お笑いコンビ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、SNSの話。(TVLIFE 2023年8月2日発売号より転載)
いとも簡単にThreads
最近改めてSNSについて考える時間が増えた。
今や当たり前のように生活の一部になった各種SNS。表舞台に立つ人間として当たり前のように今日まで続けているが、この前Twitterが一時的に使えなくなった時にすこしだけ『解放された感』があった。もちろん楽しさややりがいみたいなものもあるのだが、それが100%を占めるわけではないということに気付いた。
インターネット黎明期にあったみんなのぎこちなさや気恥ずかしさはとうに消え、当人の影響力が増すごとにそのメリットとデメリットが共に大きくなり、時に人ひとりが抱えきれなくなってしまうこともある。心身の健康を保つため、僕は潜在的にSNSから距離を置こうとしていたのかもしれない。でも今の僕にはこんなにも発信に適した場所はなく、キャラクターとしてもやって然るべきだ。やるべきだけどやらない方がいい。相反する感情が自分の中で蠢いていた。
そんなことを考えているとある日Threadsという新たなSNSが彗星の如く現れた。あっという間に周りの人たちがアカウントを開設していく様子はすこしだけ怖さを感じた。気付けばその大きな波にちっぽけな僕は流され、Threadsデビューをしていた。初投稿の文言を考えながら自己嫌悪に陥る。
僕にはSNSをやめられるほどの才能がない。
僕が圧倒的におもしろければ、こんなことをぐるぐる考える必要もない。SNSをやめられるほどの才能があった上でやめてもいいし、やってもいい。半ば強制的にやらざるを得ない今の状況と結果的に同じでも、その心持ちの違いは大きい。
いろんな自意識との葛藤の末、今日も各種SNSを徘徊しながら発信をし続ける――――
なんてことを今フィリピン行きの飛行機内で書いている。ネット環境のないここではもちろんSNSのチェックはできない。裏を返せば僕が天才だった世界線を擬似体験しているのだが、早くもすこしソワソワしている自分がいる。Twitterを更新した時の「シュッ…ポン!」が恋しくなってきた。おそらくフィリピンに到着すると同時にSNSを覗いてしまうのだろう。しばらくはこのジレンマと付き合っていかなくてはならなそうだ。
ひょっとしたらSNSが合わないんじゃないかというところから始まったが、結果的にSNSよりも天才の方が合わないという切なすぎる事実が浮き彫りになった。それなら凡人は凡人なりにやれるところまでとことんやってみようと思う。書き始めはすこし後ろ向きだった今回のコラムだが、なんだか自分でもビックリするくらい吹っ切れてきた。やはり上空にいるからか、気まで膨張して大きくなっているのかもしれない。
森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。