6月25日(日)に最終回を迎える『ラストマン-全盲の捜査官-』(TBS系 毎週日曜 午後9時~)。41年前の事件の真相を追う皆実(福山雅治)と心太朗(大泉洋)がどんな結末を迎えるのか、最終章の行方に期待が高まる中、本作の編成プロデュースを務める東仲恵吾さんにインタビュー。主演の福山さんと相棒役の大泉さんにまつわる制作秘話や撮影現場のエピソード、最終回の見どころやキーマンについて聞きました。
◆最終回直前ですが、あらためて製作のきっかけや本作に込めた思いをお聞かせください。
主人公の全盲のキャラクターが捜査を進めていくというのは、もともと考えていた設定です。全盲は障碍の1つではありますが、それはハンディキャップではなく個性であるということを全体のテーマとして描いたドラマを作りたかったんです。視力を失ってはいるけど、他の感覚や能力で補いながら我々と何も変わらないように過ごしている姿を描いた上で、このような事件物であり主人公が捜査官というのはドラマのテーマとしていいなと思って。この題材、主人公だからこそ描ける事件って何だろう? と脚本の黒岩(勉)さんとご相談しながら作りました。ある種、今の時代性を感じさせるような事件を選び、その事件を通してさまざまなメッセージを伝えられたらという狙いです。また、多様性が謳われる社会の中で、障碍も含めていろんな個性を持った人たちが寛容に生活していけるような世の中に今後なっていくだろうなと思いますし、なっていってほしいと願いを込めています。この主人公が周囲の人に助けられながら過ごしている姿を通して、多様性の中で助け合いながら過ごしていけるような社会を描きたいという思いもあります。
◆これまでにも数々のヒット作を手がけている黒岩さんですが、本作の制作を通して特に魅力を感じた部分は?
いろんな脚本家さんがいる中で、恐らく今トップクラスの1人だと思います。僕自身は以前『グランメゾン東京』という作品を一緒にやらせていただいて。実はそれよりも前に一度飲みの席でご一緒したことがあり、「一緒に作品やりましょう」なんて話をしたことがあったんですが(笑)。黒岩さんの脚本にはいろんな魅力がありますが、この物語を今の時代にやる意義、ドラマとしてやるべきこと、何を通して描くかを考えていらっしゃって、それらに対する信念がとても強いです。それでいて、どうエンターテインメントに昇華し、なるべく多くの人に見てもらうかってことを常に絞り出して考えてくださる方です。今回の『ラストマン』も、エンターテインメントの要素がなかったら実際はつらい事件を描いているんです。特に4話以降、どんどん社会のいい面悪い面をむき出しにしたような事件を扱っているので、ストレートに見せたらつらいものがいっぱいあったと思います。でもドラマとして、エンターテインメントの枠でうまく包みながら届けてくださっていて。エンターテインメントだからこそ伝えられるようなマイルドなメッセージになっていったと思いますし、そういうものに関しての手腕が一級だなと思います。
◆主人公の皆実と相棒の心太朗は、福山雅治さんと大泉洋さんが演じるからこそのバディになったと思います。手応えをどのように感じていますか?
お2人がこの役を演じてくださるのを楽しみにしていました。当初の期待を超えるというか、どんどん役を膨らませて立体的にしてくださったなと感じています。最初に黒岩さんと脚本を作っていく中で、もともと息ピッタリの福山さんと大泉さんが、ましてやエンターテイナーとしても俳優さんとしてもトップクラスのお2人がやるのであれば、皆実と心太朗のやりとりはある程度形を作りさえすれば、あとは自ずとやってくださるだろうという思いもあったんです。お2人が演じる前までの段階の脚本は、実はそこまでコメディに振っていませんでした。そもそも大泉さんに今回演じていただいたのが“どコメディ”な役ではないですし、いつもと違う役を演じていただいているので。脚本作りの段階ではお2人の丁々発止を楽しめるひと匙の“抜ける要素”みたいなものを入れて、あとはお2人がどう演じていくんだろうということに期待を込めて作っていきました。これを福山さんは「アドリブ」っておっしゃっているんですけど、楽しめる要素を福山さんと大泉さんがピックアップされて、「ここはこういうふうにやって」と常に現場で相談されています。それにより、皆実や心太朗という人物をとても立体的にしてくださったなという印象がありますし、思った以上のバディ感をお2人が構築してくださったなと思います。最初に3話ぐらいまでの脚本を仕上げていましたが、その後の4、5話ぐらいからは現場でお2人が演じてらっしゃる姿やキャラクターを黒岩さんに逐一フィードバックしながら、アジャストしていったところがあります。
◆“アドリブ”は毎回お2人で話し合っているのでしょうか?
“アドリブ”というと面白い部分だけ想像しがちだと思うんですけど、『ラストマン』に関しては2人の関係性や立ち位置についてもそうなんです。最初は拒絶する関係性だったのが、どこからどう仲よくなってその時はどんな関係性なのか…とか。当然脚本でも流れを作っていますし、せりふとしても作っているんですけど。微妙なニュアンスとか動きの加減を含めて、1シーン目を撮影したときからやっていました。実は今回、クランクイン前に福山さんと大泉さんとでリハーサルをやったんですよ。連続ドラマでは結構珍しいことかもしれないですけど、1日お2人にお時間をいただいて1話の2人で過ごすほとんどのシーンのリハーサルをやっていきました。その時に、どれぐらい距離感を取るかとか、最初の関係性についてやりとりして作っていった形です。
◆6話のラスト、将棋をさしているシーンで福山さんがいい声で「4六角」と言うのもアドリブですか?
