中村七之助、親友・松本潤との大河ドラマ共演に感慨「父親がこの姿を見たら喜ぶだろうな」『どうする家康』

特集・インタビュー
2023年10月22日
『どうする家康』中村七之助©NHK

現在放送の大河ドラマ第62作は、誰もが知る歴史上の有名人・徳川家康の生涯を脚本家・古沢良太が新たな視点で描く『どうする家康』。松本潤演じる弱き少年・家康が、乱世を終わらせた奇跡と希望の物語だ。

そんな本作で、“家康が最も戦いたくなかった男”石田三成役を演じるのは、プライベートでも松本さんと親交の深い中村七之助さん。第35回での初登場以降、そのミステリアスな唯一無二のたたずまいや、本作ならではと言える家康との熱い関係性が話題を呼んでいる。

今回はそんな三成役の七之助さんに、三成を演じる上で心がけていたことや演じるに当たって事前に取り組まれたこと、今後の見どころなどを聞きました。座長としての松本さんの印象や過去のエピソード、親友としての思いも…。


◆クランクインをした時の心情は?

テレビドラマでは順撮りするということがあまりないのですが、今回は最初に撮ったのが三成の登場シーンである(第35回の)家康と星を眺めるシーンだったので、その後もとてもやりやすかったです。また、今まで三成と家康が親交を深めたり、互いを頼る姿というのはこれまであまり描かれたことがなかったと思うので、そういう意味でも新鮮な気持ちで臨めました。

◆本作で三成を演じるに当たって、どのようなことを心掛けていましたか?

これまでの三成は、家康を尊敬し、共に豊臣政権を盛り上げていこうという心意気を軸に作り上げていきました。知略をめぐらせるような、いわゆる三成らしい姿はもちろん、家康への感情の変化という部分を色濃く出せたらいいなと。また、三成は殿下(豊臣秀吉/ムロツヨシ)のことを怖いほどに崇拝しており、殿下の考え方が絶対の正義だと思っているので、それに反する者が出てくればどんなに信頼していた相手でさえも“悪”と捉えてしまう。そんな彼の真っすぐさ故の危うさというのも表現しているつもりです。

『どうする家康』中村七之助©NHK

◆そんな三成の心情に共感できる部分はありましたか?

私自身、父のことを大尊敬しておりますので、彼の殿下に対する感情は共感できる部分があるかなと。殿下という大きな存在がいなくなってしまったことで、自分がどうにかしなくてはいけないというプレッシャーから視野が狭まり、周囲を拒絶したことが、家康との対立を招いたのだと思っています。

◆今回、三成を演じるに当たって事前に準備されたことはありますか?

今回演じさせていただいた三成は、これまでドラマなどで見てきた三成像とは少し違っていましたので、資料などを拝読しながらどう演じていこうかと思案していた時に滋賀に伺い、「三成タクシー」というものを知りまして。車体には現代風の三成のイラストが描かれていて、三成ゆかりの地を案内していただけるのですが、その旅を通し、地元の方々の三成に対する思いを感じることができました。三成は一般的に悪役というイメージがありますが、地元の方々はそうでなく、彼のことをとても愛しているんです。この時代までこういうふうに思われるというのは、きっと熱い思いがあり、民のことを考えていた武将だったのだろうなと感じられ、クランクイン前に行って良かったなと思いました。

◆主演の松本さんとは今回がドラマ初共演となりましたが、撮影を終えた今どのような思いでしょうか。

個人的な話にはなりますが、僕が16~17歳の時に父親が『元禄繚乱』という大河ドラマで主演を務めており、私もその息子役で出演させていただいて。毎週月曜日にNHKでリハーサルがあったのですが、松本も月曜日はNHKで音楽番組の収録があり、いつも学校から一緒にバスに乗って通っていたんです。それから約24年が経ち、彼が大河ドラマの主演を務め、私が三成という大役を演じさせていただく。神様はきっとここまで待っていたんじゃないかな、と思うようなめぐり合わせですよね。NHKに向かう道中の景色や、スタジオで家康の扮装をしている松本の姿を見ると、これは本当にすごいことだな、としみじみ感じて。また、彼は私の父親とも親しく、尊敬してくれていましたので、父親がこの姿を見たら喜ぶだろうな、ということも考えながら撮影に臨んでいました。

『どうする家康』左から)松本潤、中村七之助©NHK

◆七之助さんが感じられた、座長・松本さんの印象は?

松本はコンサートの演出を手掛けていたり、元々指揮を取るのがとてもうまいですが、この現場でもチームの士気を上げたり、どのように物語を作っていこうかということを常に考えているなと。自身のメークをはじめ、常にどの辺りでどう見せていきたいかということを自分なりに思案し、スタッフの皆さんと話し、最善のものを提示しようという姿を目の当たりにして、“役者・松本潤”を感じました。どこか私とも共通する部分があり、真っすぐ突き進むが故に周囲と衝突してしまうこともあるのかなと思うのですが、それも作品をより素晴らしいものにするという情熱からくるものでしょうし、彼は本当にすごい座長だと思います。

◆そんな役者としての松本さんと初共演して感じたことはありますか?

松本も40歳になり、いろいろな経験を重ねてきて、本当に大きくなったなと。彼は役者である自分にあまり自信がないと言っていますが、僕からすると立派ないち役者。この作品を通してひと皮もふた皮もむけたと思うので、今後もいろんなことにチャレンジしてほしいですし、この成長に驚かれているファンの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は僕、彼が若いころに舞台に出演していた時、舞台上でせりふをかんでしまったことを今でも覚えていて。というのも、それをお客さまが笑ったのが許せなかったんです。相当変なかみ方をしたのであればわかるのですが、決してそうではなく、それは“松本潤がせりふをかんだ!”という類の笑いで。つまりそれは役としての彼を見ているわけでなく、作品を見ているわけでもなく、そこに松本自身を見ていたということ。そういった苦しさも乗り越え、彼は自分の力でここまで切り拓いてきたんです。今となってはさまざまな華々しい経歴を持っていますが、松本がそういう根性を軸に生きてきた人間ということが『どうする家康』には染みでているように感じていて、これから先の展開もとても楽しみです。

『どうする家康』中村七之助©NHK

◆最後に、今後の見どころを教えてください。

『どうする家康』では関ヶ原の戦いが起こらないのかな、と思っていた方もいたかもしれないのですが、第40回ではあんなに信頼していた家康とついに袂をわかつこととなりました。三成と家康は旗印に込められた意味も近いですし、戦なき世を目指すという思想も同じ2人がどうして未曽有の大戦に臨まなくてはならなかったのか、という部分は今後の見どころになっていくと思います。また、隠居した三成が今後どう兵を挙げていくか、というところにもぜひ注目ください。

PROFILE

中村七之助
●なかむら・しちのすけ…1983年5月18日生まれ。東京都出身。O型。11月1日(水)より「平成中村座 小倉城公演」に、12月3日(日)より「十二月大歌舞伎」に出演。

●text/片岡聡恵

番組情報

『どうする家康』
NHK総合ほか
毎週日曜 午後8時~8時45分ほか

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