山本千尋、ラブコメ挑戦で新境地「想像以上にアクションみたいな感覚が強かった」『埼玉のホスト』インタビュー

特集・インタビュー
2023年07月24日
『埼玉のホスト』©『埼玉のホスト』製作委員会

7月25日(火)からスタートするTBS深夜ドラマ枠「ドラマストリーム」の新ドラマ『埼玉のホスト』(TBSほか 毎週火曜 深夜1時~1時30分)で主演を務める山本千尋さんにインタビュー。

本作は“何もかも中途半端な埼玉のホストたち”と“ある秘密を持つ歌舞伎町トップホスト”、そして“男だけでなく人間全般を信用しない女”が目標のために時にぶつかりあい、時に励まし合い、絆を深め合う、新しい「埼玉ブーム」をドラマから送るラブストーリー&青春コメディ。超優秀なコンサルタントにして、埼玉のホストクラブ「エーイチ」を立て直すべく奮闘する荒牧ゆりか役を演じる山本さんに、初主演についてや、現場でのエピソードを聞きました。

◆演じてみての感想を教えてください。

今までありがたいことにアクションありきの役が多くて、今回はどちらかというと真逆な文化系でもありながら、でも自分の特技を生かせる部分もあるような役。これだけ長いせりふを自分に与えられたのも正直初めてだったので、すごく挑戦的でした。そして関西出身の私が埼玉をメインとした作品で、主演を任せてもらえるとは思わなかったので、主演に選んでいただいたことがすごくうれしかったです。

年下の男の子が多い現場で、その中で自分が座長として、その子たちの位置を気にかけるということも、今までの自分の経験でいうと初めてだったので、主演だからこうしないとっていうのはなく、その子たちと一緒に成長ができました。木村了さんや守谷日和さんというベテランの方たちもいたので、その方たちにも甘えながら作品を撮れているのでありがたかったです。一番恵まれているなと思ったのが、演者さんもそうなんですが、スタッフさんたちも結構若い方が多くて。プロデューサーの杉田(彩佳)さんも初めてのプロデュース作品ということで、チームのみんながすごいフレッシュで熱意がありました。「いいものを絶対撮りたい」という思いを持っていて、ちょっとでも引っかかることがあれば、みんなで話し合いができるような仲間と出会えたこともすごくうれしかったです。

◆主演としての居方をあまり意識されなかったということですが、撮影中に主演だなって感じた部分はありますか?

濱尾ノリタカ君が自分のシーンのときに、カメラのレールが引かれたんです。そうしたら「俺のためのレールがうれしい」と言っていて、それに私は結構ぐっときました。今回、主演をさせてもらっているから気を張っていてすぐに気づけなかったのですが、やっぱりみんな以上にレールを引いてもらったり、寄りのカットがあったりして。彼のその言葉を聞いたときに、「いや、そうだよね、私のために引いてくれてるんだよね」と思う瞬間がありました。やっぱり若い方たちといるからこそ、そういうことに共感して、ありがたみを感じることができたので、主演だからとかそういう意味ではなく、本当に皆さんのおかげの現場だなって思っています。

◆ゆりかを演じるに当たって意識していることは何でしょう?

人間味はあるんですけど冷酷。今までちょっと人間味がないという役は多かったですが、ゆりかは人間味があるけど、淡々としてるんです。そして、すごく言葉の一つ一つが間違いがない人でもあるので、そのゆりかの言葉に説得力を持たせるためには、どう自分が振る舞えばいいんだろうと、まずその知識を持たないといけないなというところから始まりました。ホストというものに対しても自分は知識がなかったので、勉強もしました。そして、スーツを着て、ピンヒールを履いてというビジュアルだったので、どこか立っている姿だけでも、バリキャリなんだなって思ってもらえるような、何を細かく意識したかと言われると、なかなか説明しづらいですが、そういったささいな部分を気にしました。

◆今回、作品でホストクラブに関わっていく中で、新たに発見したことやイメージに変化があったことはありますか?

今回、ホストを経営するコンサルタントの役ということで、初めてホストクラブに行かせてもらいました。実際にホストクラブで接客を受けると、まるで百貨店で接客されているかのような心地の良さでした。皆さんすごく丁寧で、傷つくことを何も言わない、ずっと楽しくさせてくれるので、本当に気分がよくなって、また行きたくなる気持ちが分かるなと思いました。いい意味で「エーイチ」にいる男の子たちとはズレていたので、影響されないようにとは思っていましたし、彼らには極力、見学をしたことは話題にしないように避けました。ただ、私自身はそういう接客をしていただき、ホストへの愛着みたいなものが湧いたので、この人たちに何か一つ、自分たちができることがあるとすれば、いい作品として届けることだなと強く思いました。

◆このドラマに出演されて、埼玉に対してイメージが変わったことなどありますか?

