「僕たちにすごい宝物を残してくれた」小澤征悦インタビュー「アメリカ・ワイルド」日本版案内人

特集・インタビュー
2016年05月19日

アメリカ合衆国の国立公園制度生誕100周年を記念して特別上映される「アメリカ・ワイルド」。本作はアメリカ国立公園の絶景を著名な登山家で国立公園大使のコンラッド・アンカー、彼の息子のマックス・ロウ、画家のレイチェル・ポールが徒歩やマウンテンバイクで道なき道を縦走するオフトレイル・アドベンチャー。大型スクリーンだからこそ味わえる興奮を体感できる本作の日本版案内人を務める俳優・小澤征悦さんに、作品の見どころや、自然との思い出をお伺いしました。

大自然に対する尊敬と畏怖の念を思いながらやりました

小澤征悦|TVLIFE Webインタビュー

――ナレーションのオファーを受けたときの感想を聞かせてください

この作品のオリジナル版のナレーションはロバート・レッド・フォードさんなんです。あんな名優というか素晴らしい人がやっているのに、日本版を僕がやっていいのかってちょっと思いました(笑)。でもオファーをいただいてうれしかったので、これは頑張らなきゃなと。

――もう映画はご覧になられましたか?

オリジナル版の、ロバート・レッドフォードさんがナレーションをやっているのを見たんですけど、もちろん映像は素晴らしいのひと言に尽きる。でも僕はナレーションをやる立場として、ロバート・レッドフォードさんがどういうふうにナレーションをつけているのか気になって。さすがだなと思ったのは、そんなに抑揚をつけていないところ。あんまり飾らないというか、過度にやらない、声で演技をしない。もちろん日本の役者さんもそうですけど、できる人って声で芝居をしないというか。これは僕もこういうふうにやらなきゃと思いました。映像の力が強いので、声も過度にやってしまうとぶつかっちゃうこともあるので、なるべく映像を邪魔しないこと。そしてこの映画の中で描かれている大自然の強さと怖さに対する尊敬と畏怖の念みたいなものを思いながら、少し抑え目な感じでできたらいいなと思いました。

――映画の中で冒険家たちはアウトドアスポーツを楽しんでいますが、アウトドアスポーツの経験はありますか?

ラフティングは群馬のほうでやったことがあります。逃げる練習をしたり、転んだときの乗っかり方とか面白かったけど…。実は前の晩に飲みすぎて軽く二日酔いで、二日酔いなのか波で酔ってるのか分かんなくて(笑)。そこには3m、5m、10mという感じの岩場があって、川の流れがあまりなくて深いところで。「ここから飛び込んでも大丈夫ですよ」って言われたので、男同士で行ってるし、軽く酔ってるじゃないですか。「そりゃ10mでしょ!」って言って飛び込んだんです。でも飛び込み方なんて知らないからそのまま飛び込んだらお尻に水圧が思いっきりかかって…すごくお尻が痛かった思い出があります(笑)。

「アメリカ・ワイルド」

――(笑)。では、映画の中に出てくるアウトドアスポーツで気になったものはありますか?

マウンテンバイクで丘を駆け下りるのは相当無茶してますよね。アイスクライムもちょっと…。アウトドア派に見られるんですけど、基本的にインドア派なので喫茶店で小説を読んでるほうが好きですね(笑)。やってみたいとは思わなかったけど、映画の冒頭で、山に登って岩と岩の間に手を突っ込んで登るシーンがあって、最初に見たときは何が何だか分からなくって。だってつかんでもいなくて、ただはさんでいるだけですよ。あれ映画的にはすごいキャッチですよね。僕もあれで「え!?」って思ったから。やりたくはないけど、あれはすごいなと思いましたね。何度も言うけど、やりたくはないですよ(笑)。見るにはちょうどいいです。

――一番感動したシーンはどこですか?

夜明けか日没か、日が沈んでいったのか登っていったのか分からないけど、あの映像はすごくきれいでしたね。普通に見ちゃってるけど、日本であの光景は絶対見られないですからね。あんな広い画で要するに何もない、何の建造物がないなんて、普通に撮ってますけど、あんなのあり得ないですから。大きさみたいな、そこに太陽が昇ったり降りたりするのは時間を感じるというか、長い時間を感じますよね、悠久というかね。

アメリカの自然は何となく近い感覚があります

「アメリカ・ワイルド」

――幼少期はアメリカで過ごされていたそうですが、どんな生活を送っていらっしゃったんですか?

日本で言う保育園、幼稚園から東京に来たので、4歳くらいまでアメリカにいました。当時住んでいたボストンの家は車で都内から15分くらい行った郊外なんですけど、アメリカって15分も走れば森ばっかりみたいなところもあって、住宅街ですけど感覚で言うと軽井沢のような感じ。家の周りが森みたいな感じでした。東京に来てからも夏休みにはアメリカに行ったりしていたので、アメリカの自然は何となく近い感覚はあります。リスがいて当たり前みたいな。窓の外をリスが歩いていますからね。

――「シークレットハウス」というものを作っていたそうですが、どんなものですか?

