「昔は練習するのが必ずいいことだと思っていた」『七つの魔剣が支配する』田丸篤志・貫井柚佳に聞く演じるキャラクターの印象と役者としての変化

特集・インタビュー
2023年07月05日
©2023宇野朴人/KADOKAWA/キンバリー魔法学校

「このライトノベルがすごい!2020」(宝島社刊)文庫部門・総合&新作で1位を獲得した『七つの魔剣が支配する』(KADOKAWA刊)がTVアニメ化。TOKYO MX、BS11にて2023年7月7日(金)深夜0時30分より放送がスタートする。

本作の舞台は、卒業までに2割の生徒が魔道の探究により再起不能や行方知れず、または発狂した末に死に至るというキンバリー魔法学校。穏やかで理性的な性格のオリバー=ホーンは、とある覚悟と共にこの魔法学校の門をくぐる。彼を中心に、さまざまな出身、背景を持つ少年・少女たちがこの学校に集い、魔法使いとなるべく切磋琢磨していく。

今回はオリバー役の田丸篤志さん、オリバーと同じくキンバリー魔法学校に入学してきた少女・ナナオ役の貫井柚佳さんにインタビュー。それぞれのキャラクターへの印象や、デビュー当時と比べて役者として成長・変化したと感じることについてお話をお聞きしました。


◆最初に、本作への出演が決まったときのことを振り返っていただければと思います。

田丸:事務所のスタッフさんから「受かったよ」と聞いたときは、うれしいよりも驚きの気持ちが強くて。恐らく「やった!」というリアクションを期待されていたと思うのですが、突然の報告過ぎて「はい」とだけ答えてしまった気がします(笑)。後からじわじわと実感が追い付いてきて、うれしさがこみあげてきましたね。

貫井:私もマネージャーさんからお電話でご連絡をいただいたのですが、本当にうれしくて! 作品を読んだとき、ナナオの笑顔や凛とした表情、鮮やかに動き出す様子が目に浮かびました。「ぜひ演じたい」という気持ちでいっぱいだったので、決まった瞬間「やったー!」と大きな声を出して喜びました。

田丸:きっとこれが、正解のリアクションだと思います(笑)。

◆原作を読んだときの感想を教えてください。

貫井:魔法に元々憧れがありますし、冒頭から魔法生物が出てきたり、魅力的なキャラクターが登場したりして、とにかく引き込まれました。一方で、“魔に呑まれる”というワードが物語っているように、混沌渦巻く世界が広がっていて。キラキラ・ワクワクではない魔法使いの生き方が描かれているのが印象的でした。

田丸:キャラクターはもちろん、背景のイラストなども含めた世界観がすごく好きで、「こういう世界に行ってみたいな」というプラスの感情が湧きました。ただ、シナリオを読み進めていくとダークで重たい展開になっていって。その対照的な要素のバランスがとても絶妙で、より惹かれました。物語の核となる部分をどんどん知りたくなって、原作を一気に読んでしまいましたね。

©2023宇野朴人/KADOKAWA/キンバリー魔法学校

◆続けて、それぞれが演じるキャラクターの紹介をお願いします。

田丸:オリバーは穏やかで優しくて面倒見がよい、落ち着きのある人物です。何か突出した才能があるわけでもなく、本人も言っているように平均的な男。ただ、実はとある覚悟を持って魔法学校に入学したんです。物語が進んでいくと、そんな彼の裏の部分が明らかになってきます。その裏の部分が、ナナオなどと接するうちにちょっとずつ変化していくのも、本作の見どころだと思います。

貫井:ナナオは日の国(やまつくに)から魔法学校にやって来た、この世界では異質な存在です。好奇心旺盛で物怖じしない竹を割ったような性格をしていて、良くも悪くも空気が読めない(笑)。その無邪気さにオリバーが翻弄されているシーンもしばしば出てきます。そんな彼女ですが、刀を抜いたときは全く違う表情を見せるんですよ。そのギャップもナナオの魅力だと思います。

©2023宇野朴人/KADOKAWA/キンバリー魔法学校

◆お互いが演じるキャラクターへの印象も教えてください。

田丸:オリバーが頭を使って行動するタイプなのに対して、ナナオは直感的に動くタイプ。貫井さんが言っていた「空気が読めない行動」を、「空気が読める」オリバーは絶対に起こさないんです。あまりの無邪気さに戸惑いを感じつつも、裏がない彼女の振る舞いは間違いなくオリバーに影響を与えます。戦いになったときの彼女のギャップは、美しいという印象がありますね。

貫井:オリバーは学校で仲良くなるナナオら6人組の精神的な支柱だと思います。確かに平凡ではあるのですが、人徳があって、ものすごく面倒見がいい。空気の読めないナナオのことも気にかけてくれるんです。

田丸:確かに、いろいろな人の面倒を見ているシーンが多い。

貫井:きっととても心が広いのかなと。自分のことで精いっぱいになるんじゃなくて、誰かを気に掛けることができる。一方で、鬼気迫る表情をするときもあって。オリバーって落ち着いてはいるけども、クールってわけじゃないんです。そのギャップもカッコいいですね。

◆精神的支柱だけれど、誰かを引っ張っていくというタイプではない。

田丸:そういうタイプではないですね。どっちかと言えば、できない人の後ろに回って背中をポンと押してあげるタイプ。きっと、自分が平凡で何もできなかったから、「できない人」の気持ちや凡人には難しいことが何なのかが分かるんだと思います。

お芝居って、思ったよりも選択肢がない訳じゃない

©2023宇野朴人/KADOKAWA/キンバリー魔法学校

◆アフレコで一緒に掛け合ってみて、いかがでしたか?

