『オモウマい店』ディレクターが語る制作裏話「この仕事に一番必要なものは、忍耐強さかもしれないです」

特集・インタビュー
14時間前
『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』
『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』

日本各地の「“オモ”てなしすぎで“オモ”しろい“ウマ”い店」に密着し、その魅力を伝える『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ・日本テレビ系 毎週火曜 午後7時~7時54分)。想像をはるかに超える衝撃的なサービスの数々と、店主の皆さんの個性あふれる人柄は、もはや笑いを通り越して尊敬すら感じてしまうほど。

そんな“オモウマい店”を発掘すべく全国を日夜駆け回る番組スタッフにインタビュー。元警察官という異色すぎる経歴を持つ川田俊介ディレクター、クールな見た目ながら胸に熱いものを秘める水野賢悟ディレクターの2人が、店を探す上でのポイントや、知られざる現場のエピソードを明かしてくれました。

◆お2人は、どういう経緯でテレビのお仕事をされるようになったんでしょうか?

川田:僕は小さいころからテレビっ子で、『世界の果てまでイッテQ!』『クレイジージャーニー』などを見て育ってきました。前職は警察官で、もちろん警察の仕事も好きだったのですが、番組を作りたいという思いもずっと心の中に残っていて。それなら一度やってみようと思ってこの世界に飛び込みました。最初は『アス友』という、『オモウマい店』と同じくヒロミさんがMCをされている番組でADをしていたんです。そうしたら『オモウマい店』が始まって、『アス友』が最終回を迎えたタイミングでこちらに移ってきました。大変だという噂は聞いていたんですけど(笑)、いろいろな所に取材しに行くというのは自分自身やりたいことでもあったので、こうして今『オモウマい店』をやれていることはうれしいです。

水野:僕はもともとカメラで映像を撮るということ自体が好きで、とにかく映像に関わる仕事をしたいと考えていました。映像を通して人を楽しませることができたらという気持ちが自分の中にずっとあって。それが実現できる一つがテレビだと思ったので、この業界に入りました。それまでテレビは『LIFE~人生に捧げるコント』や『めちゃ×2イケてるッ!』などを見ていて、『オモウマい店』のようなロケ系の番組はそこまでしっかり見たことがなくて。多分、テレビのことはあまりよく分かっていなかったと思います(笑)。制作会社に入ったらちょうど『オモウマい店』が始まることになって、番組に関わることになりました。

◆番組の反響はどうですか? ディレクターの皆さんは顔を出されて取材しているので、ちょっとした有名人なのかなと思ったりするのですが。

水野:一度声を掛けられたことがありました。前にADさんと一緒に丼を食べる回があったんですけど、そのとき僕の顔が結構出ていて。お店の中ではなく、近くの駅を歩いていたら「オモウマの方ですよね?」って(笑)。写真撮影もお願いされて、自分でいいのかなと申し訳ない気持ちになりましたけど。

川田:僕は、親戚が結構見てくれているという話を両親からよく聞きます。自分が作ったものを周りの人に見てもらえてることが実感できてうれしいです。

◆やりがいのあるお仕事ですね。まずはお店のリサーチをするところから始まると思いますが、具体的にはどのようにされているのでしょうか?

川田:ネットなどでリサーチをして、それぞれが行きたいところに自由に行っています。やっぱりお店のおもてなしのすごさが分かりやすいと思うので、僕の中ではそこを一つの基準にしていて。提供される料理のボリュームが多いお店から探すようにしています。

水野:僕も料理の量で探すことが多いんですけど、店主さんの人柄で探すこともあります。「明るい店主さんでした」「いろいろお話してくれる店主さんでした」というような書き込みを見つけたら、実際にお店に行ってお会いします。

◆お店を探す上で大切にしていることは?

水野:例えば料理にこだわりを持っていたり、大きな声であいさつしたり、そのお店によっていろいろな「お客さんへのおもてなし」の形があるんですよね。なので単に大盛りや安いお店を探すのではなく、店主さんの思いも知ることが大事なのかなと。

川田:過去にご自身がつらい思いをされて、“おなかいっぱい食べてほしい”という思いで大盛りのメニューを出している店主さんがいらっしゃって。取材していく中でそういった思いを知って、そこを主軸にした構成に変えたりすることもあります。

◆ただ取材を交渉する段階で、断られてしまうケースもあるわけですよね?

