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◆今回、ドラマ化、映画化と映像化される本作の魅力はどこにあると思われますか?
本作は、ベースの形こそ恋愛ものですけど、第三者的な、当て馬的な人がいて嫉妬したりさせたりみたいなこともなく、本当に2人の、ほぼ2人しか出てないというミニマルなやりとりの中で物語を成立させている。高木さんが西片を好きっていう気持ちがある前提でのからかいだったり、小豆島っていう島で撮っていることもありますけど、世代関係なく、みんながその情景として、どこか懐かしめるような空気や、重ねられるような時間だったりが魅力かなと思います。僕の子供たちが中学生と小学生なんですけど、今回、監督のオファーを受けて、原作の漫画を頂いて家に置いておいたら、子供たちもすごく楽しんで読んでいて、そこからアニメも楽しく見ていて。高木さんと西片のキャラクターの面白さに目がいきがちですが、セリフの1つ1つとか、その挙動の1つ1つがものすごく繊細に作られていて。セリフの順番1つ違ったら、もう壊れてしまうような場面がたくさんあって。そこは漫画を読んだ時に惹かれた部分でした。
◆小豆島での撮影で特にこだわったところはありますか?
どう景色を取り込むかはこだわりましたね。本当にそこで生活している2人に見えた方がいいので、取り立てて観光名所のような場所で撮るというよりは、そこに普通に2人がいるみたいになればいいなというのはありました。もちろん、原作やアニメで「ここ行ってたよね」という本屋や神社などとリンクさせる良さもあって、それらは取り入れましたが、本当に島で暮らしている感じになったらな、とは思っていました。
あとすごく印象的だったのは、ロケハンしたときに助監督さんになんとなく立ってもらって、この辺で撮るかなとカメラマンと相談していた場所に、いざ撮影の本番のときに、中学生のキャストが立つと、月島さんも黒川さんも小さいんですよ。中学生って物理的に小さいんです。それにものすごく感動して。大人が立った時とは全く雰囲気が違っていて、それだけでカメラマンの士気も上がっていましたね。
あと、海がとても穏やかなんです。それは場所としてすごく特殊でした。1話の夕焼けも広々とした海水浴とかできそうな浜辺も一応ロケハン時には見たのですが、それよりは小さい浜のような、自転車で降りていけるぐらいのこっそりとした場所を探そうと。2人だけが知っているこぢんまりした場所がいいなみたいな。そうしたらそこで生活している人たちの場所になるのではないかなと、意識して見つけていきました。
一番重要視して探した場所のひとつが、登下校の道です。ドラマにも映画にも出てくるし、本当にこの道では何回も撮影するので、結構時間をかけてロケハンして遠くに海が見えるすてきな場所を探しました。
ロケハンしていて覚えているのは、既に島のあちこちに「高木さん」がいたこと。小豆島は原作者の山本(崇一朗)先生の出身地で、アニメの舞台にもなっているので、あちこちに高木さんがいるんです(笑)。撮影でお世話になった中学校の図書館や、島の本屋さんには、漫画「からかい上手の高木さん」のコーナーができていて。さすがにそれが写ってしまうと、パラレルワールドになってしまうから、撮影の間だけ片付けさせてもらいました。島への行き来に利用していたフェリーにも「からかい上手の高木さん」のラッピングがされたものがあるぐらい、小豆島ではすごく愛されている作品なんだなと感じました。
◆フレッシュなキャスト陣で、大変だったことはありますか?
特にはないですね。この子たちで良かったなっていうことばかりでした。レギュラーエキストラとして毎日撮影へ来られる島の方や、俳優事務所の方も含めて教室のクラスメイトを作っていたんですけど、僕が俳優ではない子にもせりふを足すから、みんながちょっと焦っていたりはありました(笑)。この子に芝居をさせるの?みたいな。でもそれがなじむぐらい、みんな一緒になって仲良くしてくれていたので。それは年齢的なことがあるのか、月島さんや黒川さんがそういう風に現場にいてくれたからなのか、すごくみんな仲良くなっていて、とても良かったですね。
◆現場で注目していた方はいらっしゃいますか?
高尾役の市村(優汰)さんは、ちょっとせりふを変えたいとアフレコに来てもらった時に、現場とアフレコの期間が半年くらいしかたっていなかったのですが、身長も伸びていて、雰囲気も全然変わっていて、カッコよくなっていて。現場の時にはあんなにもちゃんと中学生でいてくれたのに格好もオシャレになっていて(笑)。そうだよな、変化する子は一番変化する年頃だよなあと、しみじみ思いました。
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◆5話のバレンタインもすごく印象的ですが、裏話はありますか?
浜口(永原諒人)と北条(早瀬憩)ペアのところは、浜口が廊下で360度回ってるんですけど、あれも演出じゃなくて。照れた結果、一周回ってしまったと思うのですが、ちょっと意味が分からなさすぎて最高でした(笑)。それが面白くて、生かしたくて、別のアングルから撮るときも、永原さんに、「また、回れる?」と言ってやってもらったのですが、無理して回っているから、うまくいかなくて。(笑)。そういうのも込みで、好きなシーンですね。
あと、中井(川尻拓弥)、真野(森永怜杏)ペアは特に器用な子というよりは、朴訥で素朴な子たちの方が僕は演出で生かせる気がして、オーディションの時に2人を選びました。2人に限らず、僕が、芝居が「うまい」って感じの子よりも、不器用そうな子たちを好んで選びすぎていたので、「現場が大変になりませんか?」と焦っているスタッフもいましたが(笑)、でもそれぞれがすごく純粋でいてくれたし、テクニカルになってしまうと生まれないものがたくさん撮れた。素朴さって作って生み出せるものではないですからね。バレンタインデー回は面白いですよね。他のキャストたちもたくさん出てくることもあって。
◆8話の見どころを教えてください。
高木さんが引っ越していくという第7話のあとの第8話(最終話)。電話でのやりとりで、お互いの顔が見えないという電話の距離感があるからこそのからかいとか、意図せず起きる西片から高木さんをからかう感じになるところもあって。あと目の前に西片がいないからこそ出せる高木さんの表情があったり、声だけだからできることをいろいろ描いています。2年生から3年生になる新学期に向けての時間になっていますし、映画につながるようなシーンもあるので、ぜひ楽しんでもらえればと思います。
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PROFILE
今泉力哉
●いまいずみ・りきや…1981年2月1日生まれ、福島県出身。2010年に「たまの映画」で商業映画監督デビューし、「サッドティー」「愛がなんだ」「街の上で」「窓辺にて」「ちひろさん」などを手掛けている。
番組情報
ドラマストリーム『からかい上手の高木さん』
TBS系(放送時間は変更になる場合があります。一部地域を除く)
最終回:5月21日(火)午後11時56分~深夜0時26分
地上波放送後、「TVer」「TBS FREE」にて無料1週間見逃し配信
先行配信:地上波放送開始に先行して「Netflix」にて配信中
製作著作:TBS
制作協力:ファインエンターテイメント
原作:山本崇一朗「からかい上手の高木さん」(小学館「ゲッサン少年サンデーコミックス」刊)
脚本:金沢知樹、萩森淳、今泉力哉
主題歌:「遥か」Aimer(SACRA MUSIC/Sony Music Labels Inc.)
プロデューサー:大澤祐樹、森川真行(ファインエンターテイメント)
監督:今泉力哉
©山本崇一朗/小学館 ©TBS