いよいよ本日12月24日(日)、漫才日本一を決める「M-1グランプリ2023」決勝が開催される。今年は午後3時開始の敗者復活戦から決勝本編にそのままつながる7時間超の放送時間、敗者復活戦の審査方法の大幅改革、審査員に海原ともこが新たに加わるなど、来年の20回目の節目を前に大きな変化を見せる大会となる。
エントリー数は8540組と過去最多数を大きく更新。初決勝進出のマユリカ、くらげ、ダンビラムーチョ、ヤーレンズ、令和ロマン、2度目の進出を果たしたカベポスターとモグライダー、3度目となる真空ジェシカとさや香のファイナリスト計9組が、昨年の王者・ウエストランドに続く栄冠を狙う。
TV LIFE webでは、今年も毎日1組ずつファイナリストのインタビューをお届けしてきた。そして最後に、昨年に引き続きM-1グランプリの総合演出を担う朝日放送テレビ(ABC)の下山航平氏に単独インタビューを実施。昨年の決勝終わりで感じたことや敗者復活戦の審査方法を変更した理由、実は毎年違っているM-1グランプリロゴの今年の色やキャッチコピー“爆笑が、爆発する。”に込めた思い、そして決勝の見どころまでを聞いた。
「心配せんでも、絶対にお前の想像を超えてくるから」
◆下山さんは昨年初めて総合演出を担当され、今年が2年目。それまでは敗者復活戦や『M-1グランプリ アナザーストーリー』(決勝後に放送される密着ドキュメンタリー)をご担当されていたとのこと。初めて決勝本編を担当され、総合演出という一番近くで携わる責務を終えて率直にどう感じられましたか?
M-1ってキャッチフレーズも「人生が変わる」みたいなものだったり、そういう見られ方を多くしてきたと思うのですが、昨年、決勝が終わってすぐに思ったのは、結局そういう面は後からついてくるものなんだなと。
芸人さんたちは「人生を変えたい」という感覚ではなく、結局「自分たちの漫才が一番面白いんだ」… その一心でストイックに戦いたくて来ている。だからどこまで行っても、僕らはこの“漫才頂上決戦”というものに真摯であるべき、そこに対してシンプルであるべき大会だと思いました。毎年、オープニングVTRで言っている「俺たちが一番面白い」というナレーション、まさにそれがM-1を表しているんだなと感じました。
◆昨年、決勝前にお話を伺った際(https://www.tvlife.jp/pickup/527840)は「お笑いだけをずっと見続けてきた人間ではないからこそ、漫才を『すごい面白い!』と純粋な目で見られる面もある。だからこそテレビの前の見ている人に『分からなければ置いていくよ』ではなく、みんなが分かる大会にしたい」と話されていました。
その考え方は今年も変わっていないですね。ただ、「漫才とは何なのか」とより考えるようになったかもしれません。
昨年の決勝前、どうなるだろう…という不安ではないですけど、そんな思いを前任の総合演出の白石和也さんにふらっと話したんです。そうしたら「心配せんでも、絶対にお前の想像を超えてくるから」と言われて。その言葉がけっこう胸に残り、じゃあもう逆に自分が身を委ねようと思って臨んだんです。するとやっぱり想像もしなかったうねりが起きて。僕らが想像しうる範囲のことなんて勝手に超えてきちゃう、それほどの大会なんだなと改めて思いました。
それに対して僕らができることは、漫才師の皆さんに最高の舞台を用意するということだけ。何をする、どう展開するにしてもベースがしっかりしていれば、絶対に大丈夫なので。
M-1は翌年以降、もっと言ったら10年、20年後に「このM-1を見て芸人になりたいと思った」と言ってもらえるような舞台であるべきだと思っています。来年でちょうど20回目になるんですが、今出ているファイナリストの皆さんって、2004年、2005年あたりのM-1を見て芸人になりたいと思ったという人が多くて。なんていうか「M-1がM-1を育てている」。皆さんが作り上げてきたものが、次の世代を生み出す。だからこそ、こういう大会に成長していったんだろうなと思います。
◆今年のファイナリスト9組は、どんな9組ですか?
