山田裕貴が語る『ペンディングトレイン』に託した思いと新たな決意「何か変わるんじゃないかという可能性を信じたい」

特集・インタビュー
2023年06月16日
『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』©TBS

未来の荒廃した世界にワープしてしまった電車の乗客たちが見知らぬ土地で共にサバイバル生活を送る姿や、登場人物の過去に秘められた思いが感動すると話題を呼んでいる山田裕貴さん主演の金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』(TBS系 毎週金曜 午後10時~10時54分)。本日6月16日(金)の第9話で、いよいよ元の世界に戻った萱島直哉(山田)たちが“ペンディング”で体験したことを伝えるために奮闘する様子が描かれる。ここまで走り抜けてきた山田さんに、直哉として過ごしてきた約3か月を振り返ってもらった。

◆この3か月、直哉として過ごしてきて感じたことを教えてください。

直哉は僕の人生の少し前を生きている人のような気がしていて、こんなことを思っていたな、感じていたなということが多かったので、僕の中では振り返っている感覚になりました。赤楚(衛二)君と「9話は最高だね」という話をしたんです。僕もおごっていないし、世界を変えられるとは思っていないけど、多くの人に見てもらえる仕事をしている以上、何か変わるんじゃないかという可能性を信じたいなと。それは、この作品がそういったメッセージ性を持っているから。企画の段階からそういう作品にしたくて、脚本の金子(ありさ)さんと直接お話をさせてもらって、この作品が僕自身なんじゃないかなと錯覚してしまうくらい思いが詰まっています。その僕の思いを全てアウトプットしたいと思って挑んだ3か月でした。

◆キャストの皆さんの印象的だったシーンはありますか?

赤楚君演じる優斗は表情だけで気持ちを伝えるシーンがすてきだなと思います。もちろんせりふのあるシーンも。僕も赤楚君も直哉と優斗の両方の面を持っていると分かり合えたことで、心の奥底でつながることができたんです。だからこそ彼の優斗の影を感じるときの表情に引き込まれました。

(上白石)萌歌ちゃん演じる紗枝は、6話で萩原聖人さん演じる6号車のリーダーの山本に船に閉じ込められたときの叫びは本物だったなと思いました。あと絶妙な“ぽやぽや感”というか(笑)。7話で紗枝が直哉を抱きしめるシーンでは、台本に直哉が紗枝の腕をつかむと書いてあったのですが、直前までつかむかつかまないか悩みました。見え方として、つかんでしまうと直哉と紗枝がそのタイミングでくっついたように見えてしまうのではないかと思って、つかまない選択をしました。紗枝とのシーンは、そういう恋なのか愛なのかといったシーンが多々あったので、いろんなシーンを思い出します。

井之脇(海)君演じる加藤は、8話で玲奈(古川琴音)に「もしここに残るんだったら、生きて生きて生き抜いてほしい」というところが好きで。玲奈もずっとツンケンしてるけど、たまに見せるかわいげというか、本当は寂しいんだと魅せるシーンがいいですよね。

田中を演じる(杉本)哲太さんは僕がやりたいような感じで自由に演じられていて。世界観とキャラクターを壊さないまま、その範疇の中で自由に泳ぎ切っていてベテランの妙を感じます。そして佳代子を演じる松雪(泰子)さんにせりふを語らせたら説得力がすごいです。一緒に舞台をやったことがあるので分かっていたことですが、今回共演してあらためて思いました。

藤原(丈一郎)君も演技経験が少ないと言っていたのですが、6話での泣きのシーンでは「よくあの涙が出たね」と声をかけました。藤原君からも、今のポジションになるまでにしてきた苦労だったりを聞いていたので、だから人の気持ちが分かる人なんだなと思いました。和真(日向亘)と小春(片岡凜)もまだ自分が表現できない部分だったり、感覚を自分なりに悩みながらも、個々にすごく考えながら演じていているなと感じました。

レギュラー乗客のおじいちゃん、おばあちゃんグループも僕すごく好きなんですよね。愛すべきみんなですし、全ての人に感謝を伝えたいです。

『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』©TBS

◆赤楚さんと心の奥底でつながれたということですが、あらためて優斗役が赤楚さんでよかったなと感じるところを教えてください。

相手のお芝居を受け取って返していくということは、きっとどの現場でもどの俳優さんでもやることだと思います。その中でも、僕が赤楚君でよかったなと思うのは、それ以上に踏み込んでくれたから。赤楚君自身が俳優としてだけでなく、人として僕に心を開いてくれたことが一番大きいです。俳優としてだけでなく、彼自身のこと、僕自身のこと、今まで生きてきた環境だったり、人生においてのことを話したことがあって、そこで彼が捉える感覚と僕が思う感覚が一緒だなと感じました。

そのことがきっかけで非常に深いところでつながれたと思います。僕が経験した過去を話させてもらったときに、ものすごく真っすぐな目で「本当にこの作品で山田君に出会えてよかったです」と言ってくれて。そうやって赤楚君も素を見せてくれたからこそ、お芝居だけで作ろうとしても作れない、本物のバディ感にたどり着くきっかけをくれたような気がしていて、すごくうれしかったですし、また一緒に作品をやりたいです。

◆撮影現場で心がけていたことはありますか?

