『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)で女優デビューした田中道子さんにインタビュー。「ミス・ワールド2013」の日本代表に選出され、今年3月にモデルから女優へと転身。ドラマでは、大門未知子(米倉涼子)の天敵である病院長・蛭間(西田敏行)の秘書で、表向きは忠実だが、実は金とステイタスが大好きな“魔性の女”、白水里果を演じている。「自分の道を行く子」という名前の由来どおり、“失敗”を恐れず突き進んできた田中さんのこれまでと、女優業に懸ける思いに迫りました。
「道子って名前つけたの、お父さんでしょ!」って飛び出したんです(笑)
◆大門未知子とは漢字違いですけど、同じ「みちこ」さんなんですよね。
現場で「未知子!」っていう言葉が出ると、ドキっとしますね。自分が呼ばれているような気がして(笑)。
◆「田中道子」さんというお名前の由来はどこから?
父が「自分の道を行く子」という意味を込めて名づけてくれました。
◆まさにそのとおりに育ったんじゃないですか?
そうですね。芸能界に入るときも、父は反対していたんですけど、「道子って名前つけたの、お父さんでしょ!」って飛び出して(笑)。早いもので、それから3年半たちました。
◆田中さんは、小さいころはどんな子供だったんでしょう?
思いどおりにいかないとスネる子でした(笑)。末っ子なので、家族みんなにかわいがられて育ったんです。両親からはもちろん、兄や姉も年齢が離れているので余計に。人から愛情をかけてもらうのが当たり前になっていて、素直でもあるんだけど、わがままなところもあって。いかにも末っ子って感じの性格でした(笑)。
◆勉強は得意でした?
何かごほうびがあれば頑張れるタイプでした。父から「今度のテストでいい点とったらお小遣いをあげる」って言われて、それでいっぱい勉強したりとか。高校に入るとき、すごく偏差値の高いところを目指したんですけど、その時もそうでした(笑)。
◆運動は何かされていましたか?
いっぱいやっていました。体を動かすことが大好きで。陸上の高跳びとか、テニスとかも。ただ県大会とかまでは行けるんですけど、その先の全国大会に行けるほどの実力はなくて。地元では「みっちゃんが一番うまい!」と言われていても、外に出ると自分よりうまい人がたくさんいることを知って、あきらめちゃうっていう。
◆県大会に出られるだけでも十分すごいと思います。
器用貧乏なんですかね(笑)。どんなことをやっても「器用だね」と言われることは多かったように思います。
◆最近では趣味で登山やスキューバダイビングをされているとか?
自然が好きっていうのもあるんですけど、今までに見たことのない景色が見てみたくて始めたんです。地球を上からとか下からとか、そういう違った角度から見てみたらどうなんだろうって。
◆特に忘れられない景色はありますか?
友達と一緒に富士山の山頂から日の出を見たときは、感動して大泣きしちゃいました。すごくキツい道のりだったんですよ。そのときは嵐が接近していて大雨。しかも寒くて、前髪がちょっとしゃりしゃりするくらい。風も強いし、最後のほうなんて崖みたいな道で、酸素も足りないし、あきらめようかとも思ったんですけど、ふと空を見上げると星が近くて、それがめちゃくちゃきれいだったんです。その星に癒やされて山頂まで頑張って登ることができました。
スキューバダイビングは景色ももちろんいいんですけど、海の中で自然に溶け込む感じが好きなんです。無重力状態で体がふわーっと浮かんで、自分の呼吸の音しか聞こえないし、そこへ魚がちょんちょんとつついてきたりして。それが気持ちよくて、すごいリラックスできます。
◆アウトドアタイプなんですね。
でも、インドアなところもあるんです。漫画とかゲームとか大好きですし。最近だと「Undertale」っていうレトロ風のRPGにハマっていて、パソコンゲームなんですけど、これがまた、テレビゲームとは全然違う面白さがあるんですよ。例えば、「クロノ・トリガー」なんかでも選択肢って出てくるじゃないですか。もし間違った選択肢を選んだとしても、「クロノ・トリガー」だったら簡単にリセットしてやり直せる。でも、パソコンゲームだとそれが一切できないから、常に綱渡りをしているようなスリリングさがあるんです。
◆「クロノ・トリガー」もお好きなんですか?
もちろんです。私はサラというキャラクターが好きで。何回プレーしたか分からないくらいやり込んでいます。魔法王国ジールに行ったときの感動は忘れられないです(笑)。
◆そこまでゲームがお好きだとは(笑)。
私はゲームで育ったっていうくらいずっとゲームをやっていましたから。「ファイナルファンタジー」シリーズもすべてプレーしました。「X」のラストで主人公のティーダが父のジェクトと対話するシーンなんかは、もうぼろぼろ泣いちゃって。
◆「X」は曲もいいんですよね。
そうなんです! 私、ゲームミュージックも大好きで、「X」の「シーモアバトル」は毎日のように聞いています(笑)。
◆田中さんの好きなタイプは、ティーダみたいな人ですか?
