山下智久インタビュー「映画って本当に壮大なパズルのようだなと思いました」『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』

特集・インタビュー
2023年07月07日

山下智久インタビュー

『私の頭の中の消しゴム』のイ・ジェハン監督が手掛けた映画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』(PrimeVideoにて独占配信中)のディレクターズ・カット版が7月7日(金)より劇場公開される。主演を務めるのは、以前よりイ・ジェハン監督のファンだったという山下智久さん。約6年ぶりとなる王道ラブストーリーの現場で、目が見えなくなる難役に挑戦して感じたこと、役者としての今後の展望などを語ってもらいました。

◆目が見えなくなる役柄ということで、どのような準備をして、役にアプローチされましたか?

視覚障がいのある人が登場する映画を見たり、目隠しをして生活してみたり、そういった方たちとお会いしてお話を聞いたり、いろいろと事前に準備はしていました。生まれつき見えないという方もいれば、何かしらの理由があって見えなくなったという方もいて。実際にお話していても、見えていないことが分かる方もいれば、見えている人と変わらないような方もいる。ひと言で視覚障がいと言っても、本当にさまざまな方がいらっしゃるということが分かりました。お芝居に関しては、アクティングコーチと相談して技術的な部分も意識しつつ、一番はやはり現場で監督と話し合って作り上げていったところが大きかったです。

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◆役柄の心情を理解するために、自分に置き換えて考えるといったことも?

自分の家の中でさえ、目隠しをしてみると何がどうなっているのか全く分からなくなります。それだけ視覚に頼って生きているということが分かりましたし、いきなり視力を失うということを考えただけでものすごい恐怖を感じました。演じた真治のように絶望するだろうなということも容易に想像できます。実際に自分で命を絶とうとするぐらいの絶望を味わいながら、もう一度立ち上がろうと思えたのは家族の支えがあってこそという方のお話もお聞きしました。あらためて、人との関わり方や信頼というものに気づくというのもこの映画の一つのテーマになっていると感じました。

◆イ・ジェハン監督とお仕事をした感想は? どんなことが印象に残っていますか?

毎日たくさんの気づきがあって、本当に楽しかったです。監督にとっては、ほんの小さなことも決して小さくはないんだなと。小物を撮影するときも明確な意図があって、何度もテイクを重ねるんです。僕は今まで、細かいところで立ち止まるということをあまり経験してきませんでした。でも監督は、小さいものも大きく捉えていて、そのディティールにどれだけの影響力があるかというのをとても重要視している。僕らの表情、カット、アングルや光という、映画に関わる全てのものに対して、そういう意識が反映されているんです。僕は高校生のときに監督の撮った『私の頭の中の消しゴム』を見たのですが、今あらためて見ると、当時気づけなかったことに気づけたりする。“このシーンの裏に、何層もいろんなことが重なっているんだな”とか。監督と一緒に作品を作っていく過程で、映画って本当に壮大なパズルのようだなと思いました。役者のコンディション、声のトーンに顔の表情など、1回1回の撮影で数え切れないほどのバリエーションが生まれる。その組み合わせはもう何百、何千通りとあって、それをつなぎ合わせて1本の作品にするのは途方もないことで。監督は最低でも5回はテイクを重ねる人だったので、余計にそう感じました。ちょっとこれは、自分にはできないことだなと(笑)。5年後かもっと未来、修業を積んだ後だったら、もしかしたらやってみたいと思うかもしれませんけど。

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◆俳優としての今後のご自身の活動方針に影響はありましたか?

特に海外の俳優さんだと、同じ監督さんと何作か一緒にやる人っているじゃないですか。以前はそれがよく分からなかったのですが、今回初めて理解できました。僕もまた、イ・ジェハン監督と仕事がしたい。これまでは「今のは、ちょっと…」と気になることが現場であったとしても、そのまま進むことの方が多かったんです。ほんのちょっとのニュアンスなので特に問題はないのですが、監督には100%気づかれました。こういうことがあると、確かに「またこの人と仕事がしたい」となる。若いときは量をたくさんやって経験を積んでいくことが大事だと思っていましたが、今はより質のほうを重視できたらと思うようになりました。真摯な気持ちで、じっくりと向き合える作品に関わっていきたいです。

◆主題歌「I See You」も歌われていますが、全て英語詞で、レコーディングにも時間をかけられたそうですね。

歌詞が何度か変更になり、レコーディングも何度もやったので、完成までにとても時間がかかりました。映画の中である詩が出てきていて、それはドイツ語の詩がベースになっているんです。監督はドイツ語から英語に変換された詩を参考にしていたのですが、楽曲の方のスタッフさんにドイツ語のネイティブの方がいて。細かいニュアンスまで伝え合えたことで、歌詞が変わっていったんです。時間はかかりましたが、内容をより細かくすり合わせることができてよかったなと。ミュージックビデオも映画のカメラマンと監督が撮ってくれたので、映画の遺伝子を持った特別な曲になりました。役を演じた後に楽曲制作があったので、僕としても役の魂的な部分を注げたなと思っています。

山下智久インタビュー
山下智久インタビュー

◆映画で演じられた真治という役は、いろいろな場面でとても重要な決断を迫られていました。そういった重要な局面で、山下さんならどのような決断の仕方をしますか?

