影してきた中で、特に大変だったなと感じたことは?

正直、全部が大変なので感覚が麻痺してます(笑)。むしろ最近は、キャストの方もスタッフも「床が平らだと落ち着かないね」って言っています。この間、久しぶりに会社の中のシーンを撮ったんです。きれいな会社をお借りしてロケしていたんですが、どうやって居たらいいか分からないというか(笑)。みんな“椅子と机があるときに、どうやって撮るんだっけ?”みたいなところまで来ています。先日は浅間山のふもとでロケしていて。岩とか石もあって足場も悪いんですが、「全然平気だね。軽い方だね」って言い合うぐらいの感覚になってます。

『ペンディングトレイン』

◆主題歌の「TATTOO」を手掛けたOfficial髭男dismの皆さんには、どのようなオファーをしたのでしょうか?

Official髭男dismさんサイドには、キャスティングと同時期というかなり早いタイミングでお願いしました。メンバーの方と打ち合わせをさせていただいて。その時に「もしも、この乗客たちがサバイバルな環境じゃなく、普通に出会って青春のような時間を送ったら…」「例えば彼らが、海で遊んでいるときにかけるようなイメージで」とお願いしました。完成した音源を最初に聴いたときは、すごくおしゃれな曲だなと思いました。ある意味、ドラマの主題歌っぽくないというか。でも、ドラマの中でかけたらすごく合うんだろうなと感じました。この歌詞って、ものすごく直哉の気持ちに寄り添ってるんですよね。台本も1話の初稿段階ぐらいのものしかお渡していないのに、ここまで直哉の気持ちを理解しているなんて! と驚きました。私や脚本の金子(ありさ)さんよりも理解してるなって思うほど(笑)。歌詞が上がってきたときに金子さんと「すごくない!? 何でこんなに分かってるの?」って話になりました。“直哉の気持ちってこういうことだよね”っていう。歌詞からヒントを得て、後半の話を書いてる部分もあるぐらいなんです。曲を流すタイミングも、音楽のスタッフや監督と「ここしかない」ってほぼ毎回満場一致で決まります。それほど、主題歌とドラマが合ってるんだろうなと思います。

◆7話までのストーリーを踏まえて、6月9日放送の8話の注目ポイントは?

7話で“元の世界に帰れるかもしれない”という手掛かりが見つかりました。ただ、そのためにはいろんな手段を重ねていかなくてはならなくて。ワームホールを発生させるために必要な要素を、みんなで頑張って探していきます。そんな中で、帰れるかもしれないけど本当に帰れるかどうかも分からない。もしかしたらこの方法では死ぬかもしれない…とそれぞれが葛藤します。これまでずっと協力してきた5号車の人たちが、ここでもう1度、個々が自分の命や生き方をどう選択するかを考えていく。究極の選択に迫られる回になります。

◆その中でも、直哉の葛藤は大きいのではないでしょうか。

この世界で生活してきた中でみんなそれぞれに気づくことがたくさんあり、直哉自身も変化している部分があります。今までは人をあまり信用していなかった直哉ですが、赤の他人だと思っていた人たちと約1か月半という日数を一緒に過ごして、根の優しさが出てきました。元々、弟思いでものすごく面倒を見てきた人ですし、この世界で暮らす中で、周囲の人に一番寄り添おうとしている人が直哉なんですよね。優斗も同じように周囲のことを考えているんですけど、優斗は“とにかくみんなを無事に元の世界に帰すことが重要だ”って考えで。それとは違って、直哉は帰りたくない人、帰ったって幸せじゃないかもしれないし、帰る途中で死んでしまうかもしれない…と考える人の気持ちにも寄り添える人なんです。それだけじゃなく、“みんなで絶対帰るんだ”っていう優斗の気持ちも汲んでいる。脚本の金子さんとも「やっぱり直哉は、帰りたい人にも帰りたくない人にも、どっちにも感情移入しちゃうんじゃないか」という話になり、このようなスタンスを取ることになりました。8話以降も、直哉の根の優しさが感じられると思います。

番組情報

金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』
TBS系
毎週金曜 午後10時~10時54分

<配信>
Paravi:各話の初回放送直後配信
Netflix:世界配信 日本国内配信中
その後、海外にて順次配信予定

<キャスト>
山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、杉本哲太、松雪泰子 ほか

<スタッフ>
脚本:金子ありさ(『恋はつづくよどこまでも』『着飾る恋には理由があって』ほか)
主題歌:Official髭男dism「TATTOO」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
プロデューサー:宮﨑真佐子、丸山いづみ
編成:吉藤芽衣、平岡紗哉
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹、井村太一、濱野大輝

番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/p_train823_tbs/
番組公式Twitter:@p_train823_tbs
番組公式Instagram:@p_train823_tbs
番組公式TikTok:@p_train823_tbs

©TBS

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