『下剋上球児』塚原あゆ子監督が明かす鈴木亮平と球児キャストの関係性「部活のような積み重ねが画面にあふれている」

特集・インタビュー
2023年10月29日
『下剋上球児』第3話©TBS/撮影:ENO

鈴木亮平さん主演の日曜劇場『下剋上球児』(TBS系 毎週日曜 午後9時~9時54分)の第3話(10月29日放送)を前に、塚原あゆ子監督にインタビュー。撮影で心掛けていることや第3話の見どころなどを聞きました。

本作は高校野球を通して、現代社会の教育や地域、家族が抱える問題やさまざまな愛を描く、ドリームヒューマンエンターテインメント。「下剋上球児」(カンゼン/菊地高弘 著)にインスピレーションを受け企画され、登場する人物・学校・団体名・あらすじは全てフィクションとなる。

第2話のラストでは「教員免許を持たずに高校教師をしていた」という衝撃の事実を山住(黒木華)に打ち明けた南雲(鈴木亮平)。おまけに南雲は年度いっぱいで教師を辞めるつもりで、野球部の監督もこれ以上は続けられないという。

そんな中、バッティングセンターで地元の会社員に絡まれてしまった越山高校の生徒たち。野球部主将・日沖(菅生新樹)の弟で南雲のクラスの生徒である壮磨(小林虎之介)が相手の挑発に乗ったことで、不可抗力ながら暴力事件へと発展してしまう。


◆鈴木さんの現場での様子はいかがですか?

朝、現場に入ると、既に鈴木さんがノックして待っていることがあって、本当に学校の先生というか、監督という感じです(笑)。南雲先生には彼なりの人生の欠落点や小ずるいところがあり、完璧な人間では決してなく生っぽい人間なんですけど、それを大人として、その罪の深さをどういうふうに自分で償い、どういう大人の背中を見せていくかみたいなところを描いていきたいと思う時に、まさに毎日背中を見せてくれています。私が球児たちに向かって、「こういうシーンにしたい」と言っている時に、「俺はこうだったよ」と鈴木さんの目線で話してくださったりするので、球児たちは「こういうふうに読めばいいのか」と学んでいますね。

少しでもつまずくと傷がつくと言われた時代があって、今はむしろそれよりもその先で、“自分も許せ、他者も許せ”と自己肯定感をお互い高めていく生き方みたいなことが問われる中で、鈴木さんもおっちょこちょいなところがあるので、そういうところも含めて、見せてもらっているなっていう感じです。

◆印象的だった現場でのエピソードはありますか?

南雲先生と球児たちが本当の部活の先生と球児という関係性に見えてきました。3年間の話なので、これから球児たちが2代下まで入ってくるんです。第1話の冒頭シーンには、現時点での1年生たちと、そこにこれから入ってくる2代下までいて。そのシーンの撮影の時点で出来上がっている野球部に、次の1年生たちはとても緊張しながら入ってきて、温まっていない関係の中でプレーをやらなくちゃいけない。そんな時に、鈴木さんが名前や役名をみんなで言い合ったりする環境を作っていました。休憩に入ると、鈴木さんが「よーし、ノックするぞ!」とまだなじみきれていないキャストの名前を呼んでノックしてくださっていたり。きっとその環境があるだけで、2代下の球児たちは、どれだけ助かったろうなと。今はそのときからだいぶ時間もたって、レギュラーとして現場に入っているので、一緒にお芝居をやっていますけど、こういう部活のような積み重ねが画面にあふれているなと思います。球児たちは鈴木さんに緊張するじゃないですか。でも、そうやってコミュニケーションを取ってくださることで、知った顔の監督という大人に見えてきたんだと思います。

『下剋上球児』第3話©TBS/撮影:Len

◆キャストが多くいる中で、球児一人一人にも愛着が湧くような描き方になっていると思うのですが、心掛けていることはありますか?

野球というスポーツの特性上、どうしてもいっぺんにたくさんのキャラクターが登場することになります。なので、こういう作品の時は、徐々にそれぞれを覚えてもらえるように気をつけていて、初回ではあえて球児たちのワンショットは少なめにしています。なので、球児たちと鈴木さんという、自分なりの線引きの撮り方をして、2話では控えになった野原君(奥野壮)とか、山住先生(黒木華)がスカウトしたがっている久我原君(橘優輝)はワンショットで抜いて、それ以外は翔(中沢元紀)と根室(兵頭功海)と分けて撮るようにして。位置をあえて外側にする台本にすることで、覚えやすかったりしないかなと計算してやっていますね。3話以降は、お許しいただいてガンガン寄っていく予定です(笑)。

南雲先生の過ちというのをまず押し出して、その後、その過ちに子供たちがどういうふうに向かっていくのか、さらに下剋上を果たすためのメンタル、自己肯定感を高めて、底辺だと言われたことに甘んじていてしょんぼりしてた子たちが、しょんぼりしないよってなっていくという彼らの成長物語。「月曜日、元気もらっていってください」というメッセージも含めて、毎日楽しいことはないけれども、明日楽しいと思えるような、元気をもらえるみたいな感じで。彼らが強くなっていく時にはどんどんワンショットを抜いていこうかなって思っています。