そうなっちゃいますよね(笑)。ティーダとヒロインのユウナのシーンを見ていて、“こういう恋愛したい~”って本気で思っていましたから。ティーダに限らず、“漫画やゲームの主人公っぽい熱い人”がタイプです。「ユリアは俺が守る!」みたいな。あ、今のは「北斗の拳」のケンシロウなんですけど(笑)。
◆現実で探すとなると、難しいかもしれませんね(笑)。
今のところなかなかいないんですよ(笑)。でも、別に口に出さなくてもいいんです。心の中にそういう熱い思いを持ってくれてさえいれば。
【「ミス・ワールド2013」で学んだ“他人を気にしない”ということ】
◆「ミス・ワールド2013」に出場したきっかけは何だったんですか?
知人の紹介です。私は学生を卒業した後、資格の学校へ進んだんですね。で、無事資格も取り終えて、時間を持て余しているときだったんです。登山やスキューバダイビングと同じように、見たことのない景色を見るために世界を旅して、そのスケールを感じてみようかとか、ちょうどそんなことを考えていたので、「ミス・ワールド」の話を聞いたときは渡りに舟。受かる、受からないは考えず、やってみたいという興味だけで飛び込むことにしました。
◆見事、日本代表に選出されましたね。
そうなんです、ありがたいことに。世界大会は1か月間あって、130か国のミスたちが集まるんです。私たちの代は、バリ島で行われました。本当に行けてよかったと思います。学ぶことがたくさんありました。
◆例えばどんなことを学びましたか?
日本人と一番違うなと思ったのが、“他人を気にしない”ということ。「私は私」っていう絶対の自信があるから、見栄も張らないし、強がりもしない。自分自身が確立されていて、誇りを持っているんです。だから、1か月間でたくさんの審査があるんですけど、落ちても全然気にしないんです。今回は審査員の意にそぐわなかっただけだって。もちろん、反省すべきところは反省するんでしょうけど、その切り替えの早さたるや。
◆皆さん、並々ならぬ努力をしているからこその自信なんでしょうね。
そうですね。私は審査に落ちると、やっぱり「日本のみんな何て言うかな…」とか考えちゃうんですよ。でも、みんなはいちいち考えず、前だけを見つめて努力を重ねる。そういうスタンスは、自分にも取り入れたいなと思いました。
◆海外の地で苦労したことはありますか?
ハプニングはたくさんありました。例えばタレントショーって審査があって、私はそこでハープを演奏しようと思っていたんです。でも、現地でハープが調達できないと言われてしまって。ほかに日本人らしさをアピールできて、かつインパクトのあるものは何か。事務局の方々といろいろ相談した結果、かわら割りにしようということになったんです。
◆それまでに空手の経験はあったんですか?
全くないです。でも、自信はあったんですよ。割ればいいんだろうって(笑)。もともと力は強いほうだし、試しに1、2枚割ってみてできそうだなと思ったので、本番一発勝負で懸けてみようと。本当はもっと時間をかけてやりたかったんですけど、審査までもう4、5日くらいしかなくて。で、すぐにかわらを10枚取り寄せたんですけど、届いた段ボールを開けたらそれがすべて割れていたんです。
◆大ピンチじゃないですか!
審査の前日の夜のことでした。本番は8時間後くらいに迫っていて、もう本当にどうしようかと。持っているのは、道着のみ。それを使って何ができるか考えたとき、空手の型が思い浮かんだんです。すぐにインターネットで型を調べて、“私は型ができるんだ!”って自分に言い聞かせながら練習しましたね。もうやるしかないという感じでした。
◆審査はどうだったんですか?
意外と残ったんですよ。型をダンスだと思って覚えたんです。幸い、ダンスは習っていたので。タレントショーなので、別に型のうまさを競い合うわけじゃない。いかにタレント性を出せるかがポイントだと思って。
◆ほかの皆さんだっていろいろハプニングはつき物でしょうけど、そういうときの対応力も求められているのかもしれませんね。
そうだと思います。そんなこともあって、度胸はかなりつきました。現地には通訳の方も、日本のスタッフの方も連れていけないので、1人でやって、1人で結果を出さなきゃいけないですから。
◆孤独な戦いなんですね…。
最初の1週間くらいは帰りたいって思っていました。コミュニケーションもままならなくて。もちろん、みんなフレンドリーだし、私も仲良くしたくて声をかけていたんですけど、あるとき、「あの子(田中)はイエスばかり言う。ノーと言わない」って言われたんです。日本人の気質なのかもしれないですけど、例えば「これいいと思う?」って聞かれたら「いいと思う」って、よっぽどじゃない限りそう言うじゃないですか。
◆分かります。でも、周りはそうじゃなかった?