私自身が兵庫出身なので、埼玉の方たちがいわゆる“ダ埼玉”と言われることがピンとこなくて。そこまで偏見なく新鮮にいたのですが、ドラマ内でところどころに“十万石まんじゅう”や“コバトン”といった埼玉名物が出てきたときに、たぶん地元あるあるなんだろうなとはちょっと思いました(笑)。私も神戸のグッズを見かけると、すごく愛着を持ってそのグッズを持っちゃうので、きっと埼玉の人たちもそういう愛着があって持たれているんだろうから、その一つ一つを大事にしました。

◆この作品の見どころはどこにあるでしょうか?

「中途半端」という言葉を大事にしている作品。周りから見ると埼玉はすごく都会なのかって言われるとそうではない。だからこそ生まれる葛藤もありながら、絆を深めていって仲間思いな部分があったり、だからこそ伝えられることがたくさんあります。それこそ私が10代のときに、木村了さんが出演されていたドラマを見ていて、その時代のドラマってみんながワクワクして、一生懸命で面白いなっていうイメージがあったんです。このドラマの脚本を読んだときに、久しぶりにそういうドラマが作れるんじゃないかっていうワクワクを覚えたお話だったので、真面目にバカをするってこれほど楽しいことはないなって思いながら撮影できています。

◆福本大晴さん、楽駆さんとの現場でのエピソードやお芝居をしてみての印象を教えてください。

福本君は年下で、私と同じ関西出身。彼自身すごく真面目で、お話に対してたぶん誰よりも真っすぐな方です。自分はそこまでドラマの経験がないからとおっしゃっていましたが、彼の姿勢が私たちに、「あ、でもお芝居を作る環境ってそうだよね」とあらためて教えてくれているような存在でした。ただ、オフのときは関西バリバリで話してきて(笑)。福本君がいてくれるおかげで、すごくみんなが明るくなりましたし、私は彼のことをこの作品で一番のヒロインだと思っています(笑)。新しい風を吹かせてくれたのは福本君だなと思ってます。

楽駆さんは一番大人な方なのですが、ちょっと抜けてるところもあって。でもゆりかの中で、楽駆さん演じるゲンジが人生の半分をある意味支えてくれているような存在の大事なキャラクターだったので、楽駆さんのその落ち着き具合がお芝居をしていても安心感がありましたし、繊細な一つ一つの表情とかも、ゆりかとゲンジの思いも自然と引き寄せてくださる方でした。お二方ともすごく出会えてよかったなと思っています。

◆裏でお話されているときは山本さんも関西弁になっていましたか?

福本君とは完全にそうですね。年下なので敬語を使うのも変だし、関西弁で返されたのに標準語で返すのもどうなのかなと思って福本君とは基本は関西弁でしたね。

◆撮影中に関西弁に引っ張られたりしませんでしたか?

しっかりと録音部さんに「イントネーションが違う」って2人で言われました(笑)。標準語がベースの人たちばかりで、私たちだけが関西人だったので、あるあるなのですが標準語だと思っていたことが片言みたいになっていて(笑)。お互い指摘し合う環境ではあったので、ある意味それがネタになったりもして、いい空気感です。

◆これまでの現場でもイントネーションは大変でしたか?

私は結構何かが違うってよく言われることがありますね。自分の中では大丈夫だと思っていたものが、今でも違うっていうのは日々勉強だなと思います。

『埼玉のホスト』©『埼玉のホスト』製作委員会

◆今回は主演ということでせりふ量も多いと思いますが、これまで以上に試練ですか?

そうですね。バリキャリの人たちは使うのだろうけど、私は知らないなという言葉が出てきたりもしましたし。ホストの人たちの中での言葉もあって…。ただ、連ドラで1話から最終話まで自分がずっと出るということが初めてだったので、徐々に自然とスッと入っていけるようになりました。

◆福本さんや楽駆さんたちのホストぶりは山本さんから見ていかがでしたか?

