声優・直田姫奈がアーティストデビュー「役やキャラクターが私を守ってくれた。その鎧がはがれたとき、自分はどうなるんだろう」【インタビュー】

音楽
2024年04月12日

直田姫奈アーティスト写真

『その着せ替え人形は恋をする』の喜多川海夢役や『BanG Dream!』シリーズの桐ヶ谷透子役などを担当する声優・直田姫奈がアーティストデビュー。2024年4月17日(水)にデビュー曲「ラベンダー・ブルー」を配信リリースする。小さい頃からピアノを習い、学生時代にはYUIに憧れてギターを始めた彼女。常に音楽は身近にあったという彼女が「声優」「音楽」にかける思いとは。インタビューで筆者は、“作品の世界に浸ること”が大好きな彼女だからこそ伝えられるものがあると感じた。

私のなかで、役・キャラクターは鎧なんです

◆アーティストデビュー、おめでとうございます。デビューの相談がきたときは、どんなお気持ちでしたか?

自分がするとは思っていなかったので、すごくビックリしました。うれしいとかじゃなくて「本当……ですか? 誰かと間違えていませんか?」というのが正直な気持ちでしたね(笑)。それから自分の曲ができあがっていくなかで、「あぁ、デビューできるんだな」って少しずつ、ビックリからうれしいという気持ちに変わっていきました。

◆アニメやゲームのコンテンツで音楽活動をすることもあったと思います。それでも自分名義のソロというは、ちょっと信じられなかった。

はい。客観的に見ても、自分がこの選択肢を選んでいるのが新鮮というか。新しい道に進んでいるなと感じています。

◆ということは、例えばもっと早くに声がかかっていたら「ちょっと今は……」という気持ちになっていたかもしれない。

もっとビビッていたと思います。「自分にはちょっとそれは背負えないかも」と悩んでいたんじゃないかな。私、これまでの活動では、役に助けてもらっている部分がすごく大きかったんです。私のなかで、役・キャラクターは鎧なんですよ。

◆鎧、でしょうか。

例えばステージに立つときに私だけだったら、めちゃくちゃ緊張して「笑えません」となるのですが、役が笑うなら、笑えるんです。そういうことができるんですよね。役が私を守ってくれました。その鎧がはがれたときに、自分はどうなるんだろう。特に自分名義でステージに立って歌うことは未知の世界です。それを乗り越えたらもうひとつ精神力が強くなるのかもしれません。

◆今回アーティストデビューしようと思えたのも、自分の成長につながるかもしれないと感じたから。

そうですね。いろいろな仕事を経験させていただくなかで、やれることをやれば自分にいいものが返ってくると実感することが多かったんです。だから、今回のアーティストデビューでも得るものがあるんじゃないかなと。そういう気持ちの変化がありました。

◆続いて直田さんの音楽のルーツについてお聞きします。小さい頃から音楽は好きでしたか?

そうですね。幼稚園ぐらいからピアノをやっていました。母親がずっと教えてくれていたんです。家にピアノがあるのが当たり前だったので、音楽はわりと身近にあるものでした。ピアノは、中学生になるくらいまでは続けていましたね。その後に自分からやりたいと言って始めたのが、ギターでした。お年玉などでお金を貯めて買ったんです。すごくハマりましたね。常に楽器には触れてきた人生だった気がします。

◆ピアノは続けようとは思わなかった?

ピアノがあまり好きになれなかったんです。母親が教えてくれて、ある程度は弾けるようにはなりましたが、自分で進んでやっていなかったこともあってか、上達するのが遅くて。それに比べて自分からやりたいと言ったギターは、めっちゃ練習はするし、上達もどんどんしていきました。ピアノは30分するだけで疲れていたのに、ギターは3時間弾いていても疲れなくて。自分の気持ちでこんなにも上手になる・ならないが変わるんだなと、高校生ながらに思いましたね。

◆ギターに憧れたきっかけは?

YUIさんです。当時は自分の部屋でYUIさんのライブDVDを流しながらギターを弾くというのが、最高の遊びでした。まるでYUIさんになったかのような体験をするのがすごく楽しくて。私、結構こじれているんですよ(笑)。

◆こじれている(笑)。人前でやってみようという気持ちにはならなかった?