◆先生が生徒たちと向き合っていわゆる“解決屋さん”になるような作品が多い中、本作では人間ドラマがしっかりと描かれている感じがします。

先生が生徒たちの悩みを解決はしていくところもあります。2話で出てきた根室家のヤングケアラーといった事情、苦しさみたいなものを先生がくみ取っていくようなことは、3話以降ももちろんあって。部活もので、そこにはもちろん言及していきますが、主人公にも起承転結をつけています。

◆そういったところを描かれるのは塚原さんとプロデューサーの新井順子さんがタッグを組んだ作品ならではなのかなと。

奥寺(佐渡子)さんの脚本もあるかもしれないです。『最愛』もそうでしたが、全体のキャラクターが止まらず動いていくんです。本当に奥寺さんの世界って優しくて、ご家族で手に汗握りながらも感涙できる内容になってくと思います。本当に最高の台本です。甲子園を目指していくので、わーっていう盛り上がりのある野球シーンはあるんですけど、それの面白さは、先生が球児たちのキャラクターを持ち上げることで、どんどん愛していけるようになるんです。

それだけではなく、小日向(文世)さんが演じる犬塚がなぜあそこまで頑張るのかとか、山住先生が女性には未開の地であった野球の監督に挑んでいく様も出てきて、性別じゃなくて、何か好きなスポーツを愛すること、好きな何かを愛した時に、アプローチっていろいろあるよねっていうことも出てくるし、それに向かっていく黒木さんがすごく素晴らしいです。そういう自分が好きなものを誇っていいみたいなことも伝えられたらなと。私はアニメも好きだし、漫画も好きだし、もちろんドラマも映画も好きですけど、それ以外のことが不得手に生きてきちゃっているけど、それ1個だけできてれば、自己肯定感を高く生きていける道があって。人それぞれ何か好きなことがあるじゃないですか。孫を愛すということが次の小日向さんのステージにうまく乗っかれるような方になっていて、理由があって回っていくんですよね。生瀬(勝久)さん演じる横田先生のキャラもあるべくしてあそこにあるし、非常に綿密に練られた本だなと思います。

◆原案で街全体が盛り上がる様子が描かれていますが、これは本作でも描かれますか?

3年生や2年生たちがどんどん就職していくんです。みんなそれぞれスキルを生かして、参加してきますので、ぜひ注目していてください。「あ、こいつはここ就職だったのか」とかも含めて楽しんでいただければ。そんな彼らが地域の中に溶け込みながら、野球部をどう応援していったのか。

彼らだけの夢ではなくなっていき、やがて大人の夢になっていくんです。プロ野球と高校野球の何が違うのか、2話の冒頭に「たかが部活」というせりふが出てきますが、確かにたかが部活ですが、学生たちにとってそこで過ごした時間は人生の忘れられない一部分になるんです。それは家族や地域の方といった大人も含めてなんですよね。それこそ「甲子園へ行くためにはいくらお金が必要で」という話もこれから出てきますが、応援をすることで元気になることがあるじゃないですか。野球、ラグビー、アイドルでも、推しを作る。誰かに夢中になることはなんて素晴らしいことなんだろうというのが話が進むにつれて出てきます。彼らの夏がきっかけで、みんなが夢中になって生きられる、そういう感じを出せたら。

◆最後に第3話の見どころを教えてください。

南雲先生の告白がどういう形で彼らの夏に影響していくのか。そして、聞かなくてもいいのに聞いてしまった山住先生がどういう状況になっていき、生徒たちにどういう背中を見せていくのか。それとはまた別で、開会式の映像が出ていますが、これから球児たちの暑い夏が始まりますので、第1回戦を楽しみに待っていただけたらなと思います。彼らは彼らなりに、ポンコツなりに、必死に練習していく様があり、視聴者の皆さんと共有する初めての夏。1回負けたら終わりという、彼らならではの感じ。日沖の代がそこで引退していくので、彼らを見送っていただければと思います。

『下剋上球児』第3話©TBS/撮影:ENO

PROFILE

塚原あゆ子
●つかはら・あゆこ…2005年に『夢で逢いましょう』で演出家デビュー。主な監督作品は『最愛』『着飾る恋には理由があって』『MIU404』『グランメゾン東京』ほか。

番組情報

日曜劇場『下剋上球児』
TBS系
毎週日曜 午後9時~9時54分

<キャスト>
鈴木亮平、黒木華、井川遥、生瀬勝久、松平健、小泉孝太郎、小日向文世ほか

<スタッフ>
原案:「下剋上球児」(カンゼン/菊地高弘 著)
製作:TBSスパークル、TBS
脚本:奥寺佐渡子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子、山室大輔、濱野大輝
編成:佐藤美紀、黎景怡、広瀬泰斗

番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gekokujo_kyuji_tbs/
番組公式X(旧Twitter):@gekokujo_kyuji
番組公式Instagram:@gekokujo_kyuji
番組公式TikTok:@gekokujyo_tbs

©TBS/撮影:ENO
©TBS/撮影:Len

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