お笑いコンビ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、オアシズ大久保さんとのラジオ番組がスタートした話。(TVLIFE 2024年10月30日発売号より転載)
匂わせたところで嗅ぎに来る人いないだろ
10月からCBCラジオでオアシズ大久保さんとの新番組『大久保佳代子・森本晋太郎 どうぞご自由に』が始まった。
直属の先輩である大久保さんとは定期的にご一緒させていただく機会があり、現在も間接的ではあるが『大久保佳代子のずたぼろゴルフ2』という番組でナレーションを担当しており、大久保さんがティーを指す際にわざとパンチラをしてくる映像に合わせて声を入れさせてもらっている。マネージャーさんを含めた3人でご飯に連れていってもらったこともあり、その時に僕があまりにも薄いリアクションで食事をする様を「あんたはサービス精神がない」と叱られ、5年以上経った今もまるで昨日のことのような熱量でぶり返してくる。
こうして何度もお会いしていくうちに、僭越ながら大久保さんと僕は「あまり執着がない」という共通点があるような気がしてきた。新番組の内容やタイトルを決めるための打ち合わせをスタッフさんたちとしていた時のこと。作家さんがある程度考えてきてくれたコンセプトに僕らは特に意見することもなく首を縦に振り続けた。一番こだわりが出そうな番組タイトルもスタッフさんが素晴らしい案を連発してくれたおかげであれよあれよという間に決定した。唯一大久保さんが仰った「大久保と森本の名前の間にハートを入れてなにかを匂わせるのはどうか」という提案は全員の苦笑いと共に無視されていた。
思えば僕が大久保さんと共演させてもらった内の半分以上は僕からのオファーだった。これまで、同世代の若手が悪ふざけしまくる『ブチ切れデトックス』、声を発さずに変顔だけで対決する『THE FACE』、ゲストに負荷をかけまくる『タイマン森本』、ただカラオケボックスで1時間雑談するだけの『おこたしゃべり』に出ていただいた。改めて振り返るとすべてに出演してくれた大久保さんの器の大きさを感じるのと同時に「そもそも僕はなにをしているんだ」と我に返りそうになるラインナップだ。
こういった本来ならば断ってしかるべきオファーも「なんとなく」で出てくださるのは優しさももちろんだが、その執着のなさからくるフットワークの軽さだと思った。それにあの確固たる実力が加わることにより、メディアで引っ張りだこのオアシズ大久保佳代子が君臨し続けているのだろう。
そして迎えた記念すべき初回収録。執着のないふたりがリラックスしたトークを繰り広げ、そろそろエンディングに差し掛かろうというタイミングでスタッフさんから「エンディングも引き続きグダグダトークで大丈夫でーす」という指示があった。ひょっとしたら多少の執着はあった方がいいのかもしれない。手始めに食事へのリアクションをもっと大きくしていこう。
森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。