昔は直感型だったけど、今ではこれまでの経験とか、何ていうのか…世の中の法則的なことも考えるようになりました。説明が難しいんですが、例えばプールの水面の落ち葉が一か所に固まるという法則とか、そこから外れることのない絶対的なルールというものがある。無視しようとすると、絶対にうまくいかないんです。あえて、わざと、それに反することをしてみるのも、戦略としてはありかもしれません。でも、やるからには飛距離を出したいですから。真上に90度に投げたら絶対に飛距離は出ないので、ちゃんと遠くに飛ばせるような方法論は探りたいです。どの世界もそうだと思いますけど、僕らにとっても伝わりやすい演技というものがあるので。どうせなら一番伝わりやすいアプローチ、技術を取り入れていこうというのは考えるようになりました。

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◆ちなみに劇中でプレゼントの話が出てきますが、プレゼント選びは得意ですか?

いや、あまり得意じゃないかも(笑)。喜ばれるものをねらうより、困らないだろうっていう、安全さの方を意識しちゃいますね。すごく親しい人だったら“これだ!”っていうのが分かるだろうけど、そうではない場合は、必ず使う消耗品とか、もらっても迷惑じゃないものを選びがちです。例えばもしサングラスをもらったとしても、形が合わなかったらきっと持て余すだろうなとか。そっちを重視しちゃいますね。

◆最後に近況的なお話を。ツイッターのアンケート機能でファンの方たちと交流するなど、山下さんはSNSの使い方が上手ですね!

ありがとうございます。うちわに関するアンケートのことですよね(笑)。“うちわって、いるのかな。どうなんだろう?”と思ったので、迷っているぐらいなら聞いた方が早いなと。意外にも7割以上は“いる”と言ってくれたので、作らせてもらおうということになりました。うちわの必要性や思い入れなど、皆さんちゃんとコメントしてくれて。そういう声をみんなでシェアできるって、すごい時代ですよ。本当に貴重な意見をシェアさせてもらったので、また分からないことや迷うことがあったら皆さんにお聞きしたいです(笑)。

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PROFILE

●やました・ともひさ…1985年4月9日生まれ。千葉県出身。A型。High Hope Entertainment所属。最近の出演作にドラマ『TOKYO VICE』『正直不動産』、ハリウッド映画「The Man From Toronto」など。本作の主題歌でもある「I See You」が各音楽配信サービスで配信中。アリーナツアー「TOMOHISA YAMASHITA ARENA TOUR 2023 -Sweet Vision-」が8月11日(金)より愛知、兵庫、神奈川で開催。日仏米共同製作の主演ドラマ『神の雫/Drops of God』が9月15日(金)よりHuluで配信開始。

作品情報

「SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる」

「SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる」
Prime Videoにて独占配信中
2023年7月7日(金)よりディレクターズカット版が劇場公開

<STAFF&CAST>
原作:「見えなくても聞こえなくても愛してる」©NASTY CAT/SUPERCOMIX STUDIO Corp.
製作:2023「SHL」partners
監督・脚本:イ・ジェハン(John H, Lee)
出演:山下智久、新木優子/高杉真宙、山本舞香/深水元基、渡辺大(友情出演)、加藤雅也(友情出演)、菅原大吉/山口紗弥加、夏木マリ

<STORY>
漫画に心血を注ぎ、漫画家として生計を立てている泉本真治(山下智久)は、ある日、自分の作品が映画化されるという朗報を聞く。アシスタントの中村沙織(山本舞香)と喜ぶ真治。だがその喜びもつかの間、突如病に倒れ、視力を失うことになってしまう。やっと軌道に乗ってきた連載漫画も休載。また一緒に暮らしていた祖母(夏木マリ)の面倒も見切れなくなっていく…。一人になった真治は孤独と恐怖に襲われ、ベランダから身を投げ出そうと考える。そんな時、真治の漫画のファンで、耳が聞こえない相田響(新木優子)に助けられる。こうして出逢った真治と響は不思議な共同生活を始めるのだった。

公式サイト:http://see-hear-love.com

Twitter:@SHL_2023
Instagram:@shl_2023_

©2023「SHL」partners

●photo/中村功 text/根岸聖子

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