『下剋上球児』新井順子Pが語るリアリティーへのこだわりと撮影の舞台裏

特集・インタビュー
2023年10月15日
『下剋上球児』第1話©TBS/撮影:ENO

10月15日(日)にスタートする鈴木亮平さん主演の日曜劇場『下剋上球児』(TBS系 毎週日曜 午後9時~9時54分/初回25分拡大)の初回放送を前に、新井順子プロデューサーにインタビュー。鈴木さんの起用理由や撮影秘話などを聞きました。

本作は高校野球を通して、現代社会の教育や地域、家族が抱える問題やさまざまな愛を描く、ドリームヒューマンエンターテインメント。「下剋上球児」(カンゼン/菊地高弘 著)にインスピレーションを受け企画され、登場する人物・学校・団体名・あらすじは全てフィクションとなる。

◆鈴木亮平さんを起用した理由を教えてください。

鈴木さんに決めた理由は野球部の監督っぽいなと思ったからです。南雲先生のイメージをこんな先生がいたらいいなというキャラクターで考えていて。それでいて野球もやっているけど、それを隠しているという設定もあったので、体格的にもぴったりだなと。鈴木さんの優しい感じが今、“仏の南雲”と言われていて、のちに“鬼の南雲”に代わっていくのですが、その感じが出せそうだなというのもあってお願いしました。勝手に野球やれるのかなと思っていたら、ご本人いわくインドア派らしいです。

◆現場でどのようなやりとりをして南雲を作り上げていきましたか?

鈴木さんは今現在も野球の練習をされているんです。撮休の日には野球指導のGXAスカイホークスさんで練習したり、ある日買ったネットを担いで持って来て、控え室に立てたかと思うと、柔らかいボールでノックしていたり。さらには、犬塚家のセットにネットがあるのですが、いないなと思ったらそこで練習をされていて。この間もグラウンドでの撮影が終わって、1時間ぐらいノックしたりキャッチングしたり1人で練習されていたんです。野球面については鈴木さんの「やっている人の動きを習得したい」という思いから猛特訓で作られています。

南雲というキャラクターについては、3年間を描くので準備稿が出来た段階から、1年生の時はこれぐらい、2年生はこれぐらいと話して、台本が出来たらさらに意見交換をして作っています。現場でも鈴木さんから「ちょっと今のは違った気がするので、もう1回やらせてください」と言われて撮り直すこともあります。

◆ドラマファンの中でも新井さんと塚原あゆ子さんのタッグが注目されていますがいかがですか?

今回、私は初めての日曜劇場で、塚原さんは4本目になると思うのですが、視聴者の方の層が子供から年配の方までの幅広い世代の方にいかに見てもらえるかだと思うんです。今回は題材が野球で興味がない人にとってはそそられないジャンルなのかなと。ですが、今年はWBCもあったので、野球が盛り上がってる中、それでも点が入ったことは分かっても、チェンジアップだったり、送りバントだとか、ルールになると「ん?」となると思うんです。なので、ただただ野球を見せるだけではなく、難しいですがそこにみんなの気持ちが乗っかって応援したくなるように描く必要があるなと思っています。

◆球児キャストは、どのタイミングでオーディションで決めようと思われましたか?オーディション秘話も教えてください。

この企画を出した時点からオーディションだなと思っていました。特に1年生の球児キャストは大会の決勝まで行ってしまうので、それなりに野球がうまい人を集めないと説得力が出ないなと思い、昨年の12月ぐらいから募集しました。

オーディションではグラウンドで50メートル走など、こういう実技をやろうと決めて、いざ当日を迎えたときにGXAの監修の先生から「こんなにやるところないよ」と言われたこともありました。秘話でいうと、U-NEXTで配信した映像に全て入っていると思いますが、我々は会場で淡々とオーディションをやっていましたが、その裏ではいろんなことがきっと起こっていたと思います。

◆球児キャストの方たちとは現場でどんなコミュニケーションを取られていますか?