そうなんです。その文化の違いに困惑することはありましたけど、そこを乗り越えた先の残り2週間は帰りたくないって思うくらい楽しんでやれましたね。
◆何が田中さんの原動力だったんでしょう?
期待してもらっている、ということですかね。事務局の方々とは毎日連絡だけは取り合っていたんですけど、時差もあるのに深夜まで対応してくださって。その期待に応えたいという一心で、最後までやり遂げることができました。本当にいい経験をさせていただいたと思います。
みんな米倉さんのことが大好き。私もそうなれるよう頑張りたい
◆女優業は新たな挑戦になりますね。
モデルも演じる職業ではあるから、女優と似ているんじゃないかと最初は思っていたんですけど、とんでもなかったです。全く似て非なるものでした。演技のレッスンは足掛け4年間やっているんですけど、知れば知るほど奥が深くて。正解がないので、雲をつかむような思いです。
◆ドラマデビュー作が『ドクターX~外科医・大門未知子~』に決まったときのお気持ちは?
信じられなかったです。「冗談ですよね?」って何回も確認しちゃいました(笑)。新人のデビュー作が、こんな大ヒットシリーズというのはありえないこと。びっくりして、うれしさもあって、でも不安も押し寄せてきて、最初の3日間くらいはそんなぐしゃぐしゃな気持ちでしたね。
◆やはりプレッシャーは大きいですか?
すごく感じます。震える夜を過ごしていましたから(笑)。でも顔合わせのとき、シリーズ作ということもあってか雰囲気が和気あいあいとしていたんです。そうそうたるキャストの方々が集まっていて、その中の一員として私が出演できることがうれしいっていう気持ちが大きくなって、少しずつ楽しめるようになりました。
◆過去のシリーズはご覧になっていましたか?
もちろんです! 第1シリーズは、実家で家族と一緒に楽しんでいました。その後のシリーズも見ていましたし、米倉さんをはじめ、事務所の先輩方が出演されているので、勉強も兼ねて改めてチェックしていましたね。
◆米倉さんは、モデルから女優に転身したという部分でも田中さんの先輩に当たりますよね。
そうですね。勉強できるところはたくさんあります。米倉さんはとにかくかっこいいですから。モデルのお仕事をさせていただいたの中には、米倉さんが以前にやっていたものもあって、そのスタッフさんたちも口をそろえて言うんですよ。「米倉さんってかっこいいよね」って。男女問わず、みんな米倉さんのことが大好き。私もそうなれるよう頑張りたいです。
◆“女優宣言”の会見のとき、「悪い女性の役をやってみたい」とおっしゃっていましたが、今回演じている白水里果にはまさにそういう部分がありますね。
里果は西田敏行さん演じる病院長・蛭間の秘書なんですけど、監督からは「したたかな女性として演じてほしい」と言われました。思いっきり悪女ってわけではないんですけど、やりたかった役柄ですし、女優としての最初の役柄という意味でも愛着が沸いています。楽しんでしたたかな女性を演じていきたいです。
◆里果について、どんなイメージを膨らませていますか?
いろいろ考えますね。どれだけしたたかな女性なんだろうとか、脚本にないところで蛭間と一緒のときはどんな話をしているんだろう、とか。そうやって自分の中でイメージを重ねて、役を作り上げています。
◆西田さんとの共演はいかがですか?
すごく緊張します。初めてごあいさつさせていただいたときに「とにかく楽しんでやりましょう」と言ってくださって、少し肩の力は抜けたんですけど、それでもやっぱり今までテレビで見ていた俳優さんなので。でも、西田さんの胸をお借りして、新人らしくいい意味で開き直って、どんどんぶつかっていきたいです。
◆大門未知子は「専門医のライセンスと叩き上げのスキル」が武器ですが、田中さんの武器は何ですか?
自分で言うのもなんですけど、例えば1のアドバイスをもらったら10吸収しようというその気持ちですかね。それを継続して、ハイスピードでステップアップしていきたいと思っています。
◆女優としての目標はありますか?
国内だけでなく、国外でも活躍できる女優になりたいです。もともと洋画も大好きなので、出演できるチャンスがあったらうれしいです。
■PROFILE
田中道子
●たなか・みちこ…1989年8月24日生まれ。O型。静岡県出身。「ミス・ワールド2013」日本代表。今年3月23日、女優へ転身することを会見で発表。『ドクターX~外科医・大門未知子~』が女優デビュー作となる。
■番組情報
『ドクターX~外科医・大門未知子~』
テレビ朝日系 毎週(木)後9・00~9・54
脚本:中園ミホ、林誠人、寺田敏雄、香坂隆史
出演:米倉涼子、岸部一徳、泉ピン子、生瀬勝久、内田有紀、勝村政信、滝藤賢一、草刈民代、田中道子、吉田鋼太郎、西田敏行ほか
●photo/干川 修 text/甲斐 武