伊藤沙莉が主演を務める、連続テレビ小説第110作『虎に翼』。日本初の女性弁護士で、後に裁判官となった女性・三淵嘉子をモデルに、困難な時代に道なき道を切り開き、迷える子供たちや追い詰められた女性たちを救っていく、情熱あふれる法曹たちの物語を極上のリーガルエンターテインメントとして描く。
そんな本作で、主人公・猪爪寅子(伊藤)と同じ明律大学生であり、法学部に通う男子学生・花岡悟役で出演中の岩田剛典さんにインタビューを敢行。役柄への思いや伊藤さんの印象、花岡の新たな一面が見えた第19回の撮影秘話などを聞きました。
◆岩田さんは本作が朝ドラ初出演となりますが、オファーを受けた際の心境や周囲の反響を教えてください。
僕は幼少期の頃から朝ドラが生活の一部という家庭で育ったので、まず両親が喜ぶだろうなと思いました。そして、発表後には友人をはじめ、プロダクションの先輩や同期、本当にたくさんの方から「おめでとう」と言っていただいて。ドラマの出演が決まっただけで「おめでとう」と言ってもらえることはなかなかないので、朝ドラの影響力の大きさというものを身をもって感じました。
◆ドラマや映画など多岐にわたって活躍されている岩田さんですが、これは朝ドラならではだなと感じたことはありましたか?
撮影前に毎週リハーサルをするというのは他ではやらないことなので、そこは大きな違いだと思いました。あと、セットでの撮影だとカメラの台数が多いんです。でも、本番はほぼほぼ一発でどんどん進んでいくので、撮影のスピードは早くて。通常の連ドラよりひとつ行程が多いという意味でも、すごく丁寧に作られているんだなと感じました。
◆これまで花岡をどのようなキャラクターだと捉え、どのように演じていましたか?
当時は男尊女卑の時代で、花岡自身もそれにたがわずいるのですが、母親を亡くしていることもあり、その生い立ちから女性に対して優しさを見せる一面もあって。本心では女性が夢を追いかける姿を応援したいと思いながらも、おそらくカースト上位生徒なのもあり、男としての見栄も守りながら女性陣と付き合っていく…というところで、ある種女性からすると彼は本心でそれを語っているのか、はたまた違うのかが見えないような。そういう意味では、序盤はちょっとミステリアスに捉えられたらいいなと思いながら役と向き合っていました。そして、ベースで言うと学生なので、声のトーンや表情、姿勢などは若さを意識しながらやっています。
◆そんな花岡と共通点を感じる部分、逆に違和感を感じる部分はありましたか?
僕、一応大学を出ていて法学部出身なんです。政治学科だったので、彼らとは違って法律を専門に学んでいたわけではないのですが、こうした法を扱うドラマに出演でき、さらにはそれが初めての朝ドラというのはすごく縁を感じました。そして、違いを感じた部分で言えばやはり男尊女卑という時代背景ですよね。こんなにも女性に発言権や決定権が与えられなかったんだ、というのは驚きを感じました。
◆女性からモテるという点も共通点では?
なるほど(笑)。確かに劇中ではそういう描写も多いのですが、僕自身は男子校だったのもあり、恋文をもらうなんてこともなかったです(笑)。なのでここに関しては共感もなく、どちらかというとうらやましいやつだな、と思いながらやっていました。
◆花岡が初登場シーンで発した「ごきげんよう」も話題を呼びました。
「ごきげんよう」って、いい意味で変ですよね(笑)。脚本チームや監督が花岡のファーストインプレッションにインパクトを、と作ってくださったのだろうなと受け止めています。ただ、ここでの花岡の印象というのがその先で彼の二面性が見えてきた時にギャップとして効いてくるだろうなと思ったので、ひたすら元気に爽やかに映るというのを意識して臨みました。
◆第18回(4月24日放送)では寅子たちとピクニックに行き、花岡が崖から転落するという衝撃シーンが展開しました。ロケでの撮影秘話があれば教えてください。
撮影は昨年10月だったと思うのですが、めちゃめちゃ暑い日で、みんなで日傘を差しながら、水分を取りながら…という感じでやっていました。なおかつ山を登る前から僕が転落するまでのシーンを1日で撮らないといけなかったのですが、時間が結構ギリギリになってしまって…。最後、僕がワイヤーで吊られながら落ちていくシーンは、もう他の役者さんがいらっしゃらない中、ひとりで居残りでやっていました(笑)。17時半にはたぶん日が沈んでしまうという状況だったのですが、どんどん進めていき、なんとか延泊せずに済んだという感じです(笑)。
◆続く第19回(4月25日放送)では、花岡が涙ながらに自身の本音を梅子(平岩紙)へと打ち明け、ざんげをするシーンが登場しました。花岡にとっては、ひとつターニングポイントになったのではないでしょうか。
そうですね。もうこの役はここに全部集約されているかなというぐらい、花岡というキャラクターを映し出したシーンだと思います。ある意味、今までの花岡は全てが前振りといいますか、ここにつながっていたのかなと。僕にとっても、花岡にとってもこのシーンは重要なものになるなと思っていたので、より丁寧に向き合って臨んでいます。花岡の家庭の事情などを自分の中で膨らませながら、湧いてきた感情のままに演じました。
◆花岡と戸塚純貴さん演じる同級生・轟太一との友情にも胸が熱くなりますが、戸塚さんとは何かコミュニケーションを取られたのでしょうか。
轟とは思想が近く、女性が夢を追うことに対して肯定的な2人で、最終的には同志といいますか、同級生の中でも近しい存在になれたのかなと思います。プライベートな話でいうと、僕は万年“ゴルフやるやる詐欺”をしているのですが(笑)、戸塚君も最近ゴルフを始めたそうで、お互いできるようになったら一緒にコースを回りたいねと話したりもしました。
◆撮影を経て、寅子役を演じる伊藤さんの印象はいかがでしたか?
堂々とされていますよね。演技もどっしりとしていて、現場のムードメーカーでもあり、めちゃめちゃ安心感のある座長だと思います。そして、大変なスケジュール感でやられているにも関わらず、共演者やスタッフの皆さんに自ら声を掛けられていて、そういう姿を見ていると“この人のために自分も頑張りたいな”という思いになって。心身ともに強いパワフルな女優さんで、今回共演できてすごくうれしかったですし、また機会があれば別の作品でもご一緒できたらいいなと思います。
◆次第に花岡は寅子に熱い思いを抱きますが、岩田さんが彼女に感じる魅力はどのような部分でしょうか。
物おじせず、何事もしっかり自分の意見を面と向かって言う、というところは花岡が憧れる大きな要素だったのかなと。恋心でありつつ、ある種自分のなりたい理想像を体現しているのが寅子だったのかなと思います。
◆最後に、今後の見どころをお願いします。
当初は鼻に付くキザなキャラクターとして描かれてきた花岡ですが、この後も徐々にその内面が見えていきます。寅子との恋愛模様をはじめ、同じ学び屋で学んだ仲間たちがそれぞれどんな後生を送るのか…。そこも人それぞれで十人十色なので、今後もぜひ物語を楽しんでいただけたらと思います。
PROFILE
岩田剛典
●いわた・たかのり…1989年3月6日生まれ。愛知県出身。B型。EXILE、三代目 J SOUL BROTHERSのメンバーとしても活躍。現在、日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)にも出演中。
番組情報
連続テレビ小説『虎に翼』
NHK総合ほか
毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほか
●text/片岡聡恵