古川雄大が語る『大奥 Season2』の結末「“本当はこうだったのかもしれない”と希望を感じられる」

特集・インタビュー
2023年11月28日
古川雄大

3代将軍・家光の時代から幕末・大政奉還に至るまで、男女が逆転した江戸パラレルワールドを描いてセンセーションを巻き起こした、よしながふみ作の「大奥」。同作を原作に家光から8代将軍・吉宗までの物語がドラマ化され、今年の1月期に同枠で放送された。

そして、現在放送中のSeason2では「医療編」「幕末編」として、吉宗の遺志を継いだ若き医師たちが「赤面疱瘡」撲滅に向けて立ち上がった後の物語から、女将軍をはじめとした幕府の人々が“江戸城無血開城”のために奔走する幕末・大政奉還の物語を描く。

この「幕末編」の主演で、美しき大奥総取締・瀧山役を演じる古川雄大さんにインタビュー。正弘(瀧内公美)や家定(愛希れいか)との別れを経て、なお力強く前に進み続ける瀧山の役柄や本シリーズに感じる魅力についてや、撮影現場でのエピソードや印象に残っているシーンなどを聞きました。


◆古川さんはSeason1もご覧になっていたということですが、本作のオファーが来たときの心境はいかがでしたか? 

オファーを頂いた時はとても驚きました。これまで本格的な時代劇をやったことがなく、舞台でも洋風な役を演じることが多かったので、自分には和の世界観が似合わないのかな、と勝手に思い込んでいたんです。なので、まさか時代劇のお話を頂けるとは、と驚きが大きかったです。さらに、Season1をいちドラマファンとして拝見していたので、出演できる喜びとプレッシャーもありましたが、この大きなチャンスを精一杯頑張りたいと思いました。

◆Season1に感じていた魅力は?

「赤面疱瘡」を撲滅するという大筋がありながら、3人の将軍を軸にさまざまな愛が描かれ、それがしっかりと後世に受け継がれていくという部分です。特に、主人公たちが過去を振り返り、大切なつながりに気づく過程がとても面白く描かれています。胸が切なくなるようなシーンも多くありましたが、それを愛で乗り越えていく人間模様のようなものが、多くの視聴者の心に刺さったのではないかなと感じています。

◆クランクアップを迎えられた今、撮影を振り返っていかがですか?

「幕末編」は瀧山が主人公ではありますが、大奥全体にスポットが当たっていて、彼はそこでうごめく人々の思いを見守っている、そんな役割だと思っています。撮影は全てが順撮りだったわけではないのですが、 家定の後に家茂(志田彩良)、という形で撮っていただいたので、人々の思いが積み重なっていくさまを感じられ、リアルな心情で演じることができました。家茂と共に家定の話をするようなシーンでは、僕自身鮮明に当時のシーンが思い浮かんできて…。そういった撮影環境を作っていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。 

『大奥 Season2』古川雄大©NHK

◆瀧山というキャラクターをどのような人物だと捉えていますか?

瀧山は情に厚く、人を思うことができる魅力的な人物です。すてきな役柄を演じさせていただけたことをうれしく思っています。また、瀧山は優秀で常に学問を修めたいと考えており、どんな状況であれその夢を捨てないという志の高い人。さらには陰間をしていたこともあり、コミュニケーション能力もとても高いんですよね。つまり僕とは正反対の人物です(笑)。でも、心を決めた人のことは徹底的に守っていく、という部分は僕自身とも共通しているのかな、と。普段はちょっとドライなところもあるのですが、僕も家族や自分の大切な仲間のことは過保護なぐらい気に掛けるタイプです。

◆時代劇ならではの所作や言葉遣いなど、大変だった点も多かったのでは…?

スタッフさんを頼らせていただき、特に所作指導の先生には少しでも分からないことがあれば質問するなど、最後の最後までお世話になりました。あと、やはり言葉遣いやイントネーションがとにかく難しく、せりふをなじませる作業が大変でした。この作品の撮影に入る前に『Dr.チョコレート』(日本テレビ系)というドラマで斉藤由貴さんとご一緒させていただいたのですが、斉藤さんもSeason1にご出演されていたのでいろいろお聞きしたところ、せりふを覚えるのに大変苦労されたとおっしゃっていたんです。僕も相当構えていったのですが、それでも最初のシーンでは何度もNGを出してしまって…。せりふや所作を意識しつつ、そこに感情を乗せなくてはいけないというのは、これまで感じたことのない難しさでした。

◆セットや衣装の豪華絢爛さというのもこの作品の見どころかと思います。

セットはもちろん、衣装もとても豪華なので、最初にフルメークで身にまとった時には、我ながら「おお!」と驚きました。ただ、制作過程でかなり試行錯誤してくださったと伺っていて、それこそ瀧山の衣装の「流水紋」なんかは「これでは流れていない、もっと流さなくては」と何度も直してくださったそうで…。キャストだけでなく、スタッフの皆さんもこの作品に対して大きな愛情を持ってらっしゃって、そんな姿を目の当たりにしては日々感謝を感じていました。本当に刺激的な現場で、皆さんの愛情に負けないよう僕も頑張ろう、と撮影に挑んでいました。

古川雄大

◆劇中で特に印象に残っているシーンは?

