12月24日クリスマスイブ、漫才日本一を決める「M-1グランプリ2023」決勝が行われ、令和ロマンが第1回の中川家以来となるトップバッターからの優勝を果たした。今年も決勝に向けて、M-1ファイナリスト全組インタビューをカウントダウン掲載してきたTV LIFE webでは、敗者復活戦から優勝者記者会見まで現場取材を敢行した。
今年のM-1は、大きく変わった点がいくつかあった。その1つが敗者復活戦だ。昨年まではテレビ朝日横の屋外ステージ(六本木ヒルズアリーナ)で行われ、生放送を見た視聴者が投票する形式だったが、今年は会場を新宿住友ビル・三角広場へ移転。観客の中から当日、ランダムに選ばれた500人のジャッジで決まった3組から、歴代王者を中心とした5人の芸人が投票し、決勝に送り出す1組を決定するというルールになった。
敗者復活戦会場に集ったのは、お笑い熱の高い観客1600人。高い吹き抜けの天井から陽光が差し込み、閉塞感のない好ロケーション。そして何より昨年までの屋外とは違い寒さを感じずにいられたことから、観客側も固くならずに鑑賞していたように見受けられた。決勝直前に話を聞いた本大会の総合演出・下山航平氏(https://www.tvlife.jp/pickup/647675)がこの会場について、「パッと見た時に『あ、ここでやりたい』と思った」と言っていたのもうなずけるいい会場だった。
そんな中で敗者復活戦を勝ち上がったのはシシガシラ。ただ見せるだけの4分間ではなく、“1600人のお笑いファンの前でネタをする”ことを踏まえたネタ運びで、ツッコミ・浜中が観客に同感を求めるジェスチャーをした際には「分かった分かった」とばかりにうなずく人がいたほど、観客の感情をも掌握。審査員のアンタッチャブル・柴田に「会場の空気をつかむって、こういうことなんだなと思った」と言わしめる圧巻の出来で、勝ち抜けが決まった際には大歓声が上がり、頭上で拍手をする観客が多数いたほどの興奮状態だった。
午後3時から敗者復活戦が行われ、そのまま午後6時半からの決勝につながる。どちらも取材する記者は新宿から六本木・テレビ朝日へ急いで移動。大画面が備わるモニタールームで戦況を見守った。
「令和ロマン、このままいきそうじゃない?」や、決勝進出者発表会見を知る記者から「真空ジェシカが優勝したら、会見どうなるだろうか…」などの声が聞こえるなか、午後10時すぎに令和ロマンの優勝が決定。最終決戦が7票中4票の僅差、トップバッターからの優勝という展開に、モニタールームでも例年にない「おぉ~!」と大きめの歓声が上がった。
放送終了から20分ほど過ぎたころ、令和ロマンが優勝会見場も兼ねたモニタールームに姿を現した。髙比良は電話で話しながら入室。登場からひとボケかましてくるのもあまりない光景だ。
質疑応答が始まると、主導権は完全に令和ロマンのものに。当然に聞こえるかもしれないが、基本的に記者会見は司会の回しによって進むところ、彼らは形式ばらず、さりとて進行の邪魔をすることなくフレンドリーな雰囲気で質問に答えていったからだ。
まずは感想を、と振られ「トップバッターで(高得点で)生き残っちゃったんで、その責任を果たさないととは思っていた」と髙比良が述べると、松井は「ヴレジイ」と先輩のネタを使って回答。その後も質問者と会話をしながら、時にボケながら答えていると、記者からは「真面目にいい話を」と異例のリクエスト付きの質問が。それにもまずはボケから入り、真面目な秘話で締める見事な返しを見せた。
なかでも一番思いがあふれていたのは、最終決戦で4票対3票と接戦を繰り広げたヤーレンズについて聞かれた場面。決勝前のインタビュー(https://www.tvlife.jp/pickup/646560)でも2人は、決勝に行くべく毎月ツーマンライブをやってきたことを熱く語っていた。「その2組両方とも決勝に行くって、けっこうすごいことだと思います。次は2組で最終決戦に残りたいです」と言っていたことが最高の形で成就した結果に、松井は「あれが僕たちが目指した世界です」と胸を張った。
かたやヤーレンズも同インタビュー(https://www.tvlife.jp/pickup/646055)で、「令和ロマンには本当に感謝ですね。彼らのほうが人気があるし、こんなおじさんとよくライブやってくれたなって。どっちかがM-1を獲っても、来年もライブやろうと話しています」と明かしていたが、まさかそのライブが「M-1ワンツーフィニッシュ」の2組でのライブになるとは思っていなかっただろう。
質疑応答が終わり、写真撮影へ。テーブルを動かすために卓上に置かれたトロフィーを持つように言われた松井は、「そうか、これ僕のか~」とつぶやきながら手にして笑顔に。単なるひとボケかもしれないが、栄冠を手中にした実感があふれたようにも聞こえた。
近年は決勝終了後も打ち上げ生配信など、多くのコンテンツが繰り広げられることから会見の時間もタイトになっている。そんな中で、写真撮影中も撮影に支障がない程度に記者陣へ語りかけ、急かされながらもそれを制しつつカメラマンのリクエストに応え続ける。さまざまなポーズや動きを自ら繰り出すなど、サービス精神旺盛な面も見せた。
いよいよタイムリミットが来ると、室内に向かって「よいお年を~!」と声をかけて退室していった2人。するとまたすぐにドアが開き、「携帯(を置き)忘れた…!」と腰を低くしながら髙比良がひょこひょこ登場。最後にそんなかわいげまで見せて去っていった。
決勝でのネタも1本目はしゃべくり漫才、最終決戦ではコント漫才と戦略的に系統を変え、会見でもボケと真面目の緩急を自在に操り、その地力の高さを見せつけた令和ロマン。さまざまな色を持つ若きチャンピオンが、2024年のエンターテインメントシーンを沸かせることが容易に想像でき、ワクワクするクリスマスイブの夜だった。
●text/松田優子
番組情報
『速報!M-1ネクストデイ ~王者誕生までの舞台裏~』
ABC・テレビ朝日系列全国ネット
2023年12月25日(月)午後8時〜9時54分 ※生放送
番組公式HP:https://www.m-1gp.com/
©M-1グランプリ事務局