発表会見で初めて9組が舞台上に並んだ時に「なんかカラフルだな」と思いました。キャラ立ちしている人が多いんだろうなと。実際カラフルなんですよ、衣装を並べてみたら。
今年のファイナリストがどうというわけではなく、予選を通して全体的に前年の影響が出ているように感じました。だから今年はしゃべくり漫才や、いわゆる“人(にん)”の部分を強く出した漫才が多かったような…ウエストランドさんの影響ですかね。
爆笑のその先、爆笑を超える爆笑=“爆発”させなきゃ勝てない
◆M-1グランプリのロゴは年表記部分の色が毎年違って、昨年は「今年も新しい色に染めてくれ」という意味での白でした。今年は何色でしょうか?
黄色、ルミナスイエローという色です。今年は過去3年、コロナ対策をしていたのが明けて初年度ということで、漫才師の皆さんの新しい漫才に対する希望の光、という意味で温かみのある黄色にしました。あと、よく見ていただくと縁取りを緑にしているんです。これは決勝が12月24日ということを意識して、クリスマスカラーにしました。
◆今年のキャッチコピー「爆笑が、爆発する。」にはどういう意図がありますか?
最初にお話しした、昨年を終えて一番に思ったことと繋がるんですが、とにかくストイックにしたくて。お笑いの賞レースの数も増えてきて、それぞれいろんな色付けがありますよね。そんな中でM-1ってなんだろう…と考えたら、やはりどこまでも勝負にストイックという面が一番だなと思ったんです。
それをキャッチコピーとして表現できないかと会議でなったときに、「自分がお笑いを見ていて、めちゃくちゃ面白いと思った時にどういう状況になるだろう」という話になって。面白かったらハハハと笑うし、めっちゃ面白かったら拍手笑いになったり、面白すぎて涙が出てきたり。僕はそれを超えると、身体の奥のほうがグワッと熱くなるなと思ったんです。爆笑のその先、爆笑を超える爆笑=“爆発”させなきゃ勝てない大会、という思いから今回のキャッチコピーが生まれました。
◆これも昨年、先輩方から受け継いできた思いとして「M-1を“紅白”にする。国民的行事にしていきたい」。そのためにスケール感も出していきたいと話されていました。
そうですね。スケール感と同じ方向性のひとつとして、今年の敗者復活戦の会場に新宿住友ビル・三角広場を選んだのも、都庁の横という場所にオフィシャル感を感じたという理由があります。「こんな場所があるよ」と教えられて、1人でフラッと行ってパッと見た時に「あ、ここでやりたい」と思ったんです。ここでやったら合うだろうな、M-1にふさわしい場所だなと感じて。
新たな敗者復活戦へ―― 1,600名の熱い観客+芸人、「その2つの目線で押し出される1組なら絶対間違いない」
◆敗者復活戦は場所と合わせて、審査方法も大きく変わりました(ブロック制・会場の観客審査を経て芸人審査員が投票)。なぜ変えようと思われたんですか?
一番は、出場する全芸人さんが納得するものにしたいという考えです。敗者復活戦の審査方法にはいろんな意見があります。一度は敗退した人たちの戦いだから決勝とは違う評価軸で判断したほうがいい、とか。そんな中で、敗者復活戦の会場が1600名入っていただける大きい会場になりました。そんなにも大勢の方々が選んで送り出してくれるって、説得力があると思うんです。加えて芸人さんの目という“2つの目線”で押し出される1組なら絶対間違いないなと思いました。
◆さまざまな変化のある今年のM-1、見どころや注目ポイントを最後に教えてください。
毎年毎年、何か新しいものをより良い方向に生み出していけたらと思っています。とはいえ、どんな変化があっても、やっぱり見てほしいのは漫才師さんのネタです。いわば異常ですから、8540組を勝ち上がるのって。敗者復活戦を含めて全30組。その異常な戦いを勝ち抜いてきた、とんでもない30組のネタを見てください。
演出面をひとつ言うと、今年は“爆笑が、爆発する。”のコンセプトに合わせて、登場の演出にはすごくこだわったので、あのせり上がりからの登場シーンには注目してほしいです!
●text/松田優子
番組情報
『M-1グランプリ2023』
ABC・テレビ朝日系列全国ネット
2023年12月24日(日)午後6時30分 ~10時10分
『M-1グランプリ2023 敗者復活戦』
ABC・テレビ朝日系列全国ネット
2023年12月24日(日)午後3時~6時30分
『速報!M-1ネクストデイ ~王者誕生までの舞台裏~』
ABC・テレビ朝日系列全国ネット
2023年12月25日(月)午後8時〜
※すべて生放送
番組公式HP:https://www.m-1gp.com/
©M-1グランプリ事務局