テレビ情報誌「TV LIFE」で、今後さらなる活躍が期待されるネクストブレーク俳優の魅力を紹介する連載「#今旬コレクション」。WEB版では、本誌に収まりきらなかったエピソードをスペシャル動画も交えて紹介します。第84回は現在公開中の映画「みーんな、宇宙人。」に出演中の兵頭功海さんが登場です。
「#旬コレ 7seconds CHALLENGE」兵頭功海
◆まず本作の台本を読んだ感想を教えてください。
正直、一度読んだだけでは物語の想像ができなくて、理解するまでに少し時間がかかりました。でも、難しさを感じた理由は、モジャという架空の生き物がいて、衣装や世界観がほんの少し非現実的であるからで。伝えたいメッセージ自体はすごくストレートで、人間のすてきさと哀れさ、対話の重要性について考えさせられる作品だなと思いました。
◆22年公開の短編映画「モジャ」ぶりにセイヤ役を演じられましたが、久しぶりに演じるに当たり心掛けたことなどはありましたか?
セイヤは誰かの役に立ちたくて“オレオレ詐欺”ならぬ“オレオレありがとう”を繰り返す、ちょっと変わった人で。初めて演じた時は、不器用ながら必死で生きていて、大きすぎるほどの愛情を持った人物だなと思ったんです。そこに関しては本作でも変わっていないと感じたので、二年前と同様に、時に気持ち悪く狂気的に、そしてチャーミングに演じようと心掛けました。
◆狂気と愛らしさという対極の雰囲気を出す上では難しさもありそうですね。
表現の仕方はもちろん、加減が難しいなとも思いました。でも宇賀那(健一)監督は僕のお芝居をしっかりと見てくださっていて、せりふの細かいニュアンスなどもその都度相談しながらできたので、おかげで安心して臨むことができました。
◆この作品に限らず、監督やスタッフさんには自ら進んで相談するタイプですか?
そうですね。ちょっとでも分からないことや引っ掛かるところがあった時は、すぐに相談するようにしています。俳優を始めた頃は「カット、もう1回!」と言われるたびに、何だか怒られているような気分になってしまったり、“全然ダメじゃん”“何で一回でできないんだろう”とネガティブにとらえてしまうことが多くて、質問や相談をすることを恐れてしまっている自分がいたんです。でも、ある時それって違うなと思って。もちろん、うまくいかずにやり直す場合もありますが、基本的にはより良いものを作るためなんだと気づいて、それ以降は自分から積極的に質問や相談をして意見を取り入れるようになりました。
◆本作はオムニバスで兵頭さんのほかに、菊地姫奈さん、西垣匠さん、三原羽衣さん、草川拓弥さん、YUさんといった同世代の方も多く出演されています。他のキャストの皆さんのパートはご覧になりましたか?
三原さんとは以前映画「18歳のおとなたち」で共演したことがあるんですが、前回の作品とは全く違う雰囲気で驚きがありましたね。その他の皆さんもそれぞれの良さがあって、すごく刺激になりました。
◆普段から同世代の俳優さんの活動が刺激になることはありますか?
あります。特に最近はいい意味で刺激になってきました。デビューした頃は、ドラマを見ていて“あの人は出られるのに、なんで自分は出られないんだろう?と卑屈になってしまうこともよくあって。考えれば考えるほど落ち込んでしまっていたんですが、最近は「みんな頑張っているから自分も頑張ろう!」とポジティブに考えられるようになりました。
◆先程のお話にもありましたが、どちらかというと物事をネガティブに考えてしまいがちなタイプですか?
究極のネガティブ志向です、僕(笑)。どちらかというと目の前のことに対して不安や悔しい気持ちを感じて悲観的になりがちで。例えば撮影中に“今の芝居、大丈夫だったかな”と気になってしまったり、次の仕事が決まっていないと“どうしよう”と不安になったり…。でも10年後や何十年先の将来に対しては、なぜか分からないんですが絶対的な自信があるんですよね。上京して仕事を始めた時も「将来は絶対大丈夫だ!」と思っていましたし(笑)。その根拠のない自信のおかげで前を向ける時もあるので、大事なことだなと思っています。
◆ネガティブになってしまった時はどうやって気持ちを切り替えるようにしていますか?
