4度の単発特番を経て、今年4月からレギュラー放送されている『ひらけ!パンドラの箱 アンタッチャブるTV』(カンテレ・フジテレビ系 毎週火曜 午後9時~9時54分)。世の中にあふれる「不思議」「危険」「謎」「残念」な事象を調査するという切り口、しかもそれをMCのアンタッチャブル(山崎弘也、柴田英嗣)自らも体当たりでロケを行うということで、異彩を放っている。
そんな同番組にて、新企画「地元のパンドラ調査」が10月31日(火)よりスタート。アンタッチャブルの2人が、地元民しか知らないような謎を現地調達&即調査するというこの企画。初回はGENERATIONSの数原龍友と元BiSHの加藤千尋(セントチヒロ・チッチ)を迎え、伊豆大島が舞台に。放送に先駆け、総合演出を手掛ける横田幸介氏が見どころや制作秘話を語ってくれた。
◆レギュラー化から半年がたちましたが、振り返っていかがでしたか?
レビュー評価の低い宿に泊まってみたり、カルロス・ゴーンの家に直撃したり、違法営業している桃の移動販売車を追いかけたりと、他の番組が手を出さないようなネタを扱う番組だなということは世間に伝わりつつあると思います。これを毎週やるのは正直、大変ですね。ただ、結論が見えていないようなことにも手を出せるなど、よりチャレンジしやすい環境なのは、レギュラーのいいところだなと感じています。あとADさんや若手のDがめちゃくちゃ頑張ってくれているので心から感謝しています。特にADさんは信じられない時間と手間をかけて「小さな発見」を見つけてきてくれるので頭が下がります。
◆実際、どうやってネタを探しているのでしょうか?
最初はやっぱり、ネットでのリサーチがスタートですね。ただ、ネットの情報だけでゴーサインは出さず、実際に足を運ぶようにしています。例えば低評価宿だったら、何度も泊まりに行ってみる。現地を見ないと分からないこと、知らないことがたくさんありますから。
当然、ボツも多いんですよ。低評価宿だったら、採用されるのは10軒に1軒ぐらい。
海外だと効率が悪すぎてさすがにできないですが、1週間ぐらいいろんな現地に潜伏して下調べするようにしています。「低評価のお宿に一週間泊まった」スタッフが掘り起こしてきてくれた他の誰も知らない情報は本当に輝いて見えます。
◆アイスランドの孤島エリデイ島(9月12日放送)も事前に上陸されたんですか?
あれは完全にガチンコですね。上陸できるかできないか分からないみたいな過程も含め、ドキドキしながら見ていただきたいなと。ただ、できる限りの準備はしておきましたし、最低限の担保はあった上で行ってもらっています。あとはきしたかのの高野(正成)さんと一緒に、ガチのドキュメンタリーですね。
◆今まで放送された中で、反響が大きかった回や思い出に残る回はありますか?
パンサー尾形貴弘さん率いる「尾形軍団」の回は、反響がありますね。(9月19日放送の)桃の移動販売車を追いかけるなんて、僕は最初“できるわけないだろ”って突っぱねたんです。でも、あれもADさんが頑張って、冗談みたいな張り込みを毎日続けてすごい映像を事前に撮ってきてくれてGoを出しました。尾形軍団の熱量もすごいですが、スタッフの熱量もすごいロケなのでこの手のネタが評判いいとすごくうれしいです。
尾形軍団とスタッフたちが一緒に街のいろんな厄介ごとに首を突っ込んでいくネタは、今後も控えています。あまり今のテレビで見ない映像だと思うので、もっといろんな方に知ってもらえるとうれしいです。
◆視聴者からすると、未知の外国より、身近な話題の方が興味が湧くのでしょうか?
かもしれないですね。ただ、非現実的なものも扱えるのがテレビの面白さだと思うので、
両方をバランスよくやれるのが理想だと思ってます。「なかなか触れにくいことを調べてみる」という軸さえ守れていたらいいと思っています。ただ、どんなにすごい映像でも「流す正義のないもの」はやめようと共有はしています。あとは演者さんとスタッフさんの安全性ですね。その辺りはすごく下調べしてからロケをやっています。
◆MCのアンタッチャブルさんが自ら、毎回のようにロケに行くのもこの番組ならではですよね。
お二人には本当に感謝しています。この番組のロケって一筋縄で行かないものが多いし、どんなにロケハンしても予想外の出来事が付きまとうんですけど、毎回現場で「どうする?どうする?」って言いながらやってくれて。またあの二人のすごいところが、どんな人と会っても気まずい雰囲気にならないところ。ちゃんと楽しく面白く、番組として成立させてくれる。あらためてすごい芸人さんだなと感じています。
◆10月31日(火)の放送から、地元民が知っている謎を現地調達&調査する新企画「地元のパンドラ調査」がスタートします。この企画はどういうところから始めようと思ったのでしょうか?