もちろん野球のことを質問することもそうですが、野球ではないところの芝居についても話をしていて。3年間を描くので、成長していくじゃないですか。そんな中、6話を撮っている時に、1話と全く同じ顔をしていたので、どうやって段階をつけて成長していく過程を見せるかとか、表情が同じだよとか、もうちょっと笑ってもいいんじゃないかとかは伝えています。

球児キャストの方たちをオーディションから見ているので、学校の先生の気分です(笑)。彼らは合宿もしていたり、練習会も何度もやってもらって。今回、あえて間を空けてオーディションをやったんです。ほかのオーディションはさまざまな過程をぎゅっと詰めてやっていると思うのですが、この1か月でどう変わるか、どこまで本気で野球をやるつもりなのかなどを探っていたので期間を空けたんです。なので、練習会を開いたときに来るのか来ないのかとか、来た時にどのぐらいやる気があるのかとか、控え室の感じも見させてもらって。「僕、別に努力してませんから」と見せかける子に限って裏でとても練習していたりするじゃないですか(笑)。待ち時間にノックをしている人もいましたし、そういう姿を見ると胸が熱くなりました。

今回、募集条件が野球をやっていることだったのですが、この作品のために練習を始めましたの方も、野球経験があると見なしていたんです。その段階で野球があんまりできない役があったので、彼らには言っていなかったですが、そういう人も必要で。内容を知らない彼らは、合格と聞いたとき、なんで受かったんだろうと思った人もいたと思います。

彼らのここで埋もれてなるものかという熱量がすごいです。もちろん活躍してほしいので、切磋琢磨してほしいですし、U-NEXTのオーディション番組を見た方ならわかると思いますが、今の彼らの顔つきは全然違っています。それはきっと放送が始まって、皆さんからのリアクションが彼らに届いたときに、さらに変わっていくと思うので、それが彼らにとっていい方向に働けばいいなと思っています。

鈴木さんと黒木(華)さんと球児たちでバーベキューをしたようで。鈴木さんから生徒にどんどん近づいていって、「こういう芝居がこうだからこうしよう」と話したり、黒木さんも「球児たちが!」と先生のように注意したり(笑)。本当の部活のようです。

◆野球シーンの撮影裏話を教えてください。

球児は本当に投げていたりするので大変だと思います。特に、ピッチャーの中沢(元紀)君は本当に投げることが多くて。よく野球で、“ピッチャー舐めキャッチャー”みたいな画角があると思うのですが、この作品でもやっていて、実際に本人が投げないと成立しないんです。なのでストライクのシーンだったらストライク、ボールのシーンだったらボール、カーブ、スライダーと投げ込まないといけない上に、それを欲しいところに入れなきゃいけないというプレッシャーとの戦いもあって精神的に大変だろうなと思います。結構役とのメンタルがクロスしているのかなと。野球シーンはこだわっていて、できないならできない役にしています。なので、3年生、2年生のキャストには初心者も入れていて、そのリアリティーは大事にしています。

あと8、9月は本当に暑かったです。クランクインが8月だったのですが本当に暑くて、塩あめやスポーツ飲料を配りながら、誰も倒れることなく無事にここまで来ています。ここからは寒くなってくるので、けがとの戦いになるのかなと思います。

『下剋上球児』第1話©TBS/撮影:Len

◆今作でこだわったキュンポイントがあれば教えてください。

球児の頑張る姿にキュンみたいなところはあると思います。ただそれはここですよっていうところはないので、キャラクターたちのすてきな表情にキュンしてほしいです。実は自然な彼らの表情は全て本番中ではなくて、待っている間とかにカメラを回したものなんです。待っている間に、何かしゃべっていたりするじゃないですか。それを遠くからこっそりと撮っていたり。しゃべっている内容も、たまに野球のことだったりするので、そのまま頂くことも(笑)。

あとは、ここでこういうことをやってほしいとガチガチに決めずに、本人たちが決めてやっていたりすると、半分本人、半分役になるんですが、自然ないい表情を拾えるんです。なので、「カット」と言った瞬間だったり、「よーい!」の時の表情を使っていたり。本番だと表情が硬くなってしまって顔つきが変わってしまうので、意外とテストの映像を使っていたりもします。それが塚原監督ならでの演出ですね。

◆テストから使うというのは、今回ならではなのでしょうか?

最近の作品はずっとそうですね。塚原監督がテストの方がいい表情が撮れることもあるから、すべて収録したいと言われていて。なので、ご飯のシーンもテストのときから全てのカメラが回っているから、食べたふりができないんです(笑)。

◆こんな○○さんが見たいと思ってキャスティングされた方はいらっしゃいますか?

