お笑いコンビ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、長年過ごした三軒茶屋の話。(TVLIFE 2023年9月27日発売号より転載)
さらば、愛すべき三軒茶屋
先日、引っ越しをした。
学生時代から足繁く通っていた三軒茶屋という土地で一人暮らしを始めて4年、まさに僕のホームタウンと呼ぶにふさわしい場所だ。なんならずっとこの近辺で家のグレードを上げていけばいいんじゃないかと思っていたくらいにはしっくりきていたが、ついに思い出深いこの街から離れることにした。
理由はいくつかあるのだが、その中でも本質的なものとして『この街のターゲットから外れた』というのがある。20代までは全く感じなかった疎外感や窮屈さというものがここ1,2年で現れて、それがきっかけでそろそろ頃合いなのかもと思うようになった。
とはいえ青春時代の大半を過ごした大好きな三軒茶屋。引っ越し前になにか記録を残そうと、同じく三軒茶屋に縁が深い同期のとりやま生配信という芸人と一緒に思い出を振り返るツアーを撮影した。学生時代を含めるとお互い15年以上入り浸っていたのでいくら時間があっても足りないのではと懸念しながら始まったロケ。とにかく片っ端から今まで蓄積してきた三茶エピソードを語っていく。
「高校生の頃このマクドナルドで働いてて…」
「ここのいきなりステーキにハマってて…」
「この王将はいま人手が足りてなくて…」
「このやよい軒は夜中によく来てて…」
だんだんと雲行きが怪しくなってきた。いざ振り返ってみると僕たちは10代のころから今に至るまでずっと同じチェーン店をぐるぐる回っていただけだったのだ。どちらもそこまでお酒を飲むタイプでもないので無数にある洒落た飲み屋をひとつも知らない。ずっと高校生による紹介VTRみたいな映像になってしまっていた。僕らはとうの昔にこの街のターゲットから外れていたのである。
そんな衝撃の事実も発覚しつつ、愛しの三軒茶屋に別れを告げて早一ヶ月。新たな土地は今のところ僕にとても合っていて大正解の引っ越しとなった。そしてこの前ランジャタイ国崎さんとご飯をご一緒させてもらった時に新居の話になり、家賃がいくらか聞かれたので伝えたら目を丸くして「うそだろ!?◯◯さん(超絶ブレイク芸人)より高いぞ!!」と言われた。たしかに決して安くはない金額ではあるが、売れてる人の相場からしたらそんな驚かれると思ってなかったので結果的にお互い目を丸くしてしまうという瞬間があった。
それからというもの、事あるごとに国崎さんから「本当に払えるのか?」「無理をしてるんじゃないか?」「明日にでも前の家に戻った方がいいぞ」などと言われ、僕も僕で徐々に「本当に払えるのか…?」と不安になってきた。よりによってあんな煽りまくってくる人に言うんじゃなかったよ。
だけどその結果ネクストブレイク芸人としてより身が引き締まったのは事実。国崎さんを黙らせられるくらい日々精進していこうと決意した。ただ、万が一数ヶ月後に僕を三軒茶屋で見かけた場合は、そっとしておいてほしい。
森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。