全然。むしろ「見ていらん(見なくてもいいよ)」という気持ちでした。頭のなかではYUIさんのように、商店街のなかでろうそくを付けて演奏している想像はしていましたが……。本当に趣味として謳歌していたって感じです。

◆そうやって家で弾くのが楽しかった。

そうなんですよね。私、世界に入り込むのがたぶん好きなんです。アニメとか漫画とか小説とかは、自分じゃない世界にどっぷりと浸かれるじゃないですか。自分でいろいろなことを考えて世界に浸るという行為が、私は大好きなんだと思います。

◆そうしてずっと続けていたギター。事務所のプロフィール欄には特技として書かれていますね。

本当は書きたくないんです(笑)。特技なんておこがましくて言えないとは思っているのですが、他に書くこともないので……。ちょっと小声で「特技:ギター」と書いています。

◆人前で弾く、披露するとなったときは、それなりのものをちゃんと届けたい。

お客さんは自分の時間をわざわざ使ってくれて、お金を払ってくれている訳ですから。自分のステージ・イベントに来てくれるというのがどれだけありがたいことなのか、仕事を重ねていくなかでより感じるようになりました。普通なことじゃないですからね。「この時間を使ってよかった。お金を払ってよかった」と思ってもらえる、もっと言えば、プラスアルファになるものを返していくのが、自分の仕事だと思っています。

◆コンテンツのイベントなどに来てくださる方にも、見合う対価分、楽しんで帰ってもらいたい。

むしろ、お土産を持って帰ってほしいなと思っています。

◆おもてなしの精神ですね。

日本人なので(笑)。おもてなししていきたいと思います。

◆先ほどYUIさんに憧れてギターを始めたとおっしゃっていましたが、これまではどういうジャンルの音楽を聞いてきましたか?

YUIさん一筋ではあったのですが、学生時代だとBUMP OF CHICKENさんやRADWIMPSさん、ONE OK ROCKさんなどの曲も聞いていましたね。あとはコレサワさんの曲もすごく好きで、よく聞いています。どちらかと言うと楽器を持っている方々に惹かれがちだったかな。アイドル系でハマったのはモーニング娘。さん。小学生の頃は見よう見まねで、「恋愛レボリューション21」を踊っていましたね!

声優も音楽も「世界に浸れるもの」

◆アーティストデビューに合わせて、この度、配信シングル「ラベンダー・ブルー」がリリースされます。最初に楽曲を聞いたときの印象を教えてください。

すごくかわいいポップな曲で、楽器も聞きやすくて私の好みに近いと感じました。一方で歌詞は、めちゃくちゃ失恋をしている曲でして。楽曲だけを聞いたときと歌詞を見たときで、印象がガラッと変わりました。まっさらな状態で聞いたあとは、歌詞を握り締めて聞いてほしいです。

◆そうすると、考察がはかどる。

めちゃくちゃはかどるはずです。音は同じでも、漢字が異なると意味が違う日本語ってあるじゃないですか。歌詞ではその言葉をくっつけて、またさらに違う意味ができているんです。もう私は、歌詞の意味が気になって仕方ありませんでした。歌だけど物語のようにも取れる曲なので、それぞれ思いをはせながら聞いてほしいです。

◆ソロアーティストとしての初のレコーディングはいかがでしたか?

とても難しかったです。これまでのキャラクターソングでは「この子だったらしゃくるな」とか、何となく想像しながら歌えたのですが、直田だったらどうするのかというのがイメージできなくて。それは何も思い浮かばないということではなく、表現の仕方が何パターンか出てきたときに、直田姫奈ならどれを選ぶのかというのが、分からなかったんです。自分をどう見せたいのか考えたことがあまりなかったので、頭を抱えましたね。

◆例えばA・B・Cという3つの表現方法があったときキャラクターソングなら「この子はBを選ぶ」という考え方で進めるけど、自分だったら自分で決めないといけない。

そうなんです! 今までやってきたことと全然違う考えをめぐらさないといけず、その時点でひとつ学びがありました。

◆その他、学びがあったことは?

マイクを通さずに家で練習していた時は「これぐらいでも聞こえるし、表現的にも声量はそれほどいらないのかな」と思っていたのですが、実際は足りないということがあって。とはいえ、声量を減らさずに求めている表現を出すために自分の体をどう使えばいいのか、ということを考えました。今回は一度レコーディングをしてみて、数日後にもう一度レコーディングするという形で進行したんです。そのおかげで、実際はどういうふうに聞こえるのかが分かって、調整することもできました。他のオリジナル曲にも応用できましたね。

◆オリジナル曲、他にもあるんですね! それは5月4日に開催される「1st LIVE – Sings -」でも披露される予定?

