残すところあと2話の『真田丸』。父・徳川家康(内野聖陽)に叱咤されながらも徐々に威厳が増していく二代将軍・徳川秀忠を演じる星野さんが、“ダメキャラ”ぶりが話題となった秀忠のキャラクター分析や、脚本・三谷幸喜さんとのエピソードなどを語ります。
秀忠は一生懸命。“世の中が合っていない”だけなんです
◆秀忠の人物像をどう捉えていますか?
秀忠は次の世代をつくっていく人物なので、そういう部分を感じながら演じました。戦国のマナーに微妙になじめていない感じを出せたらいいのかなと。成長という意味でもすごく現代っぽいというか、急に覚醒して人格が変わるというわけではないんですよね。めちゃくちゃ折り合いをつけながら(笑)、一歩一歩進んでいくタイプだと思います。あれだけ巨大な父上がいる中でよく耐えていると思いますし、彼なりの努力は相当しているはず。
◆秀忠はヒーローではなく、ちょっと情けないという役ですが、そういった役を演じることについてはどう考えていますか?
秀忠のような頼りない役は、できればそれを茶化さないで演じないといけないと思っています。ダメダメな役でも、その人が持つ生きる理由や人間らしさは絶対にあると思っていて、ステレオタイプに演じてはいけないものだと思います。だから、秀忠は一生懸命なのに“世の中が秀忠に合っていない”という感じにできたらいいなと。ヒーローではない人たちがヒーローを支えていると思うので、すごく大切な存在だと思います。
◆三谷さんから演技についてリクエストはありましたか?
三谷さんからは「秀忠は、僕にとって“理想の二代目”。『真田丸』は、“二代目の苦悩”という裏テーマがあるんです。いろんな二代目が出てきますが、最後に秀忠が理想の二代目として出てきます」と説明していただきました。秀忠が将軍になるところで、三谷さんから「いい二代目になってきましたね」とメールをいただいてうれしかったです。ほかに、「秀忠は現代人みたいなしゃべり方で、時代劇のようなしゃべりかたはしないでくれ」というリクエストもありました。周りの方々との差がつきすぎないよう調節しつつではあったのですが、次世代の感じを出せるよう少しだけ普通にしゃべったら、画面の中での見え方が微妙に変わった気がしました。
◆父・家康役の内野聖陽さん、家康の軍師である本多正信役の近藤正臣さんとは共演シーンが多いですが、現場でアドバイスなどはありましたか?
お2人とも僕と同じ目線に立ってくださり、上から下に怒るようなことをしない方々です。僕は時代劇のマナーも分からないことがたくさんあるので、その都度アドバイスをいただきました。特に近藤さんが本当にチャーミングで、僕が歌番組に出演したとき「見たよ」と声をかけてくださったりするんです。近藤さんも歌を歌われていた方ですが、その話をするとすごく恥ずかしがるのがかわいらしくて(笑)。心地よい緊張感のある、楽しいお2人でした。
◆『真田丸』が初めての時代劇ですが、現場で驚いたことはありましたか?
やはり時代劇は準備にすごく時間がかかって、30分のシーンのためにお化粧してカツラをつけて着替えて…と1時間半ぐらい準備をするんですよね。一度着物を着てしまうと脱ぐのが大変なので、着物を着たらトイレにも行けないですし(笑)。なので厳しい現場を想像していたんですが、実際はそんなことなく、すごく居心地がよくて。準備に時間がかかること以上に、スタッフの皆さんの優しさに驚きました。
◆クランクアップの瞬間はいかがでしたか?
現場はチーム感がすごくて、とても素敵な場所でした。秀忠はダメダメなところから少しずつ成長していくのですが、その感じをチームの皆さんと一緒につくっていけて、すごく達成感がありました。
◆『真田丸』出演の反響はありましたか?
街中で「秀忠~!」と声をかけられることが増えました。出演シーンは少ないのに、浸透していると思うとうれしいです。
◆俳優以外に歌手としても大活躍されていますが、人気を実感される瞬間はありますか?
以前と比べて、大きな変化はないです。のほほんとしてます(笑)。
◆大人気の『真田丸』ですが、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)も好調ですね。
本当にうれしいです。撮影中は、『真田丸』の現場で『逃げ恥』の話をされ、『逃げ恥』の現場で『真田丸』の話をされるという幸せな状況にいました。面白いと思いながら作品を作って、それを皆さんが面白いと思ってくれて、そこに数字がついてくる。その三拍子がそろうことはなかなかないと思いますし、本当に幸せです。
■PROFILE
●ほしの・げん…1981年1月28日生まれ。埼玉県出身。AB型。
俳優、音楽家、文筆家と幅広く活躍。
ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系(火)後10・00)に出演中。
■放送情報
大河ドラマ『真田丸』
毎週(日)
NHK総合 後8・00~8・45
BSプレミアム 後6・00~6・45
第49話「前夜」あらすじ(12月11日(日)OA)
幸村(堺雅人)からの書状を読んだ信之(大泉洋)は、幸村が死を覚悟していると直感し大坂行きを決意。いっぽう、幸村(堺雅人)は押し寄せる徳川軍への最終決戦に挑む。幸村は又兵衛(哀川翔)や勝永(岡本健一)とともに策を立てるが、それらはことごとく徳川に漏れ伝わり戦況は悪化してしまう。次々と負傷した武士たちが担ぎ込まれる大坂城。混乱の中、幸村は春(松岡茉優)を城の外に出すことを決心。大坂城に残ったきりには、ある使命が託される。
番組HP:http://www.nhk.or.jp/sanadamaru/
©NHK
●text/金沢優里