テレビ情報誌「TV LIFE」で、今後さらなる活躍が期待されるネクストブレーク俳優の魅力を紹介する連載「#今旬コレクション」。WEB版では、本誌に収まりきらなかったエピソードをスペシャル動画も交えて紹介します。第70回は舞台「アカシアの雨が降る時」に出演中の鈴木福さんが登場です。
「#旬コレ 7seconds CHALLENGE」鈴木福
◆台本を読んだときの印象を教えてください。
取材をしていただいている今はミュージカル「カラフル」の公演期間中で、実はまだじっくり台本を読み込めてはいないんです。でも「ここから僕の厳しい戦いが始まるな」と思いました(笑)。
◆「厳しい戦い」とは、具体的にどういうことですか?
本作は、竹下景子さん演じるおばあちゃんが倒れて目を覚ましたときに、僕が演じる孫の陸を自分の恋人、つまりおじいちゃんだと信じ込んでしまう物語です。陸はおばあちゃんを傷つけないために、若い頃のおじいちゃんとして振る舞いはじめます。だから、僕は陸を演じながらも「陸が演じるおじいちゃん」も演じないといけなくて。おじいちゃんを演じる場面では、どのくらい陸の要素を消して、おじいちゃんになりきったらいいんだろうと考えています。
◆鈴木さんは陸という人物についてどのように考えていますか?
僕とは全然違う人間だと思っています。もしも僕が陸のような状況におかれたら、陸みたいに一生懸命におじいちゃんとして振る舞うことはできないと思います。あと、陸はお父さんに対して複雑な感情を抱えているんですが、僕自身は両親と仲がいいので家庭環境も全然違いますね。
◆陸の魅力はどんなところにあると思いますか?
いろんな人の気持ちに寄り添える一生懸命さが魅力的だなと思いました。その一生懸命な行動が、必ずしもプラスに働いているわけではないんですが…。
◆なるほど。陸は20歳で、鈴木さんは現在19歳。同世代として共感する部分はありますか?
何もかも違いすぎて「共感」と言われると難しいですね。でも、ハタチってどれくらい大人でどれくらい子供なんだろう? というのは考えています。僕は19歳ですが、まだギリギリ学生服を着るような役も演じられる見た目で。台本を読んで、どちらかというと陸はかわいらしい子だなと思ったし、僕が演じるとそういうふうになると思うんです。でも20歳ってお酒を飲める歳じゃないですか。あまりにも幼く演じて、そういうふうに見えなかったらそれはそれで違うし。どうしようかな? どうなるかな? と思っています。
◆稽古や本番について、楽しみにしていることはありますか?
今回は地方公演がたくさんあって、いろんな土地に行けるのが楽しみです。3人芝居というのもワクワクする要素ですね。僕はここ最近、お仕事のたびにその現場で新たな発見をしているので、今回もきっと新しい発見があるんだろうなと思います。あと、今回は劇中歌もあって。ミュージカルとはまた違う、もっとお芝居の要素の強い歌い方になると思うのでそれもワクワクしています。
◆共演の竹下景子さん、松村武さんにはどんな印象をお持ちですか?
竹下さんは以前、別作品で共演したことがあって、暖かい雰囲気でお優しい方だなと思いました。松村さんは今回が初めての共演になるんですが、過去に上演された「アカシアの雨が降る時」の写真は見たことがあって、今回の台本を読んでいても松村さんの演じているお父さんの姿がすごく想像できるのでお会いするのが楽しみです。
◆先程、陸と鈴木さん自身は全く似ていないとおっしゃっていましたが、自分と似ていない人物を演じるのは難しいですか?
そうですね。自分と似ている人はイメージしやすいので、僕とそっくりな役が来たらすごくやりやすいと思いますが、この作品に限らず、そうじゃないことの方が多くて難しいです。多分、僕みたいな人間って物語として描いてもあんまり面白くないんですよ(笑)。
◆そんなことはないと思いますが…。
僕はスーパーポジティブで、普段からマイナスな感情が全然ないんです。でもマイナスな感情の方が、ドラマとして描きやすいじゃないですか。感情がグンと下がった時のことをしっかり描く方が面白くなる。だから僕みたいな幸せな人はドラマになりづらいと思うんです。
◆明るい性格なのは昔からですか?
そうですね。マイナスな感情になることももちろんありますが、その後にプラスなことがあるとそっちに気持ちを持っていけます。例えば、お仕事で「このお仕事やろうかな? やっぱりやめておこうかな?」と迷うことがあっても、結果的にこれまで「チャレンジしてよかったな」と思ったことの方が多くて。「難しかったけどこういう学びがあってよかったな」とか「大変だったけどお客さんが喜んでくれてよかったな」と思えるんですよね。基本的に家族はみんな明るいですが、中でも特に僕と母親が飛び抜けてポジティブなタイプです。
◆家族と言えば、今作は陸とお父さんの関係性も見どころです。鈴木さんご自身のお父さんとのエピソードはありますか?
僕と父は仲がいい方だと思います。二人だけでご飯を食べて話すこともありますし、仕事終わりに迎えに来てくれたりもしますね。父は昭和的な価値観を持ちつつ、新しいことにも興味を示したり、休みの日は学生時代のお友達と飲みに行ったりしていて。そういう姿を見ているとすごくいいなぁと思います。尊敬できるお父さんです。
◆鈴木さん自身は、普段友達や周りの人からどんな人間だと言われることが多いですか?
自分で言うのもなんですが、友達からは「明るくていい奴」と言われます(笑)。あと「芸能人っぽくないね」と言われることも。自分自身が意識してそう振る舞っているわけではなくて、親の影響が大きいと思います。
◆ミュージカル「カラフル」から間も無く「アカシアの雨が降る時」が始まります。切り替えはすぐにできそうですか?
1日でパンっと切り替える予定ではありますが、これまで舞台から舞台に移行したことがないので、正直どうなるかは分かりません。映像作品はシーンごとに撮影していくので、その瞬間のその場面だけしっかり集中できていれば、すぐに抜けて次の作品に行っても大丈夫なのですが。舞台は公演期間中はずっと力を入れ続けていないと難しいので、すぐに切り替えをできている俳優さんたちはすごいなと思います。
◆今後、「こういう俳優になっていきたい」という夢や目標について教えてください。
これからも俳優としていろんな作品に出演して、もっと評価されるような俳優になりたいと思っています。「評価」というのは何か賞を取ることでもあり、賞が取れなくても人から「いい俳優なのに、なんで賞を取っていないんだろう?」と思われるような人になりたいです。また、小さい頃から憧れているアクション系のお芝居にも挑戦していきたいですね。
◆最後に、舞台「アカシアの雨が降る時」の見どころを教えてください。
おばあちゃん、お父さん、陸という三世代が、それぞれぶつかり合う部分もあれば、家族として溶け合う部分もあるのが面白いと思います。お客さんとしても、おじいさんおばあさん世代には「懐かしい」、お父さんお母さん世代には「なんか知ってるかも」、そして僕ら世代には「何それ? 初めて聞いた」と思うようなネタも入っていて。三世代で共感できる部分、できない部分のギャップが面白いと思うので、楽しんでいただけたらうれしいです。
PROFILE
●すずき・ふく…2004年6月17日生まれ。東京都出身。B型。主な出演作はドラマ『仮面ライダーギーツ』『藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ「おれ、夕子」』、映画「KAPPEI カッペイ」「少年と戦車」、舞台「カラフル」など。
●photo/干川 修 text/井上明日香 styling/作山直紀 hair&make/堀川知佳