瀧山がカステラを持って正弘のお見舞いに行ったシーン(第17回)は、実は撮影序盤に撮ったんです。瀧内さんとまだそこまでコミュニケーションが取れていない中、なかなか感情的なシーンを演じることになったのですが、演出の大原(拓)さんが細かな心情の動きまで見えるようにと演出してくださって。テストから本番を含めると何度かやり直したのですが、最後の最後でとてもいいものが出来上がりました。大原さんのお力もあり、会心のシーンになったのではないかなと思っています。

◆撮影現場の雰囲気についても教えてください。

現場では、役の話をずっとしているというより、世間話などをしていることが多かったです。特に瀧内さんはお話が上手で、普段のコミュニケーションからお芝居に引き出された要素も多いと思います。いっぽう、愛希さんはカメラが回っていないところでもずっと役に入られていて、常に集中されており、そういう面では家定とのギャップを感じなかったです。また、福士(蒼汰)君はとても明るく、現場を照らすような空気作りをしてくれて。最初は互いに距離があったのですが、それもだんだんと縮まっていき、瀧山と胤篤(天璋院)としてもごく自然に距離感を縮められた感覚があって。バディとなり、共に成長していく過程というのは、裏での背景が生きたところが多くあると思います。

◆瀧山にとってのキーパーソンとなる、正弘と家定に感じる魅力は?

これは2人共に共通することですが、人を受け止め、包み込む強さがあるところです。役としてはもちろん、瀧内さんと愛希さんご自身もそれはリンクしていると思います。また、正弘は「男女問わず優秀な人物を抜てきしなくては世の中を作っていけない」という、現代に通ずることをあの時代に言っていて、こういう発想を持って生きていたことが本当にすごいなって。家定は苦しい過去を抱えながらも、正弘や瀧山との出会いで大きく変わり、世の中を変えていこうと最後まで行動し続ける、そういった人を思う力がすてきだなと思いました。

『大奥 Season2』古川雄大©NHK

◆瀧山と胤篤(天璋院)のバディぶりについてはどう感じていますか?

最初は敵視し合っているようなところからスタートした2人ですが、胤篤が家定を輝かせ、2人の思いが通じ合っているのを目の当たりにして、瀧山の胤篤への思いにも変化が生まれたと思っています。さらには、家定亡き後も胤篤と同じところを目指していく中でどんどん2人の距離が近くなっていき、やがて2人で大奥の終焉を見届けるという、その関係性の変化も魅力的ですよね。

◆古川さんが瀧山の人生に感じる美しさは? 

1つの出会いが人生を180度変える、というのはとても夢があるなと思います。これまで自分もそういう経験をしていますが、人と人との出会いの大切さ、出会いが自分の運命をも変えていく、ということを体現している人生といいますか。人は人と接していなくては生きていけない、ということを瀧山はとてもリアルに感じているのだと思いますし、いろんな人との別れを経験して、その悲しみを人と共に乗り越えていって…。つらい過去を背負いながらも、前向きに生きている彼の姿というのは、多くの方に力を与えられる存在だと思っています。

◆最後に、今後の見どころや本作のアピールをお願いします。

この作品の舞台である江戸時代というのは男女の格差が今とは比にならないぐらい激しかったと思うのですが、そこにスポットを当ててリアルに描くことで、ジェンダーに対する新たな考え方が生まれるきっかけになるのではないかな、と。物語のラストも「本当はこうだったのかもしれない」と希望を感じられますし、やがて来る西郷隆盛(原田泰造)との決着からも、何か現代に通じるメッセージを受け取っていただけると思っていて。男女の役割というのは今なおテーマになっていますが、それを今この作品で描くというのは、とても意味があることだなと感じています。

PROFILE

古川雄大
●ふるかわ・ゆうた…198779日生まれ。長野県出身。A型。2007年、俳優デビュー。主な出演作は映画「モエカレはオレンジ色」、ドラマ『恋と弾丸』『わたしのお嫁くん』『Dr.チョコレート』『ハヤブサ消防団』など。現在、帝劇単独初主演ミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』に出演中。

古川雄大

番組情報

ドラマ10『大奥 Season2』
NHK総合
毎週火曜 午後10時~1045

 ●photo/古賀良郎 text/片岡聡恵 hair&make/平山直樹(wani) styling/Shinya Tokita 衣装協力/三喜商事

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