「温泉むすめ」が飯坂温泉でイベントを開催、リハーサルに潜入して分かったプロの動き方とイベントを作る難しさ

特集・インタビュー
2023年10月06日
温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2

地域活性化プロジェクト「温泉むすめ」のミニライブ&トークイベントが、2023916日に福島・パルセいいざかにて開催された。出演者は飯坂真尋役・吉岡茉祐、人吉青井役・青山吉能、かみのやま庵役・進藤あまね、伊香保葉凪役・茜屋日海夏。MCは天津の向清太郎が務めた。本稿では、リハーサルを含めた本イベント第一部の模様を中心にレポートする。

本番だけでは成立しないプロフェッショナルたちの動き方

東京から新幹線で約1時間30分。到着したのは福島駅だ。そこから車で約20分。見えてきたのは、パルセいいざかだ。温泉街からも程近い場所にある本会場では、2023916日に地域活性化プロジェクト「温泉むすめ」のミニライブ&トークイベントが行われる。前日の夜には出演者たちが同会場に集結し、ライブパートのリハーサルを行っていた。

リハーサルでは進行の確認をしながら、それぞれがライブで披露する楽曲を歌唱していく。「あまね、もう一歩右だね」。長く「温泉むすめ」の楽曲に関わる振付担当の先生が、各出演者にアドバイスをする。本番までは都内スタジオでのレッスンだったため、会場とは広さが全く違う。そのため、微調整も必要となるが、出演者たちはその場ですぐに対応していた。

茜屋は舞台から出るタイミングを丁寧にチェック。吉岡はオケ(伴奏音源)の音量調整をお願いし、何故か高速サイドステップで舞台上を移動していた青山も、歌唱パートは真剣そのもので、歌い出しなどをしっかりと確認していた。ライブパートの確認ができるのはイベントスケジュールの都合上、ゲネプロとこの日だけ。できるだけ漏れがないよう、夜遅くまでリハーサルは続いた。

トークパートと朗読劇のリハーサルは翌日の朝から、MCの天津・向、構成作家を交えて行われた。用意されていた台本から、進行上難しい動きなどを場当たりで洗い出し、キャストとスタッフが相談して問題をひとつずつ解決していく。音響スタッフのBGMSEのチェック、映像スタッフはスライドを出すタイミングを確認。それぞれが少しでもズレると、演出が台無しになってしまうと言っても過言ではない。

限られた時間でプロフェッショナルたちがイベントを少しでもよくしようと、意見をぶつけ合う。すべては「よりよいイベントにするため」。昼の部が開場する1時間前までリハーサルや進行チェックは行われた。

温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2

リハーサルでは体感できない歓声と光

そうして迎えた本番。昨年も本会場でイベントを行った吉岡だが、今回は声出しできるようになったということで、声高らかにコール&レスポンスを行う。青山と茜屋は「温泉むすめ」イベントには久しぶりの登壇で、進藤は2月に「温泉むすめ」キャストになったばかりのため、今回がイベント初参加となる。リハーサルでは真剣な表情で臨んでいた出演者たちだったが本番ではたくさんの笑顔を見せ、イベントを心から楽しんでいる様子だった。

「温泉むすめ」のイベントは、地域活性化プロジェクトにふさわしい企画を実施するのが特徴。今回は、飯坂真尋が先生となり福島県の方言をレクチャーしたほか、福島県の名産・名物を紹介したり、食べたりするバラエティ企画などが行われた。

温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2
温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2

4人の温泉むすめが織りなす朗読劇、福島市飯坂町のマスコットキャラクター・ゆげおと共に告知を行ったあとは、ライブパートへ。トップバッターの青山と進藤は「未来イマジネーション」を歌唱。背中を洗うポーズなどが特徴的な本曲を、パフォーマンスを交えながら2人が歌い上げる。続く茜屋は、伊香保葉凪のソロ曲「わたしオトナ化プラン♪」を歌唱。観客のいなかったリハーサルとは違い、本番ではペンライトによって会場の景色はピンク一色に。それを見て、茜屋はうれしそうな表情を浮かべていた。

温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2
温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2

そのバトンを受け取った吉岡は、飯坂真尋のソロ曲「アッツイ!熱いぜ!!」を熱唱。まっすぐな歌声を会場の後ろまで響かせ、振り付けではキレキレの正拳突きを決める。曲中でリハーサルではできなかったコール&レスポンスを楽しそうに行うと、客席のボルテージは急上昇。会場の気温が23度くらい上がったように感じるほど熱気に包まれた。

温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2

茜屋・進藤のMC後、青山と吉岡が登壇。2人で奏でたのは「追伸、ありがとう」だ。本曲は、震災復興支援ソングとして作成された、メッセージ性が強い楽曲。それもあってこれまでの歌唱イベントでも、なかなか歌う機会がなかったのだという。ライブならではのエモーショナルな空間が生まれていた。

本公演の特別ミニアニメが放映されたあとは、茜屋と進藤が登場。歌う楽曲が「Petit Etoile」とコールされた瞬間、客席からは驚きと喜びの歓声が挙がった。本曲にピッタリなかわいい振り付けを笑顔で披露する2人。楽曲の終盤で大きなハートマークを作ると、再び大きな歓声が会場にこだました。

温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2

「また来たい!」と思える温泉地

ライブ本編のラストナンバーは「咲かせよ 沸かせよ バンバンBURN!」。裏打ちのリズムが心地よく、ライブ映えする楽曲がぽか旦那・ぽか女将(「温泉むすめ」を応援する方々の呼称)たちの心を温泉のように熱くさせる。最後のコケるようなパフォーマンスは見ているだけで何だか心がホッとして、非常に心地よかった。

アンコールに応えてTシャツ姿で登場した出演者たちは、「青春サイダー」を歌唱。タオルを振り回すパフォーマンスでは、会場と心が一体となる。「温泉むすめ」を代表する楽曲のひとつでイベントを締めくくった。

温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2
温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2
温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2

第一部・第二部が終幕し、福島県を後にする出演者たち。福島駅までの送迎バスに乗り込むと、本イベントに携わっていた飯坂温泉観光協会の方々と地元の学生たちが、出演者たちをお見送りする。みんなバスの姿が見えなくなるまで、手を振っていた。温泉地に脈々と受け継がれる「おもてなし」の精神。いろいろなサービスを充実させることも大切なことだが、こういった温かい対応が「温泉地にまた行きたいな」という後押しになる。飯坂温泉の温泉むすめを演じる吉岡をはじめ、出演者一同は感謝と共に「また来たい!」と言葉に出していた。

ひとつのイベントを作り上げるだけで、出演者はもちろん、裏方を含めてたくさんのプロフェッショナルが関わる。そして限られた時間で本番をよりよいものにするため、試行錯誤を繰り返す。改めて、イベントを作るのも簡単ではないということがよく分かった。加えて「温泉むすめ」では、地元の協力や理解も不可欠と言って過言ではない。しかし、調和したときには大きな感動が生まれる。全国各地の温泉地を盛り上げるべく活動する「温泉むすめ」。本イベントは、そんなコンテンツの真髄を感じられるものだった。

温泉むすめ ミニライブ&トークイベント in 飯坂温泉 vol.2

 

●text/M.TOKU

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