複雑な人間模様が渦巻くスリリングなジェットコースターサスペンス舞台「WORLD beyond the destiny」(4月23日(土)~5月1日(日)上演)。過去にトラウマを抱える爆弾魔の主人公・リュウジを演じるのは、多くの舞台で主演を務める廣瀬智紀さん。作品の魅力や、自身を支えるファンについて熱く語ってくれました。
自分の正義を貫くため“男くさく”戦う
――本作は、連続爆破事件や16年前に起きた奥多摩孤児殺人事件という2つの事件を軸に展開されるサスペンスですが、実際にオファーがきたときはいかがでしたか?
久しぶりにガッツリお芝居ができると思いました。今までもずっとお芝居はやっていますが、最近は続編や原作ありきのものをやらせていただく機会が多かったので、久しぶりにこうやってストレートプレイの舞台をできる喜びやわくわくがありました。
――2013年に上演された舞台の再演ということですが、前作はご覧になりましたか?
DVDで見させていただきました。内容はほとんど一緒なんですが、前回は二幕で今回は一幕のみなので、少し物語がきゅっと締まっています。3年たった今だからこそできる「WORLD」があると思うので、作品の世界を大事にしつつ、続投されているキャストの皆さんやベテランさんたちの胸を借りるつもりで、リュウジというキャラクターを力いっぱい表現できたらと思います。
――主人公・リュウジは、過去にトラウマを抱えている連続爆弾事件の主犯というダークヒーローです。
リュウジは悪者ではあるんですけど、その中に1つの正義を見いだし、葛藤してもがいていく姿が印象的で。リュウジは思ったことを即行動できるんですが、なかなか現代の若い子はそういうことってあんまりできないと思うんです。リュウジの場合、即行動に起こすが故に導いてしまった悪事もあるんですけど、その行動力や芯の強さは彼の魅力だと思います。リュウジのそういうところを尊敬して一緒に行動しているのがケンジ(河原田巧也)。ケンジから見て、リュウジはどこかカリスマ性のある人なんです。だからそういう存在でもありたいと思っています。
――爆破事件をきっかけに、リュウジたちは、中国マフィアや警察、週刊誌からも追われてしまいます。
そうですね。この作品では、リュウジたち爆弾魔、それを追いかける警察や中国マフィアなど、そのどれもがそれぞれの正義を提示しているんです。何が本当の正義か分からない中、男くさく、自分は自分の正義を貫くために戦う。だから、どの軍団も正義に対する意識をお互い高め合えたら、よりよい作品になると思います。
――役作りはどのようにされているのでしょうか?
実は、つい最近までほかの舞台をやっていたので、現時点でまだ数日しか稽古に参加していないんです。まだいろんな作り方ができるので、演出家の菅野臣太朗さんとディスカッションしながら、キャラクターの方向性を一緒に探していきたいです。周りのキャストの方はベテランさんやいろいろ経験されてきた方が多いので、4日間ぐらいしか稽古してないのに、もう通し稽古をしたんです。そのクオリティーにすごくびっくりしたので、ここから煮詰めていける時間が多いって考えると、すごくありがたいです。
――演出家の菅野臣太朗さんは、「WORLD」の2013年版も手掛けていらっしゃいます。
菅野さんは、僕たちのことをすごくよく見てくださっている方だと思います。1つひとつの心情を大事に見てくれていて、まだ自分でもふわってしてると思う部分は指摘されたりするので、すごく信頼できる演出家さんだなと。
――本作は男性キャストが多いですよね。稽古場の雰囲気はいかがですか?
仕事しに来ている感覚をすごく持っている方たちが集まっていると思います。僕はそういう空気が好きで、稽古場ではみんな変に馴れ合おうとしないんです。でも、国立周蔵役の金山一彦さんがとても明るい方で、現場の空気を温かくしてくださるんです。
――廣瀬さんは、舞台「ダイヤのA」「弱虫ペダル」シリーズなどアニメ原作の作品にも多数ご出演されていますが、やはりそういった作品とは空気感が違いますか?
全然違います。作品のテイストもあると思うんですが、シリアスなストーリーだからこそ出来上がった空気感だと思います。
――リュウジの相棒・ケンジを演じる河原田巧也さんとは、舞台「弱虫ペダル」シリーズでも何度か共演されていますね。
共演歴もありますし、彼がすごくお芝居が好きって知っていたので、一緒にやっていて楽しいです。芝居を楽しんでいるところが彼のいい部分なので、僕がそれを引き出したいです。それってお客さんにも伝わると思うんです。彼とはずっとペアで動いているので、お互いがお互いをより信頼しているほうが、より味や深みが出ると思います。
――稽古以外でも河原田さんと話すことはあるんですか?