私は実際に「エーイチ」のホストたちにその役柄で接客をされるわけではなく、どちらかというと育てるという意味でみんなを見守る立場だったのですが、一生懸命頑張っている姿はやっぱりすごくいとおしかったです。実際に埼玉から出て歌舞伎町で撮影をしたときは、根がちゃんと埼玉県民になっていたのか「歌舞伎町が怖い」とみんなで言いながら撮影をしていました。みんな言わずともちゃんと自分のキャラクターが染みついてるんだなと思って、その瞬間はすごく尊かったです。ただ今回、ホストのイメージをいい意味で裏切る話になっているので、皆さんが想像しているホストではないと思います。

◆撮影期間中のハプニングなどを教えてください。

私のキャラクターがあまり笑わない設定だったんですが、みんなはすごくバカしているので、笑いすぎてNGを出しちゃうことがよくあります(笑)。芸人の守谷さんがもう本当に面白くて。芸人さんの才能ですかね、ト書きに1行あるだけのことをすごく膨らませて面白くしてくださるんですよ。そして木村さんも笑かしに来るので、それを我慢することが大変でしたね。

◆カメラが回っているときも笑わせられたりしましたか?

みんな優しいのでそれはなかったですが、引きずっていました(笑)。あとはなんと言ってもプロデューサーの杉田さんが一番笑ってくださる方で、杉田さんたちがいるベースが撮影しているところから少し離れたところにあるのに、監督やプロデューサー陣の笑い声が聞こえてきて、うれしいけどつられて笑っちゃうこともあって(笑)。これだけスタッフさんが笑ってくれるということは、正解だと言ってもらえているような感覚になったので、それもすごく幸せでしたね。

◆コメディならではだなと思ったことはありますか?

私、コメディはアクション以上に難しいだろうなと思っていたのです。相手の呼吸感だとか、面白いを狙ったら面白くなくなってしまうなと。でもそこに関しては男性キャスト陣が本当に素晴らしい才能を持っていて。撮影に入る前に2日間リハーサルがあったのですが、ドラマでリハーサルを2日間いただけるということもすごくありがたかったですし、その期間中に既に1か月くらい私たち一緒にいたよねというぐらいに仲を深められたので、こんな理想的な環境はなかったという中で作品が撮れています。

◆初めてのことが多かったということですが、その中でも印象に残っていることは?

初めての主役で座長で、今までは自分のことだけを考えていればいい環境の中でいたのですが、初めて自分以上に周りの子たちはちゃんと楽しく現場に入れているかなとか、そういうことを考える帰り道がすごく多かったです。出演者の皆さんの話を聞いてると同じように、「今日の自分はこれでよかったのかな」とか、「あのシーンはこれでよかったのかな」と同じ課題や目標を見据えている方たちが自然と集まったといいますか、それだけ熱意のある方たちと一緒にできたので、そこに関しては常に思い出深かったですし、面白いようなネタは出てこないんですけど、ただただ本当にキャストの方たちに感謝しています。

◆以前、『鎌倉殿の13人』のときのインタビューで、「20代のうちにラブコメを経験できたらうれしい」とお答えいただいていたのですが、実際にラブコメに挑戦してみて思ったことは何かありますか?

かないましたね。これまで、ゲストの1話でカップル役とかはありましたが、回を増すごとにときめいていく、キュンとするっていう作品が初めてで。挑戦してみて、想像以上にアクションみたいな感覚が強かったです。大人なラブをしているわけではないですが、見ている人がどうやったらときめいてくれるかなと、実際に現場で福本君や楽駆さんとも話をしました。「この角度の方がちょっとそれっぽくない?」とか、「ここで1回目を合わせたら、ちょっとキュンとしない?」とか、アクションの手合わせみたいな感じで、「この技を出したら、結構パンチ食らうんじゃない?」みたいなノリで現場では話せていたので、ラブコメだからと構える自分はいなかったです。3人とも胸キュンシーンの経験が少なかったので、すごくフレッシュな気持ちで、ラブコメというジャンルを挑戦できたのは、2人が同じ立ち位置に立ってくれたから。気を使わずにアイデアをお互い出しながら、お芝居をできたことに助かったところもあります。ただ、胸キュンしてもらえるかが心配です。保護者に見えてしまうんじゃないかなと…(笑)。

◆数字しか信用しないっていうキャラクター設定があると思いますが、山本さんご自身はいかがですか?

こっちが信用しないと絶対信用してもらえないと思っています。今回の一番の課題でもあったのですが、どう年下のキャストの方たちと仲を深めるか。それと女性一人だったので、そこに対して気を遣わせることはしたくないなとも思っていたので、率先してボケたりしていました(笑)。でもそのおかげか撮影も後半ぐらいのときに、「女優さんなのに気を遣わずにいれるからすごく良かった」って言ってもらった瞬間があって、一つ課題が成功したなとうれしかったです。山本千尋の性格としても一つ今回成長できた部分ではあるかなと思います。

◆今回、主演ということで、山本さんにとって一つのターニングポイントになるのかなと思いますが、今後どんな役柄を演じてみたいとかありますか?