一人で解決する場合もありますが、伊藤あさひ君や綱啓永君など仲のいい俳優仲間に話して気持ちを整理することもあります。同じ職業だからこそ理解してもらいやすい部分もありますし、自然と頼っている部分はあるのかなと。普段はくだらない話ばかりしていますが(笑)、そうやってたわいのない話をする時間もリフレッシュにつながっていると思います。
◆考え方の変化に伴って、お芝居に対しての向き合いなども変わってきましたか?
そうですね。どの現場でも学ぶことは多いのですが、特に『下剋上球児』の塚原(あゆ子)さんとの出会いは大きかったと思います。僕はこれまで演じる役に対して自分らしさみたいなものが見えない方がいいなと思って、役は役、自分は自分、と切り離して考えていたんです。でも、塚原さんから根室役を任せて頂いた理由や、僕が根室を演じる意味などを聞いた上で「あなたがこれまでの経験で感じた感情を役を通して表現してほしいし、その姿が見たい」と言われたときに、すごく腑に落ちたというか。「この人にこの役を任せたい」という理由でキャスティングしていただいているのであれば、なおさら自分らしさを出す意義みたいなものを感じたんです。おかげで、役作りや表現の仕方を含め、自分の芝居の核となる部分がしっかりと作れた気がします。
◆今後出演してみたい作品や演じたい役柄はありますか?
出演したい作品を挙げるとキリがないのですが、中でも特に王道なラブストーリーとアクションに挑戦したいです。ラブストーリーは、純愛系や漫画原作の作品に欠かせない胸キュンシーンを経験する機会が少なかったので、いつかはやってみたいなと思っています。いろんなジャンルで経験を積んで、いつかはムロツヨシさんや鈴木亮平さんのように作品全体をしっかりと背負える頼もしい存在になりたいです。
◆あらためて本作の見どころや楽しみにしている方へのメッセージをお願いします。
本作は短編映画「モジャ」と6話の新作で構成されたオムニバス映画で、6話それぞれにメッセージが込められています。いろいろな悩みや生きづらさを抱えた登場人物たちと、さまざまな色をした毛むくじゃらの生き物・モジャたちが出会って変わっていくさまが分かりやすく描かれていて、短編映画を見てくださった方はもちろん、そうでない方にも楽しんでいただける作品です。僕自身、最初に撮影していた時は、人がモジャに悩みや不安を話してモジャに解決してもらう、というイメージだったんですが、完成した作品を見ると、ただ解決してもらうだけではなくモジャたちも人から学びを得て成長していて。人の目線だけでなく、モジャの目線でも楽しめると思いますし、いろんな角度から見ていただけると、見るたびに違った楽しみ方ができる作品になっていると思います。ぜひ劇場でご覧いただけるとうれしいです!
PROFILE
●ひょうどう・かつみ…1998年4月15日生まれ。福岡県出身。B型。主な出演作はドラマ『下剋上球児』『CODE-願いの代償-』、主演映画「18歳のおとなたち」など。現在ドラマ『9ボーダー』(TBS系)に出演中。8/9(金)公開の映画「ブルーピリオド」に出演。
作品情報
「みーんな、宇宙人。」
現在公開中
監督:宇賀那健一
脚本:宇賀那健一
出演:兵頭功海、菊地姫奈、 西垣匠、 三原羽衣、 草川拓弥、 YU、麿赤兒
公式サイト:https://www.mojamovie.com/
●photo/中村 功 text/矢嶋咲良 styling/Shinya Tokita 衣装協力/ネオンサイン、アイブイエックスエルシーディーエム(IVXLCDM 六本木ヒルズ)