水野:断られるときはキッパリ断られることがほとんどです。でも、ある定食屋さんを取材させてもらったとき、「うちは無理だから」とお断りされたんですけど、話し方は柔らかくニコニコされて「また来てね」みたいな雰囲気を出されていて、これは一体どっちなんだろうと(笑)。思いながらお店に通い続けた結果、取材を引き受けてくださったことがありました。取材したことも最終的には喜んでくださったので、それは良かったなと思います。

川田:やっぱりお話をする中で少しずつ打ち解けていく感じはあります。栃木県の和食店「金龍閣」さんでは、もともとされていたお仕事がたまたま自分と同じ警察官ということで話が膨らんで。最終的にはお店の極秘プロジェクトみたいなことまで教えていただく関係性になりました(笑)。

水野:例えば「どこから来たの?」と聞いてもらえると、こちらも自分の身の上話をしやすくなるというか。基本的に店主さんは話好きな方が多い印象を受けます。

◆お店を探すというところで言うと、水野さんは「すり鉢」を買いに来るお客さんを合羽橋道具街でひたすら待ち続けるということがありました。

水野:取材している中で「大盛りのお店はすり鉢を器にしていることが多い」ということに気づき、そこからオモウマい店につながるのでは…と。何も起きない日が2日続いたときは“あれ?”と思いましたけど(笑)、初めて自分に企画を任せてもらえたので“見つけてやるぞ!”と気合が入っていました。

◆川田さんは元警察官らしく、岩手県の「鬼」シリーズの社長を、聞き込み調査と張り込みで探すということに挑戦していましたね。

川田:外見の特徴や乗っている車を聞いたりしたんですけど、それぞれの系列店を忙しく動き回られている社長さんで、とにかく待つしかなくて(笑)。1週間ぐらいたってようやくお会いできときは本当にうれしかったです。やっぱり僕らの仕事に一番必要なものは、忍耐強さかもしれないです。

◆現場でのロケ体制についてもお聞きしたいのですが、大体何人ぐらいのスタッフさんで動かれているんですか?

水野:基本的に1人ですが、お店の大きさなどに応じてADさんと一緒に2~3人で動くときもあります。

川田:料理をしっかり撮影するときは、カメラマンさんと照明さんが入るときもあります。

水野:料理を撮ったら右に出る人はいないと言われているぐらい、本当に料理をおいしそうに撮ってくれるんです。

◆お2人が料理を撮ることもあるんですよね?

水野:自分で食べるときはハンディカメラで撮っています。

川田:なので、僕らはカメラマンさんの撮り方を見て、どういう画角で撮るのがいいのか参考にしています。湯気があった方がおいしそうに見えるから、料理が出来上がってすぐ撮るようにするとか。いろいろ勉強になることが多いです。

◆ところでお2人もディレクターになる前はADだったと思いますが、この番組のADさんはどんな仕事をされているんですか?

水野:僕が先輩ディレクターに付いていたときは、お客さんに撮影の許可取りをして、そのままお客さんを撮影することが多かったです。

川田:後で「あの画が欲しい!」ということになったとき、ADさんだけでお店に行ってもらって撮影してもらうこともあって。なのでディレクターとADさんで明確に「店主さんとお客さん」で分けるのではなく、ADさんにも店主さんと信頼関係を築いてもらうようにしています。

水野:僕がADだったときは、ある1人の先輩のディレクターさんについていくことが多くて。その人の取材の仕方は、今の自分に染みついている感じがします。

川田:僕は2人の先輩からいろいろ学んだんですけど、そのお2人のやり方を自分なりにアレンジしながらやっている感じです。

水野:最近は自分の下にADさんがついているのが不思議な気持ちです(笑)。

川田:早いもので、もう新卒の子に教える立場になってしまいました(笑)。

◆お客さんを撮影するお話が出ましたが、店主さんだけでなくお客さんのさまざまな瞬間もカメラがよく捉えている印象があります。

川田:とにかく何が起こるか分からないので、カメラはずっと回しています。

水野:お店に対して熱量の高そうなお客さんは特にマークしておいて、撮り逃がすことがないようにしています。

◆その結果、奇跡的に取れた画というと?