とにかく細部に目を凝らすこと。自分も含め、「今の表情は違うよな?」とか、一つ目線を動かすだけでも、うなずくだけでも、せりふが一音違うだけでも聞こえ方や受け取り方が変わってくると思うので、気づいたことがあったら、もったいなくならないように、伝えに行きました。「芸術は細部に宿る」という言葉がありますが、そういうところは気にしていたかなと。

◆ここまで印象に残っている直哉のシーンはありますか?

全部に100%で挑んでいましたし、全部一番いいシーンになれと思ってやっていたので決めづらいですが、「これは言わせてほしいです」と僕がその場でせりふを変えたところは、僕が本当に直哉として生きているから出てきた言葉がたくさんあったと思います。それが毎日ありすぎて、どこを変えたかなと思い出せないくらい。企画の段階から僕が伝えたかったことが9話の中に出てきます。自分の気持ちが伝わらないもどかしさや、気持ちを感じ取ってもらえない悲しみだったり、そういう人を僕はほっときたくないと思っていて。この9話には「その人の奥を見なきゃダメなんだよ」という思いを込めました。撮影しているとき、自然と泣きそうになって。そんなシーンになると思ってなかったので、きっと僕の魂がそうさせたんだろうなと思うので、そこは推しのシーンです。

◆この作品を終えて、振り返ったときにどのようなことが頭に浮かんでくると思いますか?

これは撮影中の今も思っていますが、「俺は何ができたんだろう」と。終わった瞬間もそう思うと思います。

◆それは主演としてということでしょうか?

それもそうですし、この作品においてもです。1話の放送を見終わった後に思ったことがあって。例えば、『ペンディングトレイン』を見て、水もない、食料もないというところから、今あることがどれだけ幸せなんだろうということを思い返してほしいと思っていたんです。だけど、それって気づく人しか気づけないと思いますし、この作品を見てもらえていなかったら、なかったのと同じようなものなんじゃないかなと。僕らは」こう思ってやっているんですってどれだけ語ろうとも。だから、僕はそういった願い、祈りみたいなものをこれから先、お芝居に込めていこうと思いました。

◆山田さんご自身はこの物語の結末をどのように受け止めていらっしゃいますか?

きっと選択の仕方を変えれば違う終わり方もできたんじゃないかなと思います。「こっちへ行っていたらこの終わり方ができた」という、いろいろな可能性があった作品だなと感じます。

◆あらためて、この作品に携わって幸せだなと思うことは何でしょうか?

温かい人たちに触れられたことです。キャスト含めてスタッフさんも大変なスケジュールの中、大河ドラマも並行しての撮影だったので、「大丈夫?」と心配して声を掛けてくれたんです。そのときに、人の温かさを感じましたし、主演がこんなに心配させちゃダメだよなとも思ったりもして。そういう温かみに触れて、この人本当に楽しいなと思ってもらえる人じゃなきゃダメだなと、そこは僕の盲点でした。頑張ってりゃいいってもんじゃないっていう。

この作品で樹海や崖、山で撮影をしていたら、これまで普通だったビルの間での撮影が不思議になってしまって、慣れって怖いなとも思いました。それはこの作品に携わって感じることだし、「ある」ってだけで幸せなんだろうなって。そしてその中で、本当の自分の幸せみたいなことをきちんと確かめようと思わせてくれたことに、すごく感謝と幸せを感じます。

『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』©TBS

PROFILE

山田裕貴
●やまだ・ゆうき…1990年9月18日生まれ。愛知県出身。O型。

番組情報

金曜ドラマ『ペンディングトレインー8時23分、明日 君と』
TBS系
毎週金曜 午後10時~10時54分

<配信>
Paravi:各話の初回放送直後配信
Netflix:世界配信 日本国内配信中
その後、海外にて順次配信予定

<キャスト>
山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、杉本哲太、松雪泰子 ほか

<スタッフ>
脚本:金子ありさ(『恋はつづくよどこまでも』『着飾る恋には理由があって』ほか)
主題歌:Official髭男dism「TATTOO」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
プロデューサー:宮﨑真佐子、丸山いづみ
編成:吉藤芽衣、平岡紗哉
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹、井村太一、濱野大輝

番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/p_train823_tbs/
番組公式Twitter:@p_train823_tbs
番組公式Instagram:@p_train823_tbs
番組公式TikTok:@p_train823_tbs

©TBS

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