よく話します。リュウジとケンジに近づく謎の女性・くるみ役の楠世蓮さんもそうですが、この3人で行動することが多いので、3人のコミュニケーションは大事だなって思います。僕から「せりふ合わせしようぜ」って声をかけたりするんですが、それがすごく楽にできる人たちなので、すごくやりやすいというか。かといって、意外とくだらないことも話したりするんです。でも、基本的に僕はそんなに世間話が得意なほうではないんです。たくさんいる中でお話するのもあまり得意じゃないので、どちらかといったら聞き手に回っていることが多くて。2~3人のときとかはそういう話もするんですけどね(笑)。
応援してくれる人たちが生きがいを見いだしてくれた
――本作は「日本を変える」がキーワードになっていますが、廣瀬さんが今変えたいこと、逆に自分自身が変わりたいところはありますか?
僕も「日本を変えたい」という気持ちが出てきたんです。僕の作品を見て、イベントやお手紙、ブログのコメントなどで「本当に救われました」って言ってくれる人が最近すごく多くて。自分なんかがそう思わせられることにすごくやりがいを感じるんです。だからこそ、応援してくれる周りの人たちを元気にすることができるなら、もっとたくさんの人を明るくできるんじゃないかなって。そのもっと先にあるのが「日本を変える」ことだと。日本には1億人、世界には60億人いるって考えると、まだまだ狭い世界で生きてるって感じるので、自分の芸能活動が人々を前向きにできるパワーを持っていたらうれしいです。
――ファンの方に支えられているんですね。
生きがいを見いだしてくれたのも応援してくれた人たちなんです。より一層お芝居を楽しんでやれるようになったというか。
――芸能活動というお話がありましたが、廣瀬さんは現在20代最後の年で、今のうちにやっておきたいことなどはありますか?
…これ、なしだったらつまらないですか?(笑)
――なしでも大丈夫ですよ!
いや~そういうのが本当にないんですよ。節目とかあまり意識しないタイプなので、「もうすぐ30歳だ、20代のうちにあれやっときたいな」っていうのが全くなくて。
――それはすごくうらやましいです。焦っちゃうこともあるじゃないですか(笑)。
本当ですか。焦らなくて大丈夫ですよ(笑)。
――なんだかそう言っていただいて、ファンの方の気持ちが少し分かった気がします。
いやいや、ありがとうございます。僕自身すごく楽観的でマイペースなんです。でも、僕は22歳のときにこのお仕事を始めて、昔はこんなにお仕事もなく、やっぱりもっと早くいろんなお仕事がしたいって思いがありました。でもそれは難しいって気づいたし、今こうしてお仕事をさせていただいているという現状には感謝せざるを得ないです。階段をエスカレーターみたいに上るのではなく、一歩一歩、1つひとつ経験して伸びていきたいっていうのが根づいているので、マイペースになれたんだと思います。
――そういう意味では、この作品もその大事な一歩ですよね。
そうですね。もちろん、どの作品も全力でやることはモットーなので、これをやりつつ、次への活力、次への一歩にしていきたいです。その一歩はどのくらいの大きさか分からないですが、より大きな一歩にできたらいいですね。
――では、最後に、これから舞台をご覧になる方やファンの方にメッセージや見どころなどをお願いします。
この作品はサスペンスで、主役がダークな過去にトラウマを抱えています。次の展開がどうなるかのハラハラドキドキ、最初から最後までの緊迫感やどんでん返しなど、お客さんも一緒にその世界にのめり込んだら、多分どっと疲れると思うんです。でも、「すごかった」と思わせるパワーはあると思うので、それを感じに来てほしいです。いろんなパズルのピースがスーッと一本の線につながっていく感覚を楽しんでください。
PROFILE
廣瀬智紀●ひろせ・ともき…1987年2月14日生まれ。埼玉県出身。
「弱虫ペダル」シリーズ、「私のホストちゃん」シリーズなど、舞台を中心にテレビや映画などで幅広く活躍。朗読劇「私の頭の中の消しゴム 8th letter」が、天王洲 銀河劇場にて2016年5月5日(木・祝)より上演される。
公式サイト(http://www.stardust.co.jp/section3/profile/hirosetomoki.html)
公式ブログ(http://ameblo.jp/tomoki-hirose/)
作品情報
舞台「WORLD beyond the destiny」
脚本・演出:菅野臣太朗
企画:古河聴(Ask)
製作:株式会社Ask
出演:廣瀬智紀、河原田巧也、楠世蓮、谷口賢志、平山佳延、石渡真修、田中稔彦、金子昇、右近良之、下村尊則、金山一彦 ほか
公演:2016年4月23日(土)~5月1日(日)
会場:全労済ホール/スペース・ゼロ
チケット:前売り7,000円/当日 7,500円
Amipro/CNプレイガイド:http://www.cnplayguide.com/amitike/
電話予約:0570-08-9999(前10・00から後6・00)
スペースゼロ チケットデスク:http://www.spacezero.co.jp/
公式サイト(http://www.world2016-ask.com/)
公式Twitter:@WORLD2016_Ask
●photo/関根和弘 text/金沢優里