東京に来てから夏休みを利用して、タングルートっていうボストンから車でさらに2時間くらい田舎に行った、いわゆる山の中にあるバークシャー山脈のタングルの森というところがあるんですが、うちの親父がボストン・シンフォニー・オーケストラをやっていて、夏のフェスティバルがそこで行われていたんです。日本で言うと森の中の音楽堂みたいな。そこに山小屋的なものがあって、隣にはちっちゃい川が流れていて、その先の林みたいなところに姉と2人でクッキーとか漫画を持っていって、棒を立てて布切れ1枚張って、秘密基地みたいなものを作っていました。「ここは僕たちの秘密基地だな」って。でも当時は小学生ですから、家から見えるんですよ(笑)。

――グランドキャニオンにも行かれたことがあると聞きました

20~21歳にかけて1年間アメリカの大学に留学していたときに行きました。そこでどうしてもやりたかったのが車でアメリカ横断。男2人でやろうってことで、ボストンからサンフランシスコまで、東から西へ。1週間ちょっとかけてやりました。昼間は本当に運転しっぱなしで、夜になると車の中で寝て。ルート的にグランドキャニオンが近かったので寄りました。横断の途中、真ん中のあたりは時速100キロで3時間走っていても景色が一向に変わらないんですよ。昼間なのに対向車もなくて。

手付かずの生態系が守られているということ

「アメリカ・ワイルド」

――他に行ったことのある国立公園はありますか?

いわゆる国立公園っていうのはグランドキャニオンしかないんです。ただ「アメリカ・ワイルド」のナレーションをさせてもらう前から、イエローストーンとヨセミテには行ってみたいなとずっと思っていました。ヨセミテには「セコイヤの木」っていう樹齢何千年っていうでっかい木があるので、人生の大先輩に会いたいという気持ちです。イエローストーンにはオオカミがいるんです。もちろんイエローストーン以外にもいるんですけど。実は昔姉が行ってまして。姉もオオカミが大好きで見に行っていたんですけど、僕は仕事で行けなかったからチャンスがあったら行きたいですね。この国立公園の制度はルーズベルトさんが作って、今もこうして残っているんです。これは後世に、僕たちにすごい宝物を残してくれたなと思っていて。それは何かと言うと、手付かずの生態系が守られているということ。日本は殺しちゃったからオオカミなんてほぼいないじゃないですか。それによってシカが増えて、今度はシカが人間の畑を荒らしたりして、バランスが崩れちゃっている。だからシカを殺さなければいけないっていう訳の分からないことが起きているんですね。だから、失敗とまではいかないけど、日本人は見ているし、それを国立公園という形で、しかもアメリカ中にたくさん残したっていうのは自然に対しても素晴らしいし、あとは人間がそういう体験ができる場所を残したっていうのが素晴らしいなと思います。

――映画の最後には「大自然の中にこそ世界の希望がある」と“自然保護の父”ジョン・ミューアの言葉が流れますが、どう思いますか?

この言葉は希望でもありますし、自然を知ることは人間を知ること、人間を守ることだと僕は思うんです。人間って実は植物に生かされていて。たとえば、このコンクリートに囲まれた東京に人っ子一人いなくなって、それから100年が経ち、200年が経ち、そのあとどうなるかっていうと、そこかしこから木が生えてくると思うんです。何でかというと、やっぱり木が強いから。だから人間は木とか動物を支配しているようになっているけど今、実は支配されている側なんですよね。コントロールできるわけがない。ただただ自然をなくしてそこで生活を営んでいるだけであって、自然の強さみたいなものを考えないと、感じないと、人間は本当にやばいっていうことも一つ大きな題材としてあると思います。

――最後に本作の見どころを聞かせてください。

僕はこの映画の一番の大切な役割っていうのは、やっぱり子供に見てもらうことだと思うんですよ。それは子供がこの映画を見ることによって、今まで見たことのない世界とか“こんなところがあるんだ”という興味が沸くかもしれない。アメリカに対して興味を持つかもしれないし、自然や植物、動物とか、そういうものに興味を持つかもしれない、そんなきっかけになったらいいなと思うんですよね。それにはご両親の助けが必要で、大人の興味がこっちに張られていることが大切なので、こうやってこの映画をみんなにより多くの人に知ってもらうというのはいいことの連鎖という感じがしているので、そういうきっかけになってくれたらいいなと思います。なおかつアメリカに住んでいる人はこういうものが近くにあるという素晴らしさ。自然とこういう大自然を肌で感じてそこからいろんなことを学んだり、怖い目に遭ったり、そういう経験値っていうのがもらえる場所が国立公園じゃないかと。そういう意味でとても大切な映画なんじゃないかと思います。

 

PROFILE

小澤征悦●おざわ・ゆきよし…1974年6月6日生まれ。カリフォルニア州出身。
1998年、NKH大河ドラマ『徳川慶喜』でデビュー。翌年、崔洋一監督作品「豚の報い」で映画初主演を果たし、個性派俳優として高く評価される。瀬々敬久監督の映画「64-ロクヨン-」、是枝裕和監督の映画「海よりもまだ深く」がそれぞれ公開を控えている。

 

作品情報

「アメリカ・ワイルド」

アメリカ合衆国 国立公園制度生誕100周年記念<特別上映作品>
アメリカ・ワイルド

5月21日(土)より109シネマズ二子玉川ほかIMAX(R)3D版で公開

製作:ショーン・マクギリヴレイ
監督:グレッグ・マクギリヴレイ
脚本:スティーブン・ジャドソン、ティム・カヒル
音楽:スティーブ・ウッド
ガイド:コンラッド・アンカー(登山家)、マックス・ロウ(写真家)、レイチェル・ホール(登山家・画家)、ジョー・ウィーガント(アメリカ合衆国第26代大統領セオドア・ルーズベルト役)
案内人:小澤征悦

公式ホームページ…(http://americawildfilm.jp/

(c)VisitTheUSA.com

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