小日向(文世)さんはキャスティングをした時に、なんとなく地主でお金持ちでみたいなことは考えていたのですが、どういうキャラクターにしようか悩んでいたんです。脚本の奥寺(佐渡子)さんと「小日向さんが七変化する舞台がある」と聞いて見に行って、生まれたのが犬塚のキャラクター。早口で、ちょっとクレイジーな感じ。役作りなのか、普段からとても早口になっている印象があります。普通のせりふも笑えますし、生瀬(勝久)さんとの掛け合いが面白くなっていると思います。

井川(遥)さんは都会のスタイリッシュな女性役が多い印象だったので、本作では東京から田舎に戻ってきて、いいお母さんみたいな感じにしようと。それに加えて、東京に出た時のパリッと感の対比をうまく作っていこうと考えました。あと標準語にするか、三重弁にするか悩んだのですが、オール三重弁にしてもらったのでご本人はすごく大変だと思います。

黒木さんは、オファーする時にもお会いして、決まってからもお会いして、何度も会わせてもらいました。奥寺さんに普段の彼女を見てもらって、どういう風な山住にしていくか決めて。黒木さんはおしとやかなイメージがありましたが、演劇をずっとやられていて大きな声が出せるので、パワフルな女性にしてみようと。ただ暑苦しくなくて、押し付けがましくない先生にしようと思っています。

◆ドラマ内では『SPY×FAMILY』などを手掛けたCloverWorks制作のアニメーションも使われています。大きな挑戦だと思うのですが、その狙いを教えてください。

これまでの野球ドラマでやっていないことってなんだろうとなったときに、「アニメーションだ!」と塚原監督の発案がありました。スーパースローで撮影できるカメラを使って撮っている中で、塚原監督が「硬式球がバットに当たったら、ぐにゃっとならないの?」と気づいて。アニメではバットに球が当たる時、周りに線が入ったり、ビューンなど書かれていて分かりやすいですが、実写だとコンって当たるだけ。それだけだと盛り上がりに欠けるなと思い…、逆に実写で球をぐにゃっとさせてしまうとウソすぎるので、走るときの足元だったり、バットに当たる球だったり、そういう実写では伝わりづらい表現をアニメーションにして、エモさを出したいという監督のこだわりです。1話分のアニメーションを制作するのに2か月ぐらいかかるみたいで…。相当手が込んでいて見ごたえ十分です!

私はまだ野球に詳しい方なのですが、塚原監督はあまり詳しくなく、現場で野球経験のある球児キャストに「どうすればいいと思う?」「こういう時はどういうことをする?」と質問をして、どういう練習をすべきかをみんなで話し合っています。そこは、野球経験のある球児キャストたちの意見と、野球に疎い監督目線の折り合いのいいところを見つけて、野球を知らない人でも、知っている人で見やすい、ヒューマンものにしようと作っています。

先生がある日やって来て、「甲子園目指すぞ!」という単純なストーリーだと深みが出ないので2話から思いがけない展開の構成にしました。物語にうねりを出していて、そこが王道の日曜劇場とは一味違う味わいになっていると思います。塚原監督といえばサスペンスが秀逸なので、想像以上にサスペンス要素もあり、ちょっとした考察もして楽しんで頂きたいです。

番組情報

日曜劇場『下剋上球児』
TBS系
2023年10月15日(日)スタート
毎週日曜 午後9時~9時54分
※初回25分拡大 午後9時~10時19分

<キャスト>
鈴木亮平、黒木華、井川遥、生瀬勝久、松平健、小泉孝太郎、小日向文世ほか

<スタッフ>
原案:「下剋上球児」(カンゼン/菊地高弘 著)
製作:TBSスパークル、TBS
脚本:奥寺佐渡子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子、山室大輔、濱野大輝
編成:佐藤美紀、黎景怡、広瀬泰斗

番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gekokujo_kyuji_tbs/
番組公式X(旧Twitter):@gekokujo_kyuji
番組公式Instagram:@gekokujo_kyuji
番組公式TikTok:@gekokujyo_tbs

©TBS/撮影:ENO
©TBS/撮影:Len

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