お笑いコンビ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、キングオブコントの話。(TVLIFE 2023年11月8日発売号より転載)
そりゃ10年やっても飽きないわ、お笑い
現在このコラムを執筆しているのが10月22日。キングオブコントの生放送が終わって一夜明けたところだ。昨日のお昼くらいまで今回はクリス松村さんとの出会いについて書こうと思っていたが急きょ予定を変更して今年のキングオブコント決勝についての感想をしたためることにした。クリスさんについては次回必ず書くのでご容赦いただきたい。
結論から言うと今年も当たり前のように最高の大会だった。万年準々決勝落ちの僕からしたら決勝に進出している時点でとてつもなくすごいことだし、なんなら全員優勝である。決勝ともなると出順、客層、空気感などの外的要因によって順位が大きく変動するので、10の世界線があれば10組の違うチャンピオンが生まれていることだろう。今回はほんの少しの変化でガラッと結果が変わっていたんじゃないかというくらいハイレベルな戦いを見させていただいた。
コントの中身は言わずもがな全組トップクラスに面白くただただ勉強させてもらったのだが、今回見ていて思ったのはああいったテレビ番組での決勝で全員が優勝レベルのネタを繰り広げている際にその勢いの後押しをする要因として『色気』というのがあるんじゃないかなということ。漫才は本人役を演じるので歳を重ねるにつれドラマ性を帯びていくのがわかりやすいけど、コントはその都度キャラクターが変わっていくのでそういったものが積み重ねにくい。そうなってくるとそこに取って代わるのが『色気』なのかなと思うのだが、正直まだこれを明確に言語化はできていない。いわゆる漫才における『ニン』(その人の個性やキャラクター)にも通ずるものがあるが、役を演じるコントとは少し相反する要素でもある。
今回で言うとやはり優勝したサルゴリラさん、トップバッターからの準優勝を果たしたカゲヤマさんからはテレビ越しからも妙な色気を感じた。全組食い入るように見て笑ったが、この2組はさらにかじりつくように見てしまった。演技力なのか、年齢によるものなのか、悲哀なのか、浮世離れ感なのか、バカバカしさなのか、はたまた思いもよらない要素なのか…。その正体はまだ掴めていないが、間違いないのはひたむきに続けている者にしか纏えないということ。一朝一夕じゃ備わらないこの能力はもしかしたら芸人としての覚悟と比例するのかもしれない。いつか自分も先人たちのような色気を纏える日が来るのだろうか。
芸歴10年を迎えると賞レースひとつでいろんなことに想いを巡らせてしまう。もうそろそろ見る側としての感想は飽きてきたので来年の今ごろには出た側の感想が書けますように。
…と言っても今の段階で勝負ネタがあるわけではないのでこれは決意というよりは願望に近いやつです。ご了承ください。(いくらなんでも色気がなさすぎる締め方)
森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。