国民的ヒットメーカー・池井戸潤の“戦慄の田園ミステリー”を、中村倫也主演でドラマ化した『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系 毎週木曜 午後9時~9時54分)。
スランプ気味のミステリ作家・三馬太郎(中村)は、亡き父の故郷である山間の小さな集落“ハヤブサ地区”に移住。都会を離れ、穏やかな生活をスタートしたはずだったが、地元の消防団に加入したことを機に連続放火や住民の不審死など怪事件に次々遭遇。ハヤブサ地区を守るべく真相を追ううち、集落の奥底にうごめく巨大な陰謀に突き当たる。
リレーインタビューの最後に登場するのは、ハヤブサ消防団の部長・山原賢作役の生瀬勝久さん。寡黙で人を寄せつけない雰囲気だが、実は面倒見がよく、太郎と共にハヤブサを揺るがす事件の真相究明に動くことに。そんな賢作を演じる生瀬さんに、撮影の思い出や作品の持つメッセージ性について聞きました。
◆先日クランクアップを迎えましたが、撮影はいかがでしたか?
舞台をやってる人が多いのもあって、居心地良かったですね。居酒屋で話すような内容を、ずっと話しているんですよ。あれやこれや話してるうちに1日が終わって、僕にとってはとても過ごしやすい現場でした。
◆演じる賢作さんはどう捉えて演じましたか?
前半のうちは寡黙で、どんな人なのかはっきり見えないキャラクターでしたよね。自分にとってはちょっと珍しい役なのかなと思いながら演じていました。
◆ただ、そんなところがカッコいい、いわゆる「イケおじ」と話題にもなりました。
ありがたいことに、賢作さんみたいな役柄をやると結構、「カッコいい」「シブい」と言ってもらえるんです(笑)。でもやっぱり、僕としては「面白い」のほうがうれしいかな。もっとカッコいい方はたくさんいらっしゃるし、こそばゆい感じはあります。
◆演じる上で心がけていたことはありますか?
僕は「面白い」が板に付いているし、割と感情が表に出やすいほうでもあるから、演じているとつい表情が豊かになるんです。油断すると、すぐに目を見開いちゃう(笑)。あまり感情豊かにすると、見ている人がすぐ賢作さんの気持ちが分かっちゃうし、それは彼らしくもないから。いかに感情を抑えるかというのは心掛けていました。
◆太郎役の中村倫也さんとの共演はいかがでしたか?
これまでにも一緒の作品は出ているんですけど、1回か2回すれ違ったぐらいで、実際にお芝居を交わしたことがなかったんですね。やってみて感じたのは、独特な人だなと。倫也君自身も独特ですし、お芝居の仕方も独特なところがある。希有な俳優さんだと思います。
◆太郎と中村さんに通じるところはありますか?
倫也君のフィルターを通している以上、どこかしらはあると思います。倫也君は年齢的にも気力や体力も充実しているし、感受性も豊かで。太郎もやっぱり、そんなところがありますからね。ただ、それがうまくなじんで、せりふ回しも自然と「太郎ってこういう人だよね」と思わせるものになっていて。生きた人間になっているなと感じました。
◆消防団メンバーの中でも、同級生で犬猿の仲の分団長・宮原郁夫(橋本じゅん)は賢作にとって大きな存在ですが、2人を見て何か思うところはありますか?
僕にはああいう宮原さんみたいな関係の長年の友達、ライバルみたいなのがいませんからね。もしいたら…、面倒くさいだろうなって思います(笑)。
◆ご自身は消防団の活動に興味はありますか?
勧誘されても、逃げるでしょうね。何とかしてやらない方向に(笑)。というのも、この撮影に入るまで知らなかったのですが、お話を聞いたら本当に大変なんですよ。何しろ火事の現場に行くわけですし、人を担ぐこともあったりするから、体力がないとやっていけないなと思って。近所の消防士さんがなんで毎日あんなに走ってるのか、分かりました(笑)。
◆いろんな人に消防団のことを知ってもらうという点でも、意義のある作品ですよね。
そうですね。池井戸先生とも、消防団をテーマにしたドラマってそんなにないだろうし、どうやって成り立っているかを知ってもらうにはいいのかなという話になりました。体力的にも大変ですし、自分の時間をかなり使うことになるから、ロケ先でお世話になった消防団の方に話を聞いても、人手が足りなくて困っているとおっしゃっていたので。そう言えば、僕も兵庫県の村みたいなところで幼少期を過ごしたので、うっすら消防団の記憶はあるんですよ。
◆どんな記憶でしょうか?
年に一度お祭りがあって、ちっちゃい山車、だんじりって呼ばれてたんですけど、綱がつながれていて、それをみんなで引くんですね。僕はそれがすごく好きだったんですけど、小学生のとき、だんじりの近くにいたら転んじゃって、ひかれそうになったんです。その時助けてくれたのが、「消」の字が入ったはっぴを着た人で。たぶん、消防団の方ですよね。火事のときだけじゃなく、普段からみんなのことを守るという意味でも、大事な人たちなんだなと感じました。
◆頼まれたら生瀬さんも押し切られて、消防団に入るかもしれませんね。
ずっとあそこに住み続けていたら、入っちゃうかもしれないですね。ある一定の年齢になると青年団みたいな感じで、村の自治会的な仕事をするのが当たり前な地域でしたし。今の自分じゃ考えられないけど、ああいうところで就職して暮らし続けていたら、僕も賢作みたいになっていたかもしれません(笑)。
SPECIAL TOPIC
Q.生瀬さんが注目している、または推しのキャラクターは?
A.(満島)真之介君ですね。世代が近い人、おじさんばかりの場だと、時にはいらだつこともあると思うんですよ。でも若いと、ある種「しょうがねえや」っていろんなことが許される、人間関係のいい緩衝材になるんですね。勘介という役柄だけでなく、真之介君もまさにそういう存在なんですよ。お調子者だし、元気だし、彼がいるおかげでみんなが楽しく過ごせていたなって。ああいう存在はいいなと思います。
PROFILE
生瀬勝久
●なませ・かつひさ…1960年10月13日生まれ。兵庫県出身。O型。近作に連ドラ『帰ってきたぞよ!コタローは1人暮らし』『リバーサルオーケストラ』、映画「水は海に向かって流れる」など。現在、『それって!?実際どうなの課』(日本テレビ系)に出演中。映画「BAD LANDS バッド・ランズ」が9月29日(金)、「法廷遊戯」が11月10日(金)公開。10月スタートの日曜劇場『下剋上球児』(TBS系)に、野球部監督・横田宗典役で出演。
番組情報
木曜ドラマ『ハヤブサ消防団』最終回
テレビ朝日系
2023年9月14日(木)午後9時~9時54分
公式HP:https://www.tv-asahi.co.jp/hayabusa-syobodan/
●text/小山智久