水野:毎回奇跡の連続なんですけど、宮﨑の「百姓うどん」さんに外国人のお客さんが入店したことがあって。うどん屋さんに外国人の方という場面もなかなか見たことがない瞬間だったので、これは何か起きるかもと思って一応カメラを回していたんです。そうしたらテーブルに巨大なかき氷が運ばれてきて、外国人の方のものすごくいい表情が撮れました(笑)。

川田:お客さんに関して言うと、やっぱり料理が届いた瞬間のリアクションはすごいです。でもリアクションは人それぞれなので、自分が想像している以上の画が撮れることもあって。なので、特に料理が運ばれる瞬間は逃さないようにしています。

◆では、これまで放送されたものの中から、特にお2人が思い入れのある回を挙げるなら?

水野:僕はやっぱり宮崎の「百姓うどん」さんです。2年前、ADでまだ何も分からない中で初めて担当させてもらったんですけど。第2弾、第3弾と放送させてもらったりして、それだけ長くお付き合いさせてもらえていることがありがたいです。シリーズを振り返ると自分の成長も感じられます。

◆そもそも「百姓うどんさん」にはどうやって出会ったんですか?

水野:先輩ディレクターと一緒に宮崎でお店を探していたときに偶然見つけました。最初は店主さんのテンションの高さに驚いてしまって、どう反応したらいいのか分からない感じがそのまま放送されてしまったんですけど(笑)。自分の人生で出会ったことがないタイプの方ですし、いい出会いをさせていただいたと感謝しています。

◆お店のある宮崎にはそこまで頻繁には行けないと思いますが、連絡は取られているんですか?

水野:「元気にやってるか?」という電話をよく頂きます。初めて放送されたときにちょうど店主さんのお子さんが生まれたんですけど、この2年間でだいぶ大きくなって時間の流れを感じます。お店もどんどんパワーアップして、アルバイトの方も増えていて。番組を見ていろいろな人が「ここで働いてみたい」と考えるというのも、あらためて考えるとすごいことだなと。お店や従業員の方のことを第一に考えている店主さんだからこそ、周りに人が集まってくるんだろうなと思います。

◆川田さんも、最初に関わったお店には思い入れがありますか?

川田:そうですね。名古屋のうどん屋さんの「吉野屋」さんは、自分が初めてVTRを作ったお店なので忘れられないです。取材からスタジオ収録までのスケジュールにあまり余裕がなくて、本当に自分が撮ったもので放送できるのかという不安もあったんですけど。皆さんに見て笑っていただけて、ほっとした思い出があります。

◆やっぱり今もお店の方との交流が続いていますか?

川田:季節ごとに連絡が来て、僕がその後担当したお店の回も見てくださって感想を話してくださっています。「吉野屋」さんはお店が近いので、直接お店に顔を出したりもしていて。今もですけど、これからもずっと忘れられないお店だと思います。

◆では最後に、今後この番組でやってみたいことについて聞かせてください。

水野:「百姓うどん」の店主さんのような、自分とは真逆のハイテンションな方と出会えるところがすごく新鮮に感じていて。自分がこの番組をやっていてよかったなと思えるところだったりもするので、引き続きそういった方を探したいです。でも逆に、おとなしい店主さんのお店に自分が行ったらどうなるんだろうという興味もあります(笑)。

川田:僕も出会ったことがないタイプの店主さんにお会いしたいです。特にこの番組は店主さんとディレクターが、おじいちゃんと孫みたいな関係性になることが多くて。今後もかわいがっていただけるように頑張ります。

PROFILE

●かわだ・しゅんすけ…1996年愛知県出身。警察官時代を経て、2020年より番組制作会社に勤務。これまでの担当番組に『アス友』など。

●みずの・けんご…1998年岐阜県出身。2021年より番組制作会社に勤務。『オモウマい店』の立ち上げ時に入った1期生スタッフ。

番組情報

『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』
中京テレビ・日本テレビ系
毎週火曜 午後7時~7時54分

©中京テレビ

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