あれはアドリブですね。信頼し合っている間柄だからこそ、皆実は自分でささないっていう設定でもともと別のせりふもあったんですけど。それを上回るようなアイデアを出してくださりました。現場でのリハーサルで、ああやって大泉さんがツッコんで…ってなっていった感じですね。なので毎回現場は面白いですよ。お2人のやりとりが面白いですし、想像がつかないようなことをやってくださるので。本編の流れと違うから使えないな…ってカットしてるところも何個かありますけど(笑)。この6話のシーンも、この後カットがかかるまでずっとやりとりしてるので、もったいないぐらいですけどね。お2人のリハーサルの風景はずっと見ていられます。
◆撮影現場は和気あいあいとしているんですね。
扱っている事件が事件なので、なかなかシリアスなところもありますけど。福山さんはずっと主演でやってらっしゃった方ですけど、ゲストの方も含めて本当にいろんな方と気兼ねなくお話されています。大泉さんは番組のMCばりに現場を回しながらやっていく方で。キャストだけでなくスタッフも巻き込んで、一緒に楽しくなっちゃうようなアットホームな現場です。
◆大泉さんのパブリックイメージとは異なる、クールな役を演じていただいた意図は?
心太朗を見て皆さんがどう感じていただけたのか気になりますけど、作っている方としてはあらためて見て本当に魅力的なキャラクターですよね。大泉さんってものすごく色気があるんですよ。最初の段階で大泉さんに「どういう役ですか?」って聞かれたときに「カッコいい役なんです!」って話をしたんです。ご本人も「え、何で俺カッコいい役なの!?」っておっしゃって。でも僕は以前から「男から見てもカッコいい方だな」と思っていたので、だから「カッコよく作りましょう」って言ったんです。ご本人も普段バラエティとかでお話されているよりトーンを下げた声でやってくださっています。そういう意味でも心太朗はカッコいいところがとても多いと思いますし、狙い通りになったのかなと思います。
◆皆実と心太朗が41年前の事件の被害者と加害者の家族であることが明らかになりました。その関係性や、2人に過去の事件との関わりを作った理由を教えてください。
これも企画当初からずっと考えていたことでした。皆実が全盲であるということもその1つですが、もう1つ大事な側面としては、バディがどのような事件に立ち向かっていくのか、そしてその主人公と心強い相棒が直接的な加害者と被害者の遺族である…というのはもともと作っていたことです。その過去をどうやって清算していくのか――ということをテーマに物語を作りたいと思っていました。
◆9話が終わった段階で気になるキャラクターがたくさん浮上していますが、過去の事件の関係者の中で、最終話の最大のキーマンを挙げるなら?
やはり津田(健次郎)さん演じる心太朗の父・鎌田ですかね。ここまで、回想シーンでは元気だったころの姿もありましたけど、現代のシーンでは何も語らない人でした。最終回もそこまで多くを語らないかもしれないですけど、一方で全ての真実を知っている人なんですよね。その真実っていうのがとてもつらくもあるし、ある意味幸せでもある。そんな喜怒哀楽が詰まったような真相が明らかになるかと思います。その全ての元凶になった人が鎌田です。
◆永瀬廉さん演じる泉は、護道家の人間としての立場と警察としての自身の理想の間に揺れています。最終話での注目すべきポイントは?
9話で危機的状況になった泉がこの先どうなるのかというのは、10話の見どころの1つになるかと思います。すごくピュアなキャラクターなので、不正に向かっていこうとする中で9話は事件に巻き込まれてしまうんですけど。あの彼の行動なくして、最終的に物語が解き明かされていかないので、すごく重要な役回りになっています。あとはやはり、護道家のことも含めいろんなことを知った末に、彼自身が導き出す正義とは何か、はたまたそれが変わるのか、今のピュアなままなのか…っていうことも見どころになっていくのかなと。また、彼がずっと思い続けている吾妻(今田美桜)との関係がどうなっていくのかというのも少しばかり描かれるので、そこもご期待いただければと思います。
番組情報
日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』
TBS系
毎週日曜 午後9時~9時54分 ※第10話(6月25日放送)は25分拡大
<キャスト>
福山雅治、大泉洋、永瀬廉(King & Prince)、今田美桜、松尾諭、今井朋彦、奥智哉、王林、川瀬陽太、森口瑤子、寺尾聰、津田健次郎、吉田羊、上川隆也 ほか
<スタッフ>
製作著作:TBS
脚本:黒岩勉
音楽:木村秀彬、mouse on the keys
挿入歌 :神はサイコロを振らない「修羅の巷」(Universal Music/Virgin Music)
全盲所作指導:ダイアログ・イン・ザ・ダーク
協力:日本視覚障害者団体連合
編成プロデュース:東仲恵吾
プロデュース:益田千愛、元井桃
撮影監督:山本英夫
演出:土井裕泰、平野俊一、石井康晴、伊東祥宏
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/lastman_2023_tbs/
公式Twitter:@LASTMAN_tbs
公式Instagram:lastman_tbs
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