はい。まだ「ラベンダー・ブルー」しか世には出ていませんが、1stライブはぜんぶオリジナル曲で構成する予定です。恐らくみなさんは、多くを知らない状態でライブに来ていただくことになるんじゃないかな。

◆なんと!

たぶん、みなさんが想像しているよりも新曲は多いです。「えっ、そんなにやるんだ!」ってなるかも。もしかしたら「どういうノリが合っているの?」という状態が終始続くかもしれませんが、そんなライブそうそう味わえないだろうから、一度ぐらいは味わってみてもいいんじゃないでしょうか!?

◆それは、確かに。どんな曲が次は来るんだろうという楽しみ方もあるかもしれません。

「この曲が来たから、そろそろ終わりなんじゃない?」みたいな感じも、たぶんないまま終わっていくと思います。時間を忘れて楽しんでほしいですね。

◆歌う側としてはプレッシャーもあるのでは?

はい! あっ、本番当日も150%緊張していると思います。本当に、どうなるんでしょう。自分でも分かりません。逃げ出さないようにだけ、気をつけようと思います(笑)。

◆他のオリジナルソングはどんな方向性の曲なのか、ヒントを教えてください!

ライブに向けて制作していただいた曲なので、基本的にはライブで盛り上がる楽曲ばかりです。すごいバラードとかそういうのはないかも。個性豊かな楽曲たちが集まっていますが、どれも詞にも注目してほしいです。あー! 本当は早く語りたいんですよ! 例えば曲同士がちょっと関係しているものとか……。物語になっているんですよ。一曲、一曲が分厚い文庫本の分量と思えるくらい、壮大なものが詰まっています。まずはライブに来て、どういう曲なのか体感してみてほしいですね。

◆そこまで歌詞を考察して大事にしてくれていると、作詞された方もうれしいと思います。

そういう曲がもともと大好きということもあるので。みなさんにもそういう曲のよさを知ってもらいたいです。自分の好きなものを知ってもらえることは、やっぱりうれしいので。

◆直田さんは特に詞を大切にしていきたいアーティストなのかもしれないですね。

それ、めっちゃいいですね。次からそう言っていこうかな(笑)。私は詞を大切にしていくアーティストになりたいと思います。

◆貴重なお話ありがとうございました。最後に、直田さんにとって「声優」「音楽」とはどのようなものですか?

声優も音楽も「世界に浸れるもの」だと思っています。それがなかったら、人生の大半は何で楽しんでいたのか分からないくらい、自分にとって大好きなものですね。

◆「世界に浸る」というのが直田さんのひとつのキーワードになっていそうです。

言っちゃえば、「妄想」なんですけど(笑)。でも、それが楽しいですし、自分にとっては大切なことなのかなと思っています!

「ラベンダー・ブルー」ジャケット写真
「ラベンダー・ブルー」ジャケット写真

●text/M.TOKU

PROFILE

直田姫奈
●すぐた・ひな…4月17日生まれ。兵庫県出身。O型。俳協所属。主な出演作は『その着せ替え人形は恋をする』喜多川海夢役、『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』アゲぴぴ役、『ユニコーンオーバーロード』スカーレット役など。『BanG Dream!』プロジェクトのバンドユニット「Morfonica」では桐ヶ谷透子役としてギターを担当。第17回声優アワードで、新人声優賞を受賞している。

リリース情報

デビューシングル「ラベンダー・ブルー」
2024年4月17日(水)配信スタート
作詞:金子麻友美 作曲:柴田 尚 編曲:リアジュボーン
音楽ストリーミングサービスおよび主要ダウンロードサービスにて配信

ライブ情報

「直田姫奈 Hina Suguta 1st LIVE – Sings -」
2024年5月4日(土)SUPERNOVA KAWASAKIにて開催
<昼公演>開場14時30分 / 開演15時
<夜公演>開場17時30分 / 開演18時

チケット料金
全席指定8,800円(税込)
※入場時にドリンク代が別途必要となります
※未就学児入場不可
※お一人様1公演につき4枚まで

直田姫奈アーティスト公式サイト
https://columbia.jp/sugutahina/

直田姫奈公式X
https://twitter.com/hina_suguta

直田姫奈音楽スタッフ公式X
https://twitter.com/staff_hina

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