お笑いコンビ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、パンサー・向井慧さんの話。(TVLIFE 2023年4月26日発売号より転載)
#むかいの頼り方
この広大な芸能界、ブレイクまでの道のりは千差万別です。しかし僕が現在歩いている道をよく見てみると、ある方の足跡がくっきり残っています。今回はこの過酷な道の先を走り続ける偉大な先輩が手を差し伸べてくれたお話。
「いつか森本くんとはちゃんと話してみたいんだよね」
ラジオから流れたその声に心を震わせたのが去年末のこと。声の主は『#むかいの喋り方』でのパンサー向井さんだ。トリオ、ツッコミ、ラジオ好き。パッと思い付くだけでも共通点が多く、一方的にシンパシーを感じていたのだが、これまでゆっくりお話する機会に恵まれなかった。ただ、そんな向井さんが僕のことを気にかけてくださっているかもしれないと思わせる出来事が2年前にあった。
それはTBSで放送された『快答!50面SHOW』というクイズ番組で「若手芸人が選ぶ、MCとして出世しそうな芸人」という問題が出されたとき。粗品さん、カズレーザーさん、兼近など錚々たる面々が答えとして出てくる中、どうしても残りひとりを当てられずに苦戦する出演者のみなさん。スタジオの全員があきらめかけたその瞬間、向井さんが「トンツカタンの森本くん!!」と叫び、見事正解してくれたのだ。
僕という存在が向井さんの頭の片隅に置かれていたこと、そしてMCとして出世しそうというカテゴリに入れていただいていたこと。二重の喜びが身体中を駆け巡った。テレビでは河北麻友子さんの純粋な「え、誰~?」というリアクションが流れていた。
それから月日が経ち、ご自身のラジオで改めて僕の名前を出していただいたのだ。これをきっかけにあれよあれよと話が進み、先日ついに『#むかいの喋り方』にゲスト出演させていただいた。先述した共通点の他に、いざお話しさせていただくと僕がいま歩いている芸能界のレールは向井さんが何年も前に通られているものだということがわかった。
現在自分が置かれている状況、悩み、すべて言い当てられた上に先人として的確で親身なアドバイスをしていただいた。事務所も違う、どこの馬の骨かもわからない後輩にここまで腹を割ってくださるその姿を見て、途中から僕が知らないだけで血繋がってるのかなと錯覚した。完全に親族の寄り添い方だった。
僕も僕で向井さんの懐の深さに思う存分甘えてしまい、生放送で公開カウンセリングをしていただいた形になった。それなのにも関わらず放送終わりに連絡先を交換し、「また何か抱えてしまったら連絡して」と言ってくださった。向井さん、あんたって人は…!芸人としてだけではなく、人間としてこうありたいなと思わされた。
それからの僕はというもの、仕事やプライベートで鬱憤を抱えることに対して前向きになっている。そういったものを抱えれば抱えるほど、向井さんに連絡する口実が増えるからだ。それだけ聞くとサイコパステストの答えみたいになってしまうが、実際に連絡をしなくても頼ってもいい先輩がいるという事実が心をかなり軽くしてくれている。
いつか後輩たちにとってそんな存在になるためにも、向井さんが踏みしめた足跡を辿って、今日も僕はお笑い界を歩んでいく。いずれその大きな背中が見える日を夢見て。
森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。