田丸:何も考えていない無邪気さを表現するのって、かえって難しいと思うんです。「何かがあるからそう言っている」という邪な感情が入った瞬間に、そのキャラクターじゃなくなってしまう恐れがあって。貫井さんはナナオを演じる際、本当に裏がない純粋な表現をされていたので、すごいなと思いました。

◆「何も考えていない」って、表現しようと思えば思うほどできなくなりそうです。

田丸:演じるうえでは、相当難しいと思います。声優って、セリフにどれだけ意味を込められるかも大切だと感じていて。だから余計に、「何も考えていない」表現は難しいと思うんです。

貫井:ナナオがオリバーにサポートしてもらっているように、田丸さんの声に私も後押しされていました。すごく心強くて、アフレコ中の心の支えになっていたんです。メインキャラクター6人の関係性と同じく、そのキャスト陣もすごくバランスのいい、すてきなメンバーだなぁと個人的に感じていて、それぞれの個性をみんなで支え合い、活かしているような気がしました。

◆戦いや学校での学びを経て成長・変化していくオリバーたち。お二人は声優としてデビューした当時と比べて、役者として成長した、演じるうえでの気持ちが変化したと感じる瞬間はありますか?

田丸:何から話せばいいのかなと思うくらい、何もかもが違います。例えば、昔はたくさん練習するのが必ずいいことだと思っていました。ただ、その練習によって「このキャラクターはこうだ」「このシーンはこう演じる」というものが染みついてしまい、現場でディレクションがあったとき、対応できなくなる場合もあって。練習はもちろん必要なのですが、芝居は他の役者さんとの掛け合いやスタッフさんのディレクションで生まれるものもあるんです。だから、演じるキャラクターの方向性や、相手がどうくるのかを決めつけちゃいけない。今はだいぶニュートラルな気持ちで現場に行けるようになりました。

©2023宇野朴人/KADOKAWA/キンバリー魔法学校

◆練習し過ぎて、周りが見えなくなることがあった。

田丸:はい。視野が狭かった気がします。相手の芝居を聞いているつもりで、聞いていないというか。今が完璧にできるわけではないですが、比較したときに、デビュー当時の自分は本当にダメだったなと思います。変化しかないですね。

貫井:オーディション原稿を読んで、次の日に改めて聞いてみると「あれ、何でこれがいいと思ったんだろう」と恥ずかしくなることが今でもあって。

田丸:分かる。

貫井:そのときは「これで完璧だろう」と感じても、時間が経ってから録音した音源を聞いてみると「これは違う!」って思っちゃうんです。だから、養成所に通っていた頃の芝居なんて聞いたら、悶絶しちゃうんじゃないかな(笑)。田丸さんがおっしゃっていたように、練習し過ぎると凝り固まってしまって「違うアプローチで」と言われたとき、対応ができなくなる時があるんです。だからこそ、現場に出て周りの方の芝居を見て、聞いて吸収したり、発見したりするのが大事なのかなと。いろいろな現場や作品に触れて、引き出しやひらめきを増やすのが成長の鍵になると思っています。

◆なるほど。

貫井:ありがたいことにたくさんの現場に携わらせていただくなかで、思考的にも技術的にも、昔よりは自由にお芝居を考えられるようになりました。お芝居って、思ったよりも選択肢がないわけじゃないんです。もちろん、「このシーンはこういうものが欲しい」と求められるときもありますが、それはそれで、要求通りのお芝居を出せる技術や想像力が必要で。また、アプローチするなかで自分の想像とあえて真逆のことをしてみたら、案外しっくりくることもあったりして。以前は「このキャラクターはツンデレだ」など、枠で考え囚われてしまうときがありましたが、今はもっと柔軟な視点で考えてみようと思うようになりました。

◆本作の放送を楽しみにしているみなさんにメッセージをお願いします。

田丸:原作を知らない方は、序盤のオリバーの節々に引っかかりがある気がします。それは正しい引っかかりですので、今後彼がどうなっていくのか、何を抱えて学校にやってきたのかに注目していただければと思います。

貫井:ナナオは過去の経験から、無意識に自身の命を軽んじる傾向があって。そんな彼女の死生観が、物語が進むにつれて明らかになっていきます。彼女もオリバーと出会うことで大きく変わるので、その様子を見守っていただけたらうれしいです。

©2023宇野朴人/KADOKAWA/キンバリー魔法学校

(こんなお話も!)田丸さん・貫井さんが読者の方々に推したいエンタメは?