原始的ですがノープランで外に出て街頭インタビューからネタ集めをすることもあって…
そこで、情報を拾えた瞬間が一番ワクワクするんですよ。だから、そこからやってもらうことで、予定調和ではない面白さが生まれるんじゃないかなと。何もないところから面白いものを生み出せるのもアンタッチャブルさんの強みですし、お二人もそういうリアルさを大事にされているところがあるんですね。資料や台本も、最低限しか目を通さないんです。そのとき感じたものを出したいから、と。
◆初回の舞台を伊豆大島にしたのは、どんな理由からですか?
企画の特性上、どこにどう話が転がっていくか分からないんですね。それだとあまりにも先が読めなさすぎて、ある程度エリアは制限した方がいいだろうなと。島だったら、拾えるネタも島内に限られますから。
◆数原龍友さんがこういうロケに参加されることもなかなかないと思いますが、どういう理由でオファーされたんですか?
数原さんが山崎さんのことをめちゃくちゃ好きで…みたいな話を伝え聞いたんです。そういうリアルな熱量は、この番組にすごく合うだろうなと思って。実際、大喜びされていましたし、何なら数原さんの希望でやったロケもあるんですよ。番組の趣旨からすると、ちょっとおかしな映像にはなるんですけど、せっかくの機会だし、これはこれで良かったのかなと。
◆元BiSHの加藤千尋(セントチヒロ・チッチ)さんは?
芸人さんじゃない方が面白くなりそうだなというのがあったのと、先に数原さんが決まっていたから、一緒にいてちょっと違和感のあるような方で、できれば女性がいいなと思って。で、やっぱりチッチ(加藤)さんが出たいと言っているのを伝え聞いて、なかなかバラエティで見ない画になりそうでいいなと思ったんです。
◆チッチさんは伊豆大島のロケに苦い思い出がありましたが、そのことは知った上でオファーされたんですか?
最初は知らなかったんです。で、行く前に調べたら、以前伊豆大島のロケでお店の人にすごく怒られたことがあると知って、大丈夫かなと。そしたら、まさかあんなことになるとは…。ちょっと申し訳なかったですね。
◆実際やってみて、この企画の手応えはいかがでしたか?
何げないところからちゃんと面白さを生んでくれて、アンタッチャブルさんはやっぱりすごいなと思いました。あと、画面では伝わらないし伝わらなくていいと思っていますが、スタッフが死ぬほど汗をかける企画なので、アンタッチャブルさんの当意即妙の笑いとスタッフの熱量が掛け合わされたいい企画だなと思っています。
あと、ロケ終わりに1泊できたんですね。そしたら夜、山崎さんが若手ディレクターと今後あんなことしたいねみたいな、腹を割った話をされていて。そういう時間が持てたのは良かったなと。山崎さんと一緒に楽しい夜を過ごせて、数原さんもうれしそうでした。
◆今後も意外な人がロケに行かれたりするんですか?
できればそうしたいと思っています。各県のアンタッチャブルなものを調べようという企画があって、最初に佐賀県に行くんです。で、佐賀出身の方で誰かいないかなと思ったら、話題の俳優さんが出てくれると。しかも、聞いたら番組を結構見てくれていたみたいで。すごく意外な画になると思うし、番組らしい本当にアンタッチャブルなモノにも切り込んでいるので、楽しみにしていただきたいですね。
◆最後に、今後の番組作りへの抱負をお願いします。
アンタッチャブルさんを含め、出演者の方が熱量を持って取り組めるロケをやっていきたいなと思っています。アンタさん以外にも、尾形さん、きしたかの高野さん、ウエストランド井口浩之さんみたいに、感情をむき出しにできる方は、この番組と親和性があると思うんです。尾形さんなんて、本気で怒ってますからね。でも皆さん、それぞれ違う魅力もお持ちですし、それをちゃんと生かしたロケを用意していければ、おのずと番組のカラーにつながっていくのかなと。あとはちょっと、女性層も意識したいですね。割と男性好みのネタが多いみたいで(笑)。女性が好きそうなスポットを切り口に、アンタッチャブルなものに踏み込んでいくみたいな作りにしたら、もっと幅広い人が見やすい番組になるのかなと思っています。
番組情報
『ひらけ!パンドラの箱 アンタッチャブるTV』
カンテレ・フジテレビ系
毎週火曜 午後9時~9時54分
MC:アンタッチャブル(山崎弘也、柴田英嗣)
©カンテレ
●text/小山智久