愛媛県宇和島市が舞台の爽やかなヒューマンドラマ「海すずめ」が、7月2日(土)に公開される。市立図書館の自転車課に勤める本作の主人公・雀を演じるのは、アクション女優として活躍するいっぽう、『ワカコ酒』「ドクムシ」といった幅広いジャンルの作品に出演する武田梨奈さん。宇和島オールロケとなった、本作の温かい撮影現場を振り返ります。
撮影以外でも宇和島の皆さんとずっと一緒にいた気がします
――小説家になる夢を諦め、地元・宇和島の市立図書館で働く雀ですが、彼女はどんな人物なんでしょうか?
最初は仕事のやる気もないですし、投げやりな印象の女の子ではありますが、実はすごく芯が強くて、人前では絶対に泣きません。撮影では、テストで涙を流したこともあったんですが、監督から「雀はこの映画では絶対に涙を見せないでほしい」と強い要望がありました。なので雀が抱える心の中のもやもやした気持ちを表情やリアクションなど、細かいしぐさに込めて演じました。
――実際に作品をご覧になっていかがでしたか?
本編のほとんどに出させていただいたのですが、自分の演技以外に後ろの景色や周りの空気感、音楽などで「海すずめ」の魅力がどっと増えた感じがしました。作品の中に橋ができ上がっていくシーンが出てくるんですが、実はその過程をリアルタイムで撮っていたんです。だから、この作品にはドキュメンタリー要素も含まれていると思います。
――撮影は、宇和島でのオールロケだったとお伺いしました。
実は、この作品に出るまで宇和島がどんなところか知らなかったんです(笑)。でも、街の皆さんもスタッフとして一緒に作品を作ってくださって、撮影はすごく楽しかったです。お昼ご飯を作ってくださったり差し入れを下さったり、みんなで一緒にご飯も食べました。撮影以外でも街の皆さんとずっと一緒にいた気がします。
――図書館利用者に自転車で本を届ける自転車課。劇中では、自転車に乗っているシーンもたくさんあります。
自転車は姿勢が大切だと聞いたので、撮影前に少し練習させていただきました。雀は地元になじんでいる女の子という設定なので、とにかく街になじむことを意識していました。だから、ホテルで自転車を借りて街を走り回ったりもしましたね。自転車で走るシーンは、長回しで撮ることが多かったんです。
――アクション女優としてもご活躍されている武田さんですが、自転車にはまた違った難しさがあったのでしょうか?
ありましたね~。普通の自転車と違ってロードバイクは結構前かがみになるので、それがすごく難しかったです。足腰だけは普段から鍛えているので、筋肉痛は意外と大丈夫でした(笑)。
小林豊(BOYS AND MEN)さんは人を引き寄せる天才です
――雀の同僚・岡崎(小林豊)との交流も描かれます。
雀も岡崎も過去にトラウマを抱えている者同士なので、あまり言葉を交わさなくても何となくお互いを理解し合ってるんだなって台本を見て感じました。
――小林さんの印象は?
豊さんはバラエティでも活躍されていてすごいですよね。豊さんは私より年上なんですが、自然とこちらに気を遣わせない空気を持っている方なんです。現場でもそうですし、皆でご飯を食べに行ったときも誰とでも友達になるんですよ。ロケのとき、豊さんが回りの方に「おー久しぶり!」って声をかけてすごく話が盛り上がっていたんです。「知り合いですか?」って聞いたら「昨日友達になった」って(笑)。豊さんは気づいたらおばさまの輪にも混じっていて、両手にお菓子いっぱい持って「おばちゃんがくれたー!」って言って現場に来るんです。人を引き寄せる天才ですよね。あと、豊さんと一緒にいると、私もおいしいものが食べられるっていう(笑)。
――雀が実の祖母のように慕う島民・トメ役として、吉行和子さんが登場されます。
最初はすごく緊張したんですが、現場に入った途端、吉行さんがトメおばあちゃんになっていたので、私も肩の力を抜いてその場にいられました。撮影数日目に吉行さんとご一緒したんですが、そのとき、監督や助監督さんから「前はちょっと探ってる感じがしたけど、吉行さんと一緒にいたらいきなり雀になったね」って言われたんです。吉行さんが自然とそういう空気感をつくってくださったんだと感じました。
――武田さんは神奈川県ご出身ですが、今回の宇和島のほか、撮影で地方を訪れることも多いですよね。
帰る田舎があるってすごくうらやましいと思います。方言もそうですし、その街にしかないものや、帰ったからこそ味わえるものってあるじゃないですか。宇和島もそうですが、地方に久々に遊びに行くと、皆さんが「おかえり」って言ってくださるんです。この間、久々に宇和島に行ったときも「久しぶり。おかえり」と迎えてくださいました。作品を通じて、自分の田舎ができている気がしてすごくうれしいです。
――最後に、これから映画を見る方にメッセージをお願いします。
自転車で本を届けに行ったり、本を書いたり、お祭りだったり…この作品は、現在あまり描かれない「人と人がアナログで通じること」をテーマにしています。今の時代だからこそ見てもらいたいので、ぜひご覧ください。
PROFILE
武田梨奈
●たけだ・りな…1991年6月15日生まれ。神奈川県出身。AB型。
映画「ハイキック・ガール!」「かぐらめ」「進撃の巨人」「ドクムシ」などに出演。日本とミャンマー合作の主演映画「Yangon Runway」の公開が控えている。セゾンカード・UCカード2016年新CMに出演中。
公式ブログ(http://ameblo.jp/rina615/)
作品情報
「海すずめ」
7月2日(土)有楽町スバル座ほか全国ロードショー
■STORY
愛媛県宇和島市。小説家デビューを果たすも2作目が書けない主人公の赤松雀(武田)は、地元に戻り、自転車で図書を届ける市立図書館の自転車課で働いていた。ある日雀は、図書館の利用者・トメ(吉行)から、雀の働く図書館にまつわる興味深い話を聞く。そんな中、街は「宇和島伊達400年祭」の武者行列で必要となる刺繍図録を探し騒ぎとなっていた。いっぽう、図書館では自転車課の廃止案が浮上していることも判明。雀は資料となる本を求め、そして自転車課廃止を阻止するべく走り出す。果たして刺繍図録は見つかるのか!?
■STAFF&CAST
監督・脚本:大森研一
出演:武田梨奈、小林豊、内藤剛志、岡田奈々、目黒祐樹、吉行和子ほか
主題歌:植村花菜「ただいま。」
配給:アークエンタテインメント
公式サイト(http://umisuzume.com/)
(C)2016「海すずめ」製作委員会
●photo/中村圭吾 text/金沢優里 hair&make/石野敦子 styling/山本真里江 衣装協力/ ロイスクレヨン(ノースリーブニット、キャメルガウチョ、カーディガン)、グロッセ(ピアス、ブレスレット)