田丸:最近はゲームを買ったのにそれを放置して、韓流ドラマをひたすら見ています。直近だと復讐がひとつのキーワードとなる『クイーンメーカー』を見ましたね。今まで見た韓流ドラマは、財閥が敵・悪という作品が多いです(笑)。いろいろな作品が配信サイトなどで見られるので、日本のドラマが好きな方もぜひチャレンジしてみてほしいです!

貫井:私は……今は野球だったりサッカーだったり、世間でも盛り上がっているタイミングでスポーツに熱中したりしてます。ことスポーツ観戦に対して、とてもミーハーなんです(笑)。そして、今はバスケにハマっています。

田丸:きっかけは何だったんですか?

貫井:某バスケマンガの映画を見まして。

田丸:あー、なるほど!

貫井:スポーツの試合の感動って、本当に心に響くんです! がむしゃらに頑張っている姿はカッコいいですし、素直に尊敬します。某バスケマンガの映画は、もう10回ほど見に行きました。ほんっとうに最高です! 影響されて、自分でもやり始めちゃいました…!。

田丸:マジで!?

貫井:はい。ゲーム仲間がいるんですが、よく夜更かししてゲームをやっちゃうときがあったんです。その仲間たちと「そろそろ運動とか、スポーツもしたいね」という話をしていて。その中でバスケをやろうという流れになって、ちょうど映画を見て熱が高まっていたので、思わずボールも買って始めちゃいました…!

田丸:すごいな!

貫井:おかげさまで、今は体のあちこちが痛いです(笑)。でも、スポーツで体を動かしたことで、何だかポジティブになった気がします。健やかになっていく感覚が、気持ちいいですね!

田丸:ジムやランニングもいいけれど、誰かと一緒に楽しみながら体を動かしたほうが、ちゃんと続くかも。

貫井:そうなんです! 田丸さんも復讐するなら、運動したほうがいいですよ!

田丸:いや、誰かに復讐したくて韓流ドラマを見ているわけじゃないから(笑)。

PROFILE

田丸篤志

田丸篤志
●たまる・あつし…2月27日生まれ。埼玉県出身。主な出演作は『たまこまーけっと』大路もち蔵役、『A3!』月岡紬役、『刀剣乱舞シリーズ』一期一振役など。

貫井柚佳

貫井柚佳
●ぬくい・ゆか…12月30日生まれ。東京都出身。主な出演作は『シュガーアップル・フェアリーテイル』アン・ハルフォード役、『贄姫と獣の王』キュク役、『Back Street Girls -ゴクドルズ-』山本アイリ役など。

●text/M.TOKU

番組情報

©2023宇野朴人/KADOKAWA/キンバリー魔法学校

『七つの魔剣が支配する』
TOKYO MX、BS11
2023年7月7日(金)より放送・配信開始
毎週金曜 深夜0時30分~

dアニメストア、ABEMAにて地上波同時・先行配信開始
毎週金曜 深夜0時30分~
その他サイトも7月11日(火)正午より、順次配信開始
※放送・配信日時は予告なく変更の場合あり

<キャスト>
オリバー=ホーン:田丸篤志
ナナオ=ヒビヤ:貫井柚佳
ミシェーラ=マクファーレン:山田美鈴
カティ=アールト:大和田仁美
ピート=レストン:杉山里穂
ガイ=グリーンウッド:菅原慎介
リチャード=アンドリューズ:千葉翔也
ヴェラ=ミリガン:加隈亜衣
オフィーリア=サルヴァドーリ:茅野愛衣
サイラス=リヴァーモア:伊丸岡篤
アルヴィン=ゴッドフレイ:日野聡
カルロス=ウィットロウ:山本和臣
エスメラルダ:田中敦子
ルーサー=ガーランド:興津和幸
ダリウス=グレンヴィル:東地宏樹

<スタッフ>
原作:宇野朴人(電撃文庫/KADOKAWA刊)
キャラクター原案:ミユキルリア
監督:松根マサト
シリーズ構成:ヤスカワショウゴ
キャラクターデザイン:諏訪壮大
プロップデザイン:谷川亮介
美術監督:髙野真希
色彩設計:市原彩香
撮影監督:酒本悠資
編集:須藤 瞳
音響監督:岩浪美和
音楽:夢見クジラ
アニメーション制作:J.C.STAFF

オープニング主題歌:「剣花」夢見クジラ feat. みみずく&ふくろう
エンディング主題歌:「アイム」夢見クジラ feat. つむぎしゃち(from キミのね)

公式HP:https://nanatsuma-pr.com
公式Twitter:https://twitter.com/nanatsuma_pr

©2023宇野朴人/KADOKAWA/キンバリー魔法学校