演じてみたい役は山ほどありますが、どうも私は直近でした役とは真逆な役を次はしたくなるみたいで…(笑)。今回のゆりかはコンサルタントで冷酷冷淡だったので、たまにコメディにも参加できましたが、周りの方たちがあまりにバカ騒ぎしているキャラクターだったので、今度は私も誰よりもバカしているぐらいな作品にも出てみたいです。そしてこれからドラマの回を重ねて見てもらえると分かると思うのですが、みんなが成長していって、私自体もキャラクターとしてすごく成長したと思うので、引き続きこの作品がもっと長く愛される作品になるといいなって思います。この『埼玉のホスト』に愛着がありますし、まだまだ続けられる作品だなと思っているので、そこは個人的にもすごく期待しています。ドラマストリーム枠初のシーズン2、もしくは映画化をこのメンバーならできるんじゃないかって思っています!

◆「エーイチ」の立て直しに奮闘する役ですが、山本さんご自身が今、奮闘していることはありますか?

奮闘ではないのですが、いつも通りの自分でいようというのは心がけていますね。
私、わりと同じことをずっとするのが好きで、ルーティン女と言いますか。ある意味小学生からしていることが変わらないぐらい、日々同じことしてることに意味があるんじゃないかというのが、自分のポリシーでもあります。

◆中国武術をされていたときは、いかがでしたか?

当時はもう自分にいっぱいいっぱいで、とにかくもう練習あるのみと思っていましたね。練習量としては絶対誰にも負けていないっていう負けず嫌いなところはありました(笑)。人が10回してるなら私は12回してるぐらい強気でした。でも、周りが頑張ってるっていう環境に置かれていたからこそ、自分が頑張ってるみたいな意識もなくて。これは本当に私の得しているところですが、学校もそうでしたし、今の現場もそうですし、周りが自分以上に頑張っているから、自分ももっと頑張らないとっていう環境に置いてもらえて恵まれているなって思います。

◆お芝居の現場でそういったことは感じたりしますか?

「いいお芝居をするぞ」みたいな、みんなの若いからこそ出てくるエネルギーみたいなのをすごく肌で感じたのですごく新鮮でした。今の自分に悔しがってる方たちがいて、 明日はどういう自分で課題を持てるかっていう方たちが目の前にいると、武術時代の自分や周りを思い出したじゃないですけど、確かにずっとこうやって高めていくっていう姿って、やっぱり忘れがちになる部分ではあるから、すごくいい刺激をもらったなと思います。

◆最後にメッセージをお願いします。

「埼玉のホストってどういうこと?」みたいな意見がすごい多いと思いますが、本当にその考えのままで見てもらった方が楽しんでもらえる作品になっていると思っています。皆さんが思い描いているホストとは真逆かもしれないですが、一人一人にすごく愛があって成長していく、勇気をもらえるドラマです。どこか懐かしくもありながら、一周回って新しいドラマにもなっていると思うので、みんなのその成長っていうものを一番に見てほしいなと思います。

『埼玉のホスト』©『埼玉のホスト』製作委員会

PROFILE

山本千尋
●やまもと・ちひろ…1996年8月29日生まれ。兵庫県出身。O型。出演作にドラマ『テッパチ!』『未来への10カウント』『着飾る恋には理由があって』『誰かが、見ている』『鎌倉殿の13人』『今際の国のアリス』シーズン2、映画「キングダム2 遥かなる大地へ」など。

番組情報

ドラマストリーム『埼玉のホスト』
TBSほか
2023年7月25日(火)スタート
毎週火曜 深夜1時~1時30分

<配信>
地上波放送後、「TVer」「TBS FREE」にて無料1週間見逃し配信
先行有料配信:日本国内では毎週火曜配信 その後、海外にて順次配信を予定

<キャスト>
山本千尋、福本大晴(Aぇ! group/関西ジャニーズJr.)、楽駆
木村了、中沢元紀、田中洸希、濱尾ノリタカ、守谷日和、中山咲月 ほか

<スタッフ>
製作:『埼玉のホスト』製作委員会
制作プロダクション:TBSスパークル
脚本:伊吹一
プロデューサー:杉田彩佳
協力プロデューサー:磯山晶
配信プロデューサー:今井夏木、杉山香織
演出:古林淳太郎、坂上卓哉

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/drama_stream_tbs/
公式Twitter:@drama_streamtbs
公式Instagram:@tbs_drama_stream
公式TikTok:@drama_stream_tbs

©『埼